君のいる景色 [土受け]

一土で短め。

こういうの書きたい!とかはよく思うんですけど、
どう一つの文章にまとめるかで苦戦していろいろ書けずじまいです…
ううむ。文才が欲しい…。でも画力はもっとほしいです(え)






「一之瀬ー。お前危ないぞ」
「へーきへーき」

車道と歩道を分けるための細いブロックの上をバランスを取りながら歩く一之瀬。
危なっかしくてみていられなくて注意しても素知らぬ顔。
そのままふらふらと前に進んでいると思ったら、突然ずるりと足がブロックの向こう側へ。
そのまま派手に転倒しながら「いてっ」なんて間抜けな声を上げた。
…ああ。だから俺は危ないぞって言ったんだ。





「土門が今日自転車で来ててよかったよ」
「感謝しろよなー」
「ありがとうございます。土門様」

ふざけて言えば、背中越しに土門が笑ったのが分かった。
朝練に遅刻しそうになったと言っていた土門は珍しく自転車に乗って登校して来た。
それが功を奏して運悪く足をくじいた一之瀬を後ろの荷台に乗せてゆっくりと進んで行く。
座りやすさと、バランスを考えて、背中合わせという座り方を取ったものの、
よくもまあ今時の自転車に荷台なんて付いてたと思う。

「あんまり見ないよね。荷台付きの自転車」
「母さんのなんだよ」
「あ。ママチャリ?」
「やかましい!降ろすぞ!」
「ごめんごめん」

他愛のない会話をしながら、すぎて行く景色を見る。
空はすっかり夕焼けで、真っ赤に染め上がっていた。
遠くから聞こえる下校中の他の子達の声。
静かに目を閉じて、再び開けば、夕日に染められた道がただただ真っすぐ続くだけ。
声はどれも遠くからで、近くには人なんていなかった。

「………なあ。土門」
「んー?」

2人分の体重を乗せた自転車を懸命に漕ぐ土門に声をかける。
返って来たのは案外余裕のある声で、さすが鍛えてるなぁ。とか。

「俺、やっぱそっち向いて座りたい」
「え。なんで」

その方が、安定するだろ。
併せられた背中が僅かに動いたのを感じて、多分少しだけこっちを見たんだろうと思う。
だけど、後ろしか見えない自分がそれを見る事は叶わなくて。
大丈夫だから。とせがむように土門にもう一度頼み込んだ。
しばらくすると、土門のため息と共にキィ。と静かに自転車が止まった。

「ホレ」
「サンキュー」

ひねった足をかばいながら、ゆっくりと方向を変える。
再び進み始めた自転車の上で、一之瀬は再び過ぎ行く景色を見た。
遠くから聞こえる下校中の子たちの声は、大分少なくなって来たように感じた。
ゆっくりと目を閉じて、再び目を開けると、一之瀬は満足そうに頷く。



目の前には、いつもそばにいる人の背中があった。


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