あの星は死んだ [土受け]


…フロベル書いてみたい…(いきなりですね)言うだけはタダだって信じてる…!
需要?何それおいしいんですか精神は今に始まったことではないので…www

そんなこと言いながら今日の更新は一土なんですけども^^;
なんかうっかり口調忘れるんで困ります。アニメにも最近出てこないし…嫁はまだか。


続きからいつも通りな感じの一土です。
大丈夫な方はどうぞー^^







星が見たい。と突然言いだし、天気予報を見れば今日の夜は快晴らしい。
天候も良いし、別段嫌ではないと思ったので唐突にねじ込まれたその予定につき合ってやる事にした。
そんな行き当たりばったりな計画で、夜中に二人で自転車を駆って近くの高台にたどり着いたのは夜の10時を回った辺りだった。

「やっぱり!ここなら綺麗に見えると思ったんだよ!」
「鉄塔も良いけどあそこは電飾があるからなぁ」

稲妻町のシンボルマークとされる鉄塔に備え付けられたイナズマの形をした電飾。
雷門中がフットボールフロンティアで優勝して以来、それは夜の間中ずっと煌煌と町を照らし続けていた。
綺麗だ。と純粋に思えるその明かりも、星を見ようと思う今は少々都合が悪い。
鉄塔の上は確かに見晴らしも良いが、きっとここほど星が綺麗には見えないだろう。
現に、ここには申し訳程度に備え付けられた街頭が、今にもこと切れそうにちかちかと力ない光を放つだけ。
その分、空の星はいつも以上に綺麗に輝いているように思えた。

「しっかし、一之瀬はいつもいきなりだなぁ」
「星見たいなんて、事前に計画して行くもんでもないだろ?」
「いや、よくはわかんねーけどさ」
「いいじゃん!綺麗だし!!」

夜中に土門を連れ回している事に悪びれる様子もなく一之瀬は笑う。
確かに土門もまんざらではなかったのでしょうがない奴。と苦笑するだけ。
見上げる空は確かに綺麗で、いきなり引っ張ってこられた事への不満も消える。
星座なんて授業で習った事の半分も覚えちゃいない。
どれがどの星座かは皆目分からなかったが、無造作にちりばめられたように見えるそれは、意味なんて分からずとも見る分には十分だった。

「あ。流れ星」

備え付けられた転落防止のための手すりから身を乗り出して、一之瀬が叫ぶ。
その声にゆるりと視線をあげれば、それは一瞬にして消えた。

「あー。俺、見損ねた」
「ええー!せっかく教えてあげたのにさ」
「流れ星って一瞬だから、言われてから見たんじゃ遅いんだよ」
「まあ、すぐに消えちゃうよね」

手すりに体を預けて、土門の方に体を向けたまま、一之瀬は目一杯空を仰いだ。

「流れ星って、死んで行ってるんだよね」

一之瀬の言葉はいつでも唐突だ。
空へと向けていた視線を一之瀬に寄越せば、彼は未だに空を仰いだままだった。

「ずっと光って、光ってられなくなった奴が、光の尾を引いて落ちて行くんだよ」
「…詩人だなぁ」
「だって、そうだろ?」
「そうかもしれねーけど。普通はそんなこと考えねーよ?」
「うん。そうかもしれない」

普通、流れ星を見て思う事は皆共通。
あれが消える前に、願い事を三回言えたらその願いが叶う。
流れ星の存在意義なんて、その程度しか人々にはないだろう。
だけど目の前の彼は、酷く真剣な顔で流れ星の生死について語る。

「死んで行く奴に、願い事を託すなんて、図々しいよなぁ」
「なんだよ。今日はえらく卑屈だなぁ」
「んー…」

空を見上げながら首を傾げるという、首を痛めそうな仕草をする一之瀬をしばらく見つめ、土門もまた空を見上げる。
何光年も輝いて、消えるのは一瞬。死ぬのは一瞬。
確かに今にも死にそうな人に向かって「俺、アレが欲しい!」などと自分の願望を叫ぶ者など1人もいないだろう。
そんな想像をして、1人で思わず苦笑する。

「確かに、図々しいわ」
「だろ?」

独り言のように呟いた言葉に、一之瀬が言葉を返す。
星空を背景に、一之瀬は随分綺麗に笑っていた。

「あ。また流れ星」
「え。そんなに流れ星ってほいほい見れるもんだっけか?」
「さぁ…?今日なんかの流星群が見られる日とか…?」
「あー…調べときゃ良かったかなぁ」

見に来るのだったらそれなりの下調べをすれば良かった。などと思うが、いきなりの話だったのでそんな暇もなかったか。と思い直す。
そんな中、一之瀬が再び「あ」と呟き、唐突に手すりから体を離した。

「一之…」
「土門!!ほんっっとうにごめん!!」

口元に手を当て、いきなり叫ぶ。
自分の名前が出た事もあって、何事かと一之瀬の方を見やれば、視界の端に光の尾が映る。
流れ星だった。


「勝手にいなくなって!!嘘ついて!!俺、サッカーできなくなる事も怖かったけど、
 あんな嘘ついて土門に嫌われるのもすっごい怖かったッ!!今でも謝っても謝りきれないくらい後悔してる!!」


叫ぶ声は高らかに。
願い事でも、祈り事でもなく、謝罪の言葉をひたすらに星に叫ぶ。
言葉の途中で既に流れ星は姿を消していた。
だが、最後まで言い切った一之瀬は、満足したように土門の方を向くとニコリと笑った。

「ほら、死んだ人は、身近な人の辛い事とか悲しい事全部あの世に一緒に持って行ってくれるっていうじゃん?だから、持ってってもらおうと思って」

今までの後悔。埋められない、一緒にいられなかった時間。
もう随分昔の事のはずなのに、未だに残っていた後悔の念を、全部ぶちまけたように一之瀬は笑った。
ずるいかなぁ。と頭をかきながら呟く一之瀬に、あっけにとられていた土門も、思わず苦笑した。
そして、自らも手すりから身を乗り出し、声を上げる。



「一之瀬が死んだって聞いた時、秋と西垣と一緒にすっげぇ泣いた!!なのにいきなりひょっこり出て来たときは本気でぶん殴ってやろうと思ったッ!!
 勝手な事言って、勝手な判断でどっか行きやがって!一之瀬の阿呆ーッ!!」



流れ星は流れていなかった。
力の限り叫んだ後、一息つくと一之瀬の方を見てわずかに笑う。
その笑顔に、一之瀬も苦笑すると、彼の背後で再び星が落ちた。

「あ」
「持ってってくれたのかなぁ」
「だといいけどなぁ」

お互いに顔を見合わせて、たまらなくなって思わず吹き出す。
本来ならば願い事を言うはずなのに。
二人そろって自分の中にあった相手への申し訳なさと憤りをぶちまけた。
これでは、死に行く人に罵声をあびせたも同然なのではないだろうか。

「俺たちの方がよっぽど図々しいね」
「だな」

二人で額を寄せ合って、クツクツと笑う。
肩の荷が下りたのか、その笑顔は今までで一番、澄んでいたように見えた。


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