ろくでなしの歌 7 [パーベル学パロ]


パーベル学パロその7!!9で終わる予定なんでラストスパートです。
出来たそばから上げていってるのですが…間が開いてしまい申し訳ないです^^;
…今思えば、企画サイトさんに寄稿したパーベルあげてねーじゃん……
連載終わったらあげます…!!


あ!空パチありがとうございます!!励みに頑張りますー!!


続きからどうぞ!のってるから長いよ!!(爆)
時系列がわかりにくい…!!







クララの訪問以来、ネッパーはふさぎ込むようになった。
理由はわからない。ただ、機嫌が悪いと言えばいいのだろうか。
言葉を投げかけても曖昧にしか返事をせず、ただただ気まずい日々が流れていった。

「…ネッパー。何かあったのか」
「…………別に」
「…別に、か」

向けられる暗い瞳は底が見えないほど暗く。
別になどといっておきながら態度は顕著に「何かあった」ことを物語っていた。
ベルガは来る者は拒まないが、去る者も追わない主義だ。
言いたくないなら聞かない。いたくないなら引き止めない。
本人の意見をどこまでも尊重し、深くは入り込もうとしない。
「そんなんじゃ彼女できないわよ!」などと、アイシーに言われた事もあったが性分なのだから仕方がない。
知られたくない事くらい、人間だったらあるだろうから。

「言いたくなったら、言ってくれ」
「…………」
「お前がそうだと、なんだか調子が、狂う」

ベルガの言葉に、ネッパーが僅かに拳を握る。
だが、それに気づく事なく、ベルガは「コーヒーでも入れよう」と席を立った。
リビングに残されたネッパーは、1人、床を見つめる。
心配させたい訳では、ないのに。
訳が分からないのだ。自分でも。



「………………悪ィ……」




そんなぎくしゃくした状態のまま、もうすぐ、年の瀬をむかえようとしていた。


















「多分、4日には戻る」
「ゆっくりしてけよ。久々の実家だろ」
「バイトがあるからな」
「…そか」

あと数日もすれば大晦日という時期。雪もたまにちらつくようになり、寒さも厳しくなって来た。
大学も年末休みに入り、実家に帰省する。というベルガが玄関先で荷物を抱えネッパーと対峙していた。

「…お前は、いいのか」
「留守が預けられないっつーんならアンタがいない間どこへなりとも転がりこんどくけど」
「お前の家には、」
「……………」
「…そうか」

どこの家庭も、きっと年末年始くらい顔を出せ。とやかましく言われる時期だろう。
返事をしないネッパーの意思を汲み取り、ベルガは質問を切り上げた。
帰りたくないのだろう。まだ。
考えがまとまるまでいればいいと言ったのは自分だ。
ベルガは何も言わずに頷くと、自分がいない間のことを述べ始める。
まるで、息子に1人留守番をさせる母親のように。

「飯はさすがにコンビニで買うなり外で食べるなりしろ」
「おう」
「何がどこにあるかは分かるか?」
「何ヶ月アンタの家に世話になったと思ってんの」
「何かあったら連絡しろ。私の携帯番号は教えただろう?」
「分かってる」

あまりに口やかましくあれこれ問うベルガに、思わずネッパーが苦笑する。
その表情を見て、一瞬驚いたような顔をした後、ベルガが楽しそうに微笑むのを見て、ネッパーが眉根に皺を寄せる。

「…なんだよ…」
「いや、お前のそういう顔、久しぶりに見たと思ってな」

少し、安心した。と微笑むベルガに、ネッパーは一瞬ドキリとする。
ポケットにねじ込んだままのネッパーの手が、僅かに動いた。

「…オイ」
「?」

ずっとポケットの中に入れられていたネッパーの手が持ち上げられ、ベルガに何かを放った。
ベルガは反射で受け取ると、そっとそれを見やる。
ベルガの手の中にあったのは、ネッパーの携帯についていたものと同じ携帯ストラプ。
バンドに黒と赤を基調とした炎を模したようなエンブレムが刻まれているものだ。

「やる」
「…いいのか?」
「ちゃんとつけろよ」
「ああ」
「絶対、つけろよ」
「…あ、ああ」

鋭いまなざしで念を押すようにネッパーに言われ、ベルガは頷く。
すると満足したのか、ネッパーは一つ頷くと視線を背けた。
手の中にあるストラップを再度見て、ベルガは僅かに笑うと、肩にかけていた荷物をかけ直す。

「じゃあ、行ってくる」
「おう」


「4日には、戻る」


念を押すように告げられたあと、扉は静かに閉じられた。














がらんどうの部屋。
こんなにここは静かだっただろうか。と考えた後、ああ。ここは元々俺がいた場所じゃないのに。と嘲笑。
ベルガが帰省してから、何故か部屋の広さに驚いた。
もともと広い部屋でもないのに、なんでだろう。と考えると
その部屋に男2人でいたからだ。とあっさり結論に至ってしまう。
そう、2人でいた。ずっと2人で。
やることも思い浮かばず、ベッドに転がる。
普段自分は机を退けた後布団を敷いてそこに寝ているのだが、昼間等布団を敷いていないときは彼のベッドを勝手に占領している。
ゴロンと横になれば見える無機質な天井。
だけれども、ほのかに感じる彼のいた気配に無性に人恋しさを感じてしまう。
勝手に転がり込んで勝手に居座って。
そんな自分を置いてくれる彼の優しさに、自分は甘えていたのか。
自分だって一般常識をわきまえたつもりではある。
迷惑な事はちゃんと理解していた。それでも彼は「いい」と言った。


『アンタはベルガの優しさに甘えて寄生してるだけの厄介者よ!!』


数週間前に言われたクララの言葉が突き刺さる。
1人で生きて行く度胸なんてない。誰かのすねをかじって生きていくので手一杯。
自分の将来さえおぼつかないで、それ以外の事を出来るはずかない。
ふらふらしてるだけなのだ。自分は。
何も出来ない。何も出来ちゃいない。
日が経っても増えて行くのは自分の中のもやもやした気持ちと、弁当殻だけ。
外はもうすっかり暗い。なのに電気一つつけないでベッドの上で丸くなる。
電気をつけると、空っぽなのがよくわかるから、つけたくない。
抜け殻のようだ。と苦笑する。
なんとなく携帯を開いて、アドレス欄まで行って、閉じる。
声が聞きたい。とは思っても行動には出せなかった。
ため息をはき、瞑ろうとした視線の端で、赤と黒を基調とした携帯ストラップが揺れる。
彼がここを出る前に、彼に渡したものと同じもの。
ベルガがクララからストラップを貰った時、妙に苛立った。
それ以来、彼が携帯を取り出す度にあのときの事を思い出して気分が沈んだ。
それと同時に、誰かから貰った物をあいつが使っているという事に、無性に苛立った。
1人になると、人は考え事が増えるらしい。
ずっと、ずっと、寂しくて死にそうで。
だけれども、思い出すのは家族ではなく彼の顔。
何故だ。と考えて考えて、ようやく答えに行き着いた時、自分で自分を殴り飛ばしたくなった。



俺、多分、アンタが好きだ。



そんで、好きなアンタに、どうしようもないくらい迷惑をかけて生きてんだ。




「………情けねーよなぁ……」

苦笑と共に漏れた声は柄にもなく震えていた。
馬鹿だ。どうしようもなく馬鹿だ。
クララの言葉に反論できなかったのも当たり前じゃないか。
見据えた天井があまりにも無機質で、思わず目を覆った。
何もない。何も。彼に、胸を張って言える事が。

強く、生きたかった。

怠惰な時間をのうのうと過ごした自分を殴り飛ばしたかった。

そして、欲を言えば、望んで良いのなら。


アンタに、胸を張れる生き方がしたい。

迷惑、かけたくない生き方がしたい。


好きだと言える、自信が、ほしい。



真っすぐ生きるための、道標が、ほしい。








携帯のボタンを押す音。
コール音3回のあと、がちゃりという音。


「…よぉ。ヒートか?………ああ、……ああ。…………うるせーな。
 ……いいから、お前に頼みがあんだよ」


真っ暗な部屋で、自分の声だけが反響する。
携帯のディスプレイの明かりに照らされたネッパーの表情は真剣で、
暗い瞳が光を反射してきらめいた。

アンタに心配かけない生き方がしたい。
しっかりした生き方がしたい。
だから、もし、自分が未来と向き合えるようになったらでいいから。








「……ボニトナと、替わってくれ」










このろくでもない俺を、好きになってくれは、しないだろうか。








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