結果オーライ [エイリア]


バレンタインリクエスト消化第3弾!
バレンタインもう終わったんですけどとか言わないでください…!
パーベルになりますー^^
「パーベル」でリクエストしてくださった方のみお持ち帰り可です!無断転載は止めてくださいね!万が一、サイト等に載せるという場合はご一報くださいませ^^


では、続きからどうぞー。










「バレンタインかぁ…」

練習中に呟かれたヒートの言葉に、そういえばそんなものもあったなと思い出す。
ため息をはきながら浮かない表情でいうものだから、
ちょっとした興味がわいて練習そっちのけでヒートの元へと駆け寄ってみる。

「なんだよ。お前貰いたい奴でもいんの?」
「べ、別にそういうんじゃないけどさ!……まあ、男なら…ねぇ…」

苦笑いしながらしどろもどろに呟く。
確かにちゃんとした教育機関には通っていないものの、年齢的には中学生。
色恋沙汰にも興味が出始める、所謂思春期という奴だ。
だったらまあ、そうなるか。などと生返事を返していると、ヒートが怪訝そうな顔をした。

「ネッパーは気になったりしないの?」
「…あー…まあ」
「貰いたい人とかもいないの?」
「……それは…」

いるには、いる。
だが、自分からよこせというのも格好がつかないだろう。
かといって、あちらがこういった行事を大事にしているかどうかも謎だ。
貰える見込みとしては半々。だったら最初から望まない方が気持ちは楽だ。
ネッパーのひねくれた精神はそんな後ろ向きな答えを導きだしていた。
そんなネッパーを信じられないという目でヒートが見やるがどこ吹く風で。

「なんだよ。やっぱお前、誰か貰いたいやついんの?」
「…えッ!!?い、いや、それは、ほら。貰えないかもしれないしさ…!!」
「レアンだろ」
「えぇえええええ!?ちょっ…!ネッパー!!」
「はい、あったりぃー」

ニヤニヤと茶化すように小突いてやれば、真っ赤になって首を左右に振る。
ああ、ウブだねぇ。なんて同い年のくせにそんなことを考える。
自分だってここまで可愛げがあればよかったのだろうか。
だが、生憎今から周りに媚を売って生きるつもりはない。
…ヒートが媚を売っている、というわけではないが。
ここまでストレートに感情が出せるのもすこしうらやましかった。

「…うぅう…ネッパーは本当にいないの?」
「いる」
「えっ!?だ、誰!?」
「言わねぇ」
「ず、ずるい!」

意地悪そうに笑いながら、ヒートの質問をかわしていく。
言ったところで変な噂が立つだけだろう。
口は災いの元だ。それに、あちら側もあまり人に知られたくはないらしい。
自分もそれは同意見なので、彼の名誉と自分のために、はぐらかす。


「それに、俺、チョコだのお菓子だの、そんな柄じゃねーし」













当日になれば、今までそんな素振りさえ見せなかった奴も浮き足立つ。
実際、練習後に女子たちから配られたチョコレートに全員が全員飛びついていた。
サトスなど涙を流して喜ぶ有様で、正直心の底でドン引いた。
問題のヒートはというと大本命のレアンから受け取る際顔を真っ赤にしていた。
それが本命かどうかはわからないが、本人にとって肝心なのはもらえることなのだろう。

「はい、ネッパー」
「おう」
「1人だけ取りにこないんだもの。甘いもの嫌いだった?」
「いや、普通」

ヒートに渡し終わった後、駆け寄って来たレアンから一袋受け取る。
可愛らしく包装された中には2、3個のトリュフ。
掲げて、どこか上の空で話を聞いているとレアンが不意に首を傾げる。

「なんか、今日のネッパーらしくないわね」
「そか?」
「うん。ぼーっとしてる。どこ見てんだか分かんないのはいつもだけど」
「喧嘩売ってんのか」
「違うわよ!心配してやってるだけじゃない!」

とりあえず、渡したからね!と肩を怒らせバーンの方へ向かうレアンの背中を首を傾げながら見送る。
ヒートには悪いが、多分レアンの本命はバーンだとネッパーは推測する。
だが、仲間の恋路さえも、今のネッパーにはどうでもいいこと。
浮き足立つ周りの空気に付いていけなくなって、ネッパーはひとり静かに部屋を後にした。




自室へ向かう長い通路の途中で、貰ったものをぼんやり眺める。
本命からのそれを期待していないわけではない。
ただ、期待してがっかりするのが嫌なだけだ。
ぼうっとしていたのもおそらくそう言った事を考えていたせいだろう。
かといって、ストレートにその事を言えば、絶対に引かれる。絶対に。
理解のない奴に言える訳がないだろう。自分の本命が、まさか。

「…………あ…?」
「ネッパー」


自分より体格のいい、ライバルチームのゴールキーパーだ。などと。






「…アンタ、何してんの?」
「お前を待っていた」

何故か自室の前に立ち、微笑むベルガを見て、ありきたりなそんな言葉しか出てこない。
小さな袋を片手に、こちらへ歩み寄ってくるのを、ただただ眺めていた。
すると、ネッパーの持っている袋に気づいたのかベルガはふと首を傾げた。

「…それ、もらったのか」
「まあな。どうせ義理だ」
「私も義理ならもらった」

ベルガの言葉に、ネッパーは無意識に彼が手に持っている袋に目をやる。
なんとなく、義理でも彼へ誰かの好意が向いている事に苛立つ大人げない自分を自覚しながら、興味無さげにふうん。とだけ呟く。
ネッパーの応答が淡白なのはいつものことなので、ベルガは特に気にはしない。
ネッパーの嫉妬心など知る由もなく、ベルガはああそうだ。と声を上げた。

「本来の目的を忘れるところだった」
「? 何だよ」

首を傾げるネッパーを見やり、手に持っていた袋を漁る。
そして、取り出されたのは一つの黒い長方形の箱。
それは赤いリボンがまかれているものの、バレンタインの甘ったるい空気とはかけ離れた雰囲気を醸し出していた。

「………」
「バレンタインだろう?」

まさかの本命からの贈り物に、ネッパーは僅かに目を見開き、その箱をおそるおそる受け取る。
以外と軽いその中に何が入っているかは分からない。
視線をベルガへと向ければ、開けてみろ。と促される。
言われるがままにリボンをほどけば、元からあまり包装されていない箱はすぐに口を開ける。
中に入っていたのは、チョコでもお菓子でもない、一つのネックレスだった。

「お前の趣味が分からなかったから、気に入らなかったらすまない」

箱に収まっているそれは、実にシンプルな作りで、飾り気も何もあったものではなかった。
チェーンになっているので、見た目は重苦しいが持ち上げてみると案外軽い。
つけていても試合で邪魔になる事はないだろう。
正直、ネッパーは言葉が出なかった。
チョコやお菓子を期待していなかったのは勿論だが、まさか何か貰えるとは。
しかも、本人はああいっているが、そのデザインは自分の好みときちんとあっていた。

「……なあ」
「?」

手に持ったそれを慎重に箱に戻しながら声をかける。
つまり、なんだろうか。
今まで自分が「人から貰ったもの」だと思っていたあの袋は、これを持ち運ぶためのそれで。
自分が思っていた以上のものを、目の前の男はくれた、という事になる。
その事実に、ネッパーはじわじわと自分のうちに高揚感がわき上がってくるのが分かった。




「やっぱ、俺、アンタの事好きだわ」




確認するように、さも当たり前の事のように呟けば、一瞬の間の後に、ベルガが瞬時に顔を赤くする。

「アンタ、肌青いのに赤くなるんだな」
「…ッ!人を…!からかうなッ!!」

カラカラと笑えば怒ったような声が返ってくるものの、あまり本気ではないとすぐに分かる。
まだ赤い顔のままでため息をはくベルガを見ながら、ネッパーはやっといつもの調子を取り戻していた。

「でも、普通バレンタインっつったらチョコだろ?」
「…ああ。やっぱりそっちの方が良かったか?」
「いや、コレで十分。ただ気になっただけ」

嬉しそうに箱を掲げるネッパーを見て、ベルガは一瞬考え込むような素振りを見せる。
ひょっとしてお菓子は作れないとかそういう理由だろうか。
それはそれでいい気もするが、とりあえずネッパーはベルガの言葉を待つ。


「…いや、考えてみたんだが…
 お前はチョコやお菓子、という柄ではないだろう。と思ってな」



照れたように笑うベルガに、ネッパーは一瞬惚けてしまう。
彼の台詞にデジャブを感じていた。そう、いつぞやか自分がヒートに言った言葉だ。
なんだ。アンタ、俺が思うより俺の事分かってんじゃん。
そんな言葉が出そうになったが、寸でのところで押しとどめる。
言ってるこっちも恥ずかしい。そんな台詞。

「やっぱ、俺にはアンタ以外にいないわ」
「…………お前は…どうしてそう…」

恥ずかしい事を堂々と言えるんだ。
カラカラと笑いながらベルガの背中を叩くネッパーに、やはり真っ赤になりながらため息をはく。
これは恥ずかしい事じゃねーだろ。なんて、そんな理屈は自分自身にしか通じない。
しかし、まんざらでもなさそうなベルガの表情を見て、ネッパーはニヤリと笑う。

「なあ。キスして良い?」
「調子に乗るな!」

それでも、前途多難ではあるのだが。


















「そういや、これ持ってくるだけでそんな袋必要あったのかよ?」
「いや、これには他にもチーム全員分が入っていた」
「…は?何だよそれ」
「あ。そういうのをやったのはお前だけだ」
「そう言う問題じゃねーんだよ。なんで」
「いや、ガゼル様に『バレンタインだから何か寄越せ』と言われて…」
(…あのむっつりが…!)
「だったら全員分作ろうと思ってな」
「へぇ。で、何作ったんだよ?」
「ブラウニー」
「俺にもくれよ」
「お前にはそれをやっただろう」
「…………………」



…前途多難である。



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