祭りの後 [エイリア]

クリスマス系統ラストはパーベル。
なんかずるずる長くなっただよ……orz


そういえば気づけば閲覧者総数が2万越えてたんですけどえ、なにこれどういうこと早くないですか。
しかも気づいたのは2万を2千ほどすぎたあたりでしたが(遅)
1万のときも何かやろうかと思いつつ何もしなかったんですよね…。
なんかリクエストとかあったら受付ますー。記事にレスなりメールなりで言っていただけると嬉しいですー。
最近ガチでネタ不足。







どこかの誰かの誕生日だろうがなんだろうが、そういうことは全く気にせず
クリスマスというものは勝手に騒がれ勝手に終わるものだ。
イブから女組が何かしらをしていると思えば、クリスマス当日にケーキを作って持って来た。
失敗作から完成されたものまで全部持って来て、「皆で食べるために作ったのよ」などとクララに言われてしまえばどうしようもなく。
別に甘いものが苦手だと言う者もいなかったのでそうしてダイヤモンドダストのクリスマスパーティは幕を開けた。
最初は思い思いのペースで各自ケーキをつついていたのだが、いつまでも同じ味だと飽きてくるのが人の性。
ひとり2人と手を付ける者が減って行き、最終的にはケーキそっちのけで遊びほうけ始め、深夜になって疲れて皆が寝静まった部屋の中では食べ残されたケーキが机の上に鎮座するばかりだった。
…いや、これには少々語弊があるだろう。
もうすぐクリスマスも終わろうとしている深夜。
食べ残されたケーキと、その前に座って一人黙々とケーキを食べる、一人の姿。


「…………」


一口頬張り、再びケーキに伸ばされるフォークを持つ青い手。
皆寝静まっているため、声を発する訳にも行かず、文字通り黙々と食べ続ける。
飽きてはいるがマズくはないのだ。
一番歪な形をしていたアイシー手製のものは、彼女の兄アイキューが全てを凄まじい勢いでかきこんでいた。
そのケーキの形状は、制作過程を見ていたクララ曰く「祟り神が降臨していた」らしい。
そんな物体を食べたアイキューが、パーティの後半になって青い顔をしていたのは、気にしないでおこう。

(リオーネのものが一番美味い。…クララは多少スポンジが堅い…)

感想も口には出さない。
周りで雑魚寝している皆が起きてはかなわないからだ。
ベルガはそのまま一人黙々と食べ続けていたのだが、ケーキがようやく半分に減った頃。


(…さすがに、甘い)


物を粗末にはしたくないという精神から食べ続けていたが、さすがに口の中がどうにかなりそうだ。
フォークを静かに置き、そっと席を立つ。
食べる物が甘いなら、何か苦い飲み物でも入れてこよう。
調理場へと足を運べば深夜だというのに明かりが付いていた。
一体誰が。と思い、顔をのぞかせれば、暗い瞳と目が合った。

「ネッパー」
「…なんでいるんだよ?」
「いや、コーヒーでもと思ってな」

水でも飲みに来たのか、コップ片手に流しのそばにいるネッパーに思わず驚く。

「深夜に何やってんの?」
「…ケーキ…処理?」
「なんだそりゃ」

ネッパーの方の事情も聞けばどうやらプロミネンスもクリスマスを祝っていたらしい。
騒ぎ疲れて眠っていたが、彼一人だけ妙な時間に起きてしまった。とのこと。
相手の事情を聞きながらも、慣れた手つきでコーヒーを入れるベルガの手元を、ネッパーはまじまじと見つめていた。

「いるか?」
「いらね」
「そうか」
「つか、ケーキ処理ってなんだよ」

先ほどベルガが呟いた言葉に興味がわいたらしい。
なにやら楽しそうにこちらを覗き込むネッパーを横目で見ながら、ベルガは静かにカップにお湯を注いだ。

「クララたちがケーキを大量に作ったんだが…大量に余ってな。もったいないと思って今食べているところだ」
「夜中に?」
「夜中に」

ばっかじゃねーの?とケラケラ笑うネッパーに反論は出来ない。
別に夜が明けてからでも問題はないのでは。と思わなくもないのだが、
起きたときに自分のケーキが食べ残されていると気づいたときの女子の反応が恐ろしいのだ。
ああ見えて、ウチのチームの女子は怒らせると手が付けられない。

「お前はどうするんだ」
「あー…目ぇ覚めたしな。アンタのケーキ処理見ててやるよ」
「そうか」

ニヤリと笑いながら楽しそうにベルガの後に付いてくるネッパー。
ベルガは彼を無下に扱う訳でもなく、そっともう一つカップを手に取った。





「いらねぇっつったのに」
「じゃあ飲まなければ良い。私が後でもらう」

目の前で湯気を立てるカップをジト目で見る。
対するベルガは涼しげな顔をして再びフォークを手に取っていた。
後は、半分だけ。

「アンタ、あとこんだけ食う気なの?」
「ああ」
「…甘党?」
「特別好きな訳でも嫌いな訳でもない」
「ふうん」

再びケーキの山にフォークを突き立て始めたベルガを、ただただ見る。
案外手持ち無沙汰なのか、ネッパーはいらないと散々言っていた
ベルガの入れたコーヒーに手を伸ばした。
一口飲んで、何やら渋い顔。

「うげ。ブラックかよ」
「なんだ。飲めなかったのか」

何やら小馬鹿にされているような、笑いまじりのベルガの言葉に、ネッパーは口を尖らせた。
飲めない訳ではない。得意じゃないだけだ。そう言っても、多分良い訳にしか聞こえないのだろう。
カップを握ったまま固まっているネッパーに、ベルガは再び苦笑を漏らしてから、
一口大に切り取られたケーキを差し出した。

「甘いぞ」

中和はできるだろう。
そういって差し出されるフォークを、ネッパーは呆然と見つめる。
まあ、一口分くらいなら手伝ってやっても良いか。と軽い気持ちでそれを遠慮なくもらう。
そして、また渋い顔。

「……アンタ、これ本気で全部食べる気かよ…」
「できれば」

一口もらって分かったが、かなり甘い。
これをいままで延々と食べ、なおかつ更に食べるのだとしたら一体どの口が別段甘党ではないと宣っているのか。
再び一口大に切り取り、ケーキを口へと運ぶベルガを信じられないと言った顔で見やれば、僅かにフォークを動かす手が遅くなっているように感じた。

「…嫌になってんだろ」
「……気持ち悪くは、なってきた」

それ見た事か。
元々青い肌が青みをさらに増しているような気がした。
そんなベルガをせせら笑うものの、なんとなく物珍しくてじっと見つめる。
ついには、フォークを皿の上に投げ出し、軽くため息をはいた。

「大丈夫かよ?」
「…いや、いろいろと無理だ…」

こういうものはいきなり限界が来るものだ。
気分が悪そうに、ずるずると横になるベルガを、ネッパーは静かに目で追う。

「少し、休む」
「いや、つかもうそのまま寝ろよ」

横になってからしばらくは、よくわからないうめき声が時々聞こえたがそれも最初のうちだけで。
すぐに他の連中に混ざって寝息が聞こえて来た時、ようやくネッパーは一つため息をはいた。
目の前にはベルガのがんばりもあって残り僅かになったケーキの山。
すぐそこに投げられたフォークを見て、そういえばこれはあいつが使っていて、
それを俺が使って、さらにあいつが使ったんだったか。
なんてどうでも良い事に思考がシフトする。
なんとなくフォークを持ち上げれば、先端には僅かにクリームが付いていた。


「………間接キス…?」


そういうことになるのだろう。先ほどの行為は、おそらく。
されたときは何とも思わなかったが、後々考えると凄く恥ずかしい事なんじゃないだろうか。
フォークに向けたままの視線を横になって寝息を立てるベルガに移す。
先ほどまでの苦しそうな顔とは打って変わって実に穏やかな寝息だ。
ケーキ、フォーク、コーヒー、そしてベルガへと視線を巡らせて行き、
ネッパーはひとり、何かを意気込むと手近にあったケーキの皿を引き寄せた。











「…………ん」

なんだか眩しい気がして起き上がる。
寝ぼけてぼんやりする思考で周りを見渡せば未だに寝ているチームメンバー。
窓を見れば朝日が穏やかに差し込んでいた。
しばらく窓の外を眺めてぼうっとしていたベルガだったが、昨晩の事を思い出すと、はっとして机の上に視線を向けた。
だが、そこには自分が食べる事を断念したケーキの山は存在せず、
空っぽになった皿だけが並んでいた。

「……?」

不思議に思い、机の上を見渡せば、昨夜ネッパーに出したコーヒーカップの下に紙が挟み込まれているのを見つけた。
それを引き寄せ、紙を手に取る。
開いた紙に書かれていたのは、単純明快。


『ごちそーさん』


その、一言だけ。
訳が分からず手紙を見つめるベルガが視線を上げると、
そこには皿に乗っかっている自分が使っていたはずのフォークが、一本。
一本だけ。

そして、持ち上げたコーヒーカップの中身は、見事に飲み干されていた。


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