馬鹿による幸せの定義 [エイリア]


ひっさびさにゼルデザ!…いつぶりですかね?バレンタイン以来…?
内容的には以前連載していた「セレスト」の後日談のような形になっています。
こちらの方を読んでいない場合分かりづらい部分が出る…かも…しれない。
そして友情出演、羽縞(笑)セレストでは何故か頻出。


どうしようもないギャグになりましたが良いという方は続きから!!
そして拍手押してくださった方ありがとうございます!!本当に励みになります…!










「長い間思い続けてようやく実を結んだ二人の恋。そしてそれから数ヶ月が経ったのでした」
「オイ、なんだいきなり気持ち悪ぃな」

練習中、いきなりナレーションのような声をかけられる。
ゼルはいぶかしげな顔をして、横を見れば、現物はないくせにマイクを持つような手をして、ゼルの方を見やる羽縞の姿があった。

「数ヶ月が経ったのでした」
「あぁあああ!!だからなんだっつーんだ!!」

繰り返すように呟かれた言葉に、ゼルが激昂する。
気長には作られていないゼルの神経を逆撫でするように、
羽縞はあからさまなため息をはきながら、まるで可哀想なものを見るような目でゼルを見やる。

「お前、結ばれて数ヶ月経ってんのに、なんの進展もねーじゃねーか」
「は…?進展?」
「愛しのデザームといちゃいちゃラブラブ」

おそらく言葉選びはあえてなのだろう。
必要以上に恥ずかしくなるような言葉で言われ、ゼルは一気に顔を紅潮させる。
ニヤニヤ笑う羽縞に対して、怒りはするものの、うっかりその光景を想像してしまった自分を抹消したい気持ちが先行したので、とりあえず地面に自分の頭を打ち付けておいた。

「…そ、そそそそそんなこと思う訳ねーだろ!!」
「自分の顔見てみ。そんなことを想像した自分への戒めによる血で見る影もねーから」

確かに数ヶ月前、ゼルが雷門へやって来た事により、二人は相思相愛になった。
…なったはずなのだが、以前の2人を知っている者からすると、正直言って「進展無し」
いつも通りに盲目的にデザームを敬愛するゼルが、デザームの後を付いて回るという実に見飽きた光景が繰り返されるばかりだった。
あのデザームに想い人。ということで一時期かなり好奇の目で見られていたのだが、
そんないつも通りすぎる2人を見て、最近では周りも完全に興味をなくしていた。
それが、つい数ヶ月前に恋人同士となった2人の現状なのである。

「お前も思わねぇの?手繋ぎたいとか、キスしたいとか」
「き、キキキキキキキキ…!!?」

どもりすぎてもはや何を言いたいのかも分からない。
顔が赤いのは羞恥からか未だに額から流れる血のせいか。そんなことはどうでもいいのだが。
ああ、ヘタレとはこういう事をいうのだろうなぁ。羽縞は再び可哀想な者をみるような視線を注ぐ。

「男なら力づくでも奪ってやれよ」
「で、でででできるかぁああああああッ!!」
「だッ!!?」

羽縞の強引な発言に、何かが切れたゼルが、羽縞の後頭部を思いっきり強打する。
イプシロンの正ゴールキーパーの名は伊達ではない。
渾身の力で振り下ろされた手は、羽縞を見事に地面へと直撃させる。

「で、デザーム様と…そんな!まだそんな段階でもねーのに!!」
「お前その前に謝れよ…!あやうく俺のファーストキスが地面に奪われるとこだったぞテメェ」
「奪うとか!無理だろ!恐れ多すぎる!!」
「手前の話じゃねーよ!!」

痛みにもんどりうつ羽縞を尻目に、ゼルは完全に自分の世界だ。
これはゼルがヘタレすぎるのか、それともデザームを必要以上に大切に思っているが故なのか。
きっと両方なのだろうなぁ。と痛みでかすむ意識の中で羽縞はぼんやり考えた。
羽縞の意識が消えようかというとき、不意にホイッスルの音がグラウンドに響いた。
集合の合図かと思い、そちらを見れば、どうも新入部員のために紅白戦をやるらしい。
そのメンバーは既に集められていたらしく、先ほどの音はどうやらフィールドを今から使用し始める。という合図だったようだ。
フィールドの外にあるベンチに腰掛け、メンバーを見やる。
新入部員を鍛えるために、スタメンではなく、どうやらそれなりに雷門でサッカーをしていたメンバーが相手に選出されたようだ。
確かに、スタメン相手に新入部員がきたえられる気はしない。むしろぼろぼろにやられてへこみそうだ。
ポジションにつこうとしているその中に、ふと話題の中心にいた人物を見かけ、羽縞は思わず声を上げる。
しかし、その羽縞の声よりも早く、彼の隣にいるゼルの声がフィールドに轟いた。



「デザーム様ぁあああ!!頑張ってください!!」



大声で叫び、ちぎれんばかりに手を振るゼルは、もはや見慣れたものだ。
周りも呆れたような顔をして苦笑するだけで、さほど気に留めていないようだった。
隣にいるのがなんだか気恥ずかしくなりながら、そばにいる自分がここまで恥ずかしいのだから、呼ばれている張本人は死ぬほど恥ずかしいだろう。と思い、羽縞はフィールドの方に再び視線を向けた。
そこにはさすがに気づいたのか、こちらに視線を向けるデザームの姿。
驚いたのかなんなのか、目を僅かに見開いているようにも見えたが、あまり表情を変えないデザームばかり見ている羽縞にとっては、それも気のせいのように思えた。
だが、次の瞬間、羽縞は思わずぎょっとする。



デザームが、ゼルに手を振りかえしていた。



振り返すと言っても、僅かに手を挙げる程度だったのだが、羽縞は我が目を疑った。
デザームの人柄を良く知っていても、意外だと思うようなその光景。
それに、隣にいるゼルは発狂せんばかりの勢いで羽縞の肩を揺すり始めた。

「見たか!!オイ!見たか今の!!デザーム様が答えてくださった!!」

ガクガクと揺さぶられながら見やったゼルの顔は、これ以上にないほど幸せそうな笑顔。
思えば、手を振るデザームも心なしか笑っていたような気がする。
ようやくゼルから解放された羽縞は二人を交互に見つめながら、揺れる思考のまま、呆れたように苦笑する。


「なんか、お前ら絶対不幸せにはならない気がするわ」


たったあれだけの事でここまで喜ぶとは。
なんだか、ばからしい気もしたが、きっと幸せな事なのだろう。
何がだと首を傾げるゼルに向けて、お前ら今幸せだろ?と訪ねると、
ゼルは間髪入れずに、自身に満ちあふれた顔で頷いた。



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