『楽しかったよ』 [鬼受け]


大体私の創作意欲は自分の中の需要と供給に左右される。
ネット上とかで供給が満たされれば創作意欲が落ちるのですが、満たされないと自家発電に走ります。
…まあ、自分で書いたものに萌えもなにもありませんが(え)
最近結構なペースで源鬼ネタが浮かぶので多分飢えてるんだと思います。
だれかおらにげんきをわけてくれ!!…なんか元気玉できそうですね。


続きから源鬼。ほのぼのです。
誰かタイトルつけるセンスをください。




『今度、妹が誕生日なんだ』
「そうなのか」

電話越しに交わされる会話。鬼道の声はにわかに緊張していた。
夜に突然携帯が鳴ったと思えば、珍しく鬼道からの着信で、
慌てて出て、あとで俺からかけようと思っていた。と言えばかすかな笑い声が聞こえた。
そのあと、すこし間をあけてこの発言。
雷門との試合のあとから仲良くやれているようで何よりだ。

『それで、一つお前に頼みがあるんだが』
「ん?なんだ?」

何にも構えず、ベッドに寝転んだままで、鬼道の言葉に耳を傾ける。

『今度の日曜日、ちょっとつき合ってくれないか』

思わずベッドから跳ね起きた。





日曜日、待ち合わせ場所で合流したあと、鬼道と目的の場所に向かう。
目的は単なる妹の誕生日プレゼントの買い出し。
一人で行って、良いものを選べる自身がないとかで、源田にお呼びがかかったとのこと。
単なる付き添いなのだろうが、源田としては鬼道と2人きり。
ちょっとしたデートに出る気分で、少しばかり緊張していた。

「で、どんなもの買うかとか決めてあるのか?」
「…あるには、ある」
「お、なんだ。決まってたのか」
「……以前、春奈と話していた時、駅前の店のカップがほしいと言っていた」
「よく聞けたな。お前が」
「…………うるさい」

妹の事となると、確かに仲は元に戻ったが多少負い目があるのか慎重だ。
電話をかけるのでさえ、誰かしらの後押しがないとなかなかできないくせに。
よっぽど頑張ったのだろうなぁ。と無意識のうちに自分より少し下にある頭を偉い偉いと撫でてやる。
払われると思ったが、意外にも恥ずかしそうにそっぽを向くだけだった。

「でも、決まっているなら俺は必要だったのか?」

ここで必要でなかったと言われたらおそらく凹む。

「いや、必要だ。むしろ来てくれて本当に助かった」

断られたらどうしようかと思った。とぼやく鬼道に、無性に嬉しくなる。
ああ、こんなに単純だっただろうか。俺は。
そして目的の場所に着いた時、確かにこれは誰か必要かもしれない。と理解する。

「……確かに、この店に男一人はきついな」
「だろう?」

目の前には女性が好みそうな可愛らしいものばかりを集めたファンシーショップ。
ここに男ひとり、単独で入ってこいと言われると、確かに気が引ける。
なるほど。道連れというわけか。と源田は少し沈んだが、ここまできたら仕方ないと気を取り直す。
いざ。と扉を開けたら。ドアにつけられたベルが可愛らしい音を立てた。


「どれだ?」
「多分こっちだ」

とりあえず早く出たいのか、源田の手を引き、店の奥に早足で向かう。
この現状が逆に周りの女性客の目を引いている事にはどうやら気づいていないらしい。
源田は源田で手をつないでいるということに不快感がないらしく周りの視線に気づいていても指摘もしない。
珍しい男性客。しかも2人組。ついでになんでか手をつないでいる。
存在感は、抜群だった。

「あった。多分ここだ」
「…ここはいいが、種類が結構あるな」

どれだ?と聞けば、言葉に詰まる。
どうやらそこまで聞くにはいろいろもたなかったらしい。
目に見えて焦りながら凹んでいる鬼道を見て、思わず苦笑する。

「お前の妹さんの好みに合いそうな奴を選んで渡せば良い」
「……そう、だな…」

そのあとは散々2人で言い合って吟味して、
結局選んだ品をレジに持って行くまでかなりの時間居座る事になってしまった。
時間が経てば今自分たちがどこにいるのかなんて案外どうでも良くなるらしい。
商品を購入した頃にはファンシーショップにいることに何の抵抗もなくなっていた。
ただ、最後まで自分たちに向けられる好奇の視線は気にしない事にした。



「すまなかったな。つき合わせて」
「いや。良い経験させてもらったよ」

笑って言えば、鬼道も思わず笑う。確かに、貴重な経験だ。男2人で女性好みの店とは。

「ああいう店に行くなら佐久間とかの方がよかったかもな」
「?」
「あいつ結構女顔だからごまかせるかもしれない。本人に言ったら怒るけどな」

もしくは洞面なんてどうだ。と冗談めいて言えば、鬼道は首を横に振った。
確かに、佐久間と2人だと色々面倒そうだし、洞面と鬼道。という組み合わせもどうにも思い浮かばない。
そう考えると案外役得だなぁ。と脳内の片隅で考える。口にも顔にもださないが。
目的は果たしてしまったが、このまま鬼道と別れるのも何かもったいない気がして、
これからまた、どこかにいかないか。と誘えば、
渋られる事もなく、ああ。と快い返事が返って来た。


それから夕方近くまで色々な店を点々とした。
別れなければならない道までさしかかって、今日は楽しかった。ありがとう。なんて。
その言葉のせいでなんだか「今日一日鬼道と2人きりだった」ことを妙に意識してしまう。
まあ、もうすぐお別れなのだが。

「俺も楽しかった」
「そうか。なら、よかった」

無理につき合わせて悪かったな。とまた謝られたので、答える代わりに頭をポンポンと叩いてやる。
背を向け後ろ手に手を振って、また明日。と言えば、
俺は。と急に張り上げられた鬼道の声が背中に当たった。

「俺は、佐久間とかじゃなく、お前と、行きたかったんだ」

一瞬思考が止まる。何の話だろう。とぼんやり考える。
そして、買い物の帰りにふとぼやいた自分の言葉が頭をよぎる。

『ああいう店に行くなら佐久間とかの方がよかったかもな』

何の考えもなしに言ったのに気にしてたのか。
振り返れば、俯いて真っ赤になった鬼道がいて。
よっぽど頑張って言ったんだろうなぁ。と思わず笑みがこぼれる。

「誘ってくれて、嬉しかった」

無意識のうちに鬼道の頭をそっと撫でれば、更に赤くなって頷いたあと、走って帰ってしまった。
あんなに派手に袋を揺すって、カップが割れてなければ良いが。
弾む気持ちを抑えるように、関係ないことを考えた。

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