ろくでなしの歌 5 [パーベル学パロ]


パーベル学パロその5!
文章ノッてくるとやたらと長くなる習性をどうにかせねば。

盛り上がってきましたよー…私が!!(爆死)









昼休み開始のチャイムと共に、一気に騒がしくなる教室。
教室の後ろの方の席でぼうっとしていると、机の上にとん、とサッカーボールが置かれた。
何だろうと思い、顔を上げれば、そこには病弱な家族の姿。

「天気良いしさ、パス練習でもしようよ」




「ネッパー、ちゃんとご飯食べてるの?」
「美味い飯食ってるよ」
「その居候先の人に迷惑かけてない?」
「居座ってる時点でかけっぱなしだろ」
「ちゃんとお礼言った?」
「…お前は俺の母ちゃんか」

ポンポンとボールの受け渡しと共にかわされる言葉のキャッチボール。
心配そうなヒートの声とは裏腹に、ネッパーの声は実に淡々としていた。
ヒートには前々から自分の事を気にかけているのかメールを頻繁にもらっている。
学校には行っているのだから別にいいだろうと言うのだが、どうも心配らしい。
幼馴染であり家族の一員でもあるバーンが無鉄砲なせいなのか彼の心配性は半端ではない。
それを少し鬱陶しく思いながらも、無下には出来ず返信はしている。
だが、そのメールのやり取りの中で、自分がベルガの家に居候している事は明かしていない。
何せ近所に住んでいる家族の一人だ。絶対に場所を突き止め押し掛けてくるに違いない。
それは何故か、ヒートであっても嫌だった。

「心配なんだよ。皆」
「その割にボニトナから連絡ないけどな」
「ボニトナは『あの子はひとりでもたくましく生きて行ける』ってなんか意地になってるよ。
 おかげでどうにかしようとしてるサトスを見るのが辛くて…」
「今度誕生日に胃薬買ってやれよ」
「毎年胃薬になっちゃうよ!?」
「それ以外なにも思い浮かばねーからしかたねぇだろ」

安易に想像できる家族の苦心する顔を思い描いても帰ろうとは思わない。
ネッパーはヒートにパスされたボールをそのまま蹴り上げ、リフティングを始める。
家出だのなんだの、そう言った込み入った事情からのらりくらりと逃げようとしているかのようなその姿勢に、
ヒートは何かを言おうとして、口を噤む。
どこまで口を出していいのか、わからなかった。

「……なあ。ネッパー」
「?」
「…これからどうするかとか、考えてるの?」
「…………」

無言。
想像はしていたが、返された沈黙にヒートはバレないように肩を落とす。
ボニトナも強がってはいるがネッパーに帰って来てほしいと思っている。
そうじゃなければ、もう数ヶ月使われていない彼の部屋を掃除なんてしない。
他の皆だって、ネッパーに帰って来てほしいと思っている。
でも、ネッパーが飛び出した理由もわかるのだ。
進路だとか、これからどうするとか。ネッパーはややこしい事を考えるのが嫌いだった。
頭は決して悪くないくせに勉強が嫌い。だから選んだ就職。
だけど、最近は高卒で就職しても大卒に比べれば後々苦しいものがある。
心配なのだ。皆。だけど、ネッパーにとってはその心配が重荷になった。
だから、どこまで心配していいのかわからない。
ポンポンとボールの跳ね上がる音だけが響く。
ヒートがどう言葉を返そうか、考えあぐねていたときだった。

「……考えては、いる」
「…え」
「なんか、よくわかんねーけど、考えようとは、してる。まとまっては、ねーけど」

リフティングのリズムに合わせて吐き出される言葉。
その言葉の意味を噛みしめていき、やっと理解した時、ヒートの表情が一気に明るくなった。
ネッパーが自分の将来を真面目に考えようと努めている。
それは、面倒くさがりで物事を斜めから見ようとする彼にとっては、大いなる進歩だった。

「…………そっか……そっか…!」
「なんだよ、ニヤニヤして」
「…なんでもないよ。嬉しいだけなんだ。ネッパーが前向きになってくれて」
「…前向き…?」
「うん。凄く前向きだ。家出先で何かあったの?」

ニコニコしながら語るヒートに、対し、僅かに眉根に皺を寄せながら首を傾げる。
何かあったのか。と言われてもさほど何も思い出さない。
ただ、思い出されるのはベルガとのやりとり。
彼は自分に答えをせかす事なく待ち続けてくれている。

「…別に。少し話しただけだ」
「へえ。珍しいね。ネッパーが俺たち以外にそういうこと話すのって。
 …と、いうかさ、ネッパーの家出先の人って誰なの?」
「誰だっていいだろ」
「じゃあどんな人かくらい教えてよ」

ネッパーの思考の好転にすっかり舞い上がったヒートが上機嫌にあれこれ聞いてくる。
あまりにも嬉しそうに問うものだから、誤摩化そうとしてボールを再びヒートの方に蹴り上げた。
それを綺麗に蹴り返しながら、「ねえ」と問われれば、さすがに逃げ道は見えなかった。
こう見えてヒートは頑固なのだ。

「…聞いて楽しいか?そんなこと」
「うん。ネッパーがここまで心を開いてるんだから、きっといい人なんだろうね」
「まあ、お人好しではあるな」
「へえ。…それで?」

トン。とボールが蹴り上げられる。

「飯は美味い。味は薄いけど」
「そうなんだ」

ボールは綺麗に放物線を描いてネッパーの元へ。

「んで、無愛想。そう思ってたんだけどよ、それ表面上だけでよ」
「うん」

再び蹴り上げられたボールはヒートの元へ。

「笑った顔見たときは驚いたな」
「失礼だよそれ」
「んだよ。初めて見たんだから驚くだろ」

ヒートが笑いながらボールを放る。

「あと、照れた顔最近初めて見たんだけどよ」
「うん」
「なんか、可愛いとか、思った」
「可愛い?」
「真っ赤になるんだぜ?」
「へえ」

笑ってボールを受け止める。
対局にいるヒートが、本当に楽しそうに笑っているのを見て、僅かに眉根に皺を寄せる。

「なんだよ」
「いや、珍しいなぁと思って」
「何が」


「ネッパー、その人の事本当に気に入ったんだね」


言葉と共に、放られるボール。

「………は?」

今度は受け止められることもなく、ボールは地面でワンバウンドした。




「だって、そんなに楽しそうに人の話するネッパー、初めて見たから」











授業が終わり、ベルガの家への帰路へつきながら、ネッパーは一人考え込む。
思い出すのはヒートの言葉。果たして自分はそんなにも楽しそうにしていただろうか。
先日見たベルガの顔が頭から離れない。
可愛いと感じた。自分より年上で、体格もいいあの男を。
何故。なんて分かる訳がない。考える事はもともと得意ではない。
諦めたようにマフラーに顔を埋め、気づけばたどり着いていたベルガの家のドアに鍵を差し込む。
この合鍵は自分が彼の家に転がり込んだ翌日に彼自身から受け取ったものだ。
まだ出会って数日のよそ者に鍵を渡すなど、普通なら考えられないが、あのお人好しなら不思議と納得してしまう。
僅かに笑みを浮かべながら、鍵を回し、ドアノブを引く。


が、開かない。


何故だろう。と首を傾げ、再び鍵を回せばガチャリと言う解錠の音。
そうなれば考えられる原因は一つ、ネッパーが開けようとする以前から部屋の鍵は開いていた。ということになる。
だが、今日ベルガはバイトで遅くなると言っていた。
ならば、誰が。
そうっと玄関の扉を開けると、玄関にはきちんとそろえられたローファーが1足。
明らかにネッパーのものとも、ベルガのものともサイズが違うそれに、ますますネッパーは不信感を募らせる。
自らも乱雑に靴を脱ぎ捨て、ずかずかと部屋の中に入る。
そして、リビングにたどり着いた時、あぜんとした。


「………なんで、アンタがここにいるのよ…!?」


そこにいた人物は、ネッパーの記憶の片隅にいる人物と、非常に酷似していた。

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