グリーングリーングリーン [土受け]

ゆるーくヤンデレ気味なのせで一土。

それでもいい方は続きからどうぞー。




「栗松!お前今の動き…」
「な、なんかいつもと違う感覚でやんす!」
「うまくいけば新しい技ができるんじゃないか?」
「ほんとでやんすか!?」
「よし!やってみようぜ!手伝ってやるよ!」
「ありがとうございます!土門さん!」

グラウンドの一角で繰り広げられる先輩と後輩のやり取り。
普通に眺めていれば微笑ましいものなのだろうな。とどこか他人事のように考える。
実際他人事だ。微笑ましくなんて見られない。
なんで土門は俺以外と話して笑ってるんだろう?
なんで土門は栗松の方ばかり気にかけてるの?
俺はこっちにいるよ?なんで来ないの?
ねえ、なんで?

「ダーリンっ!」
「うわっ!?」

ふつふつと黒いものがわき上がってくる最中、突然腕を絡めとられ、
一気に思考が現実に引きずり戻される。
よろける体をなんとか片足で支え、ふんばる。

「どないしたん?えらい暗い顔してー」

なんやったらウチが相談に乗るで?なんて。
一之瀬の腕をキープしたまま浦部が頬を染めて訪ねてくる。
暗い顔?どうして。

「別になんでもないよ」
「そう?ならええねんけど…ダーリンは笑顔が一番やで!」

更に密着してくる浦部にはもう慣れた。あまり慣れたくはなかったが。
ああ、これが土門ならよかったのにな。なんて考える自分。
別にそんな自分をいやになんかならない。むしろ正常だと思う。
だって、俺は土門が好きだから。

「あの土門っての、面倒見ええんやなぁー」

知った風な口をきいて。

「土門は優しいからね」
「そうなん?」

そうに決まってる。何を根拠に疑ってるんだ。

未だに栗松の必殺技の特訓につき合っている土門に、黒い感情がわき上がる。
普段は冷静でいられるんだけどな。土門の事だとどうにもうまくいかない。
ぐつぐつと、ぐらぐらと。黒くて、得体の知れないものが徐々に大きくなっていく。
お願いだから、こっち見てよ。土門。
ぐらぐらする頭の片隅が、円堂の休憩の合図を聞き取った。

「ね、ダーリンっ!休憩入ったし一緒にあっちいかへん?」
「え?」
「せやから、2人っきりでラブラブしようやんっ!」
「え、えぇー…」

腕をぐいぐい引っ張られる。
待て待て待て待て。俺は別に君と2人っきりにはなりたくない。
それでも女の子に辛くあたるのは気がひけたから、曖昧な笑顔を浮かべるしかできない。
困った。俺は一刻も早く土門のところに行きたいのに。
どろりと、ああ。また。

「一之瀬ー」

遠くから。自分を呼ぶ声。聞き慣れた、大好きな声。
声の方を見てみれば、土門がこちらに向かって手を振っている。
そしてそのまま手招きをしていることを確認して、ここぞとばかりに浦部から離れる。
後ろの方で、浦部が何か言っている気がしたが、気にしなかった。

「土門!どうしたの?」
「んー…いや、まあ、特に用事はないんだけどさ」
「へ?」

満面の笑みで近寄れば、困ったように苦笑された。
用事、ないんだ。俺に。
そう思う反面、呼ばれた事が純粋に嬉しかったりもする。我ながら忙しい奴。

「なんか困ってるっぽかったから呼んでみたんだけど」

余計なお世話だったら悪いな。と申し訳なさそうに頬をかいて謝られる。
それだけで、先ほどまでの黒い気持ちが嘘のように晴れていくのがわかった。
なんだ。ちゃんと、見てくれてたのか。

「全っ然そんなことないよ!!」
「うぉ!?」

嬉しさのあまり飛びつけば、土門の体がぐらつく。
細かい事で嫉妬して、妬んで、でも話しかけてくれるだけで、一気に自分の世界に平穏が訪れる。
本当に忙しい奴だ。同時に土門の自分の中の位置づけがうまく行かない。
君のせいでいろんな自分が垣間見える。

「土門は複雑だなぁ」
「…は?」

君は劇薬で、精神安定剤。
曖昧な事を言ってやれば、やっぱり間抜けな声が返って来た。

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