つまりは好き [鬼受け]


なんか前半は見てて凄くもどかしくなる源鬼です(笑)
源田さん告白話。源田はヘタレだろうが男前だろうがいけます。


続きからどうぞー。多分甘いです。





好きだ。と言ったら、鬼道は微妙な顔をした。
喜んでいる、とも言いがたく、心底嫌そうな。とも思えない。
良い方にも悪い方にもとれなくて、思わず源田も微妙な顔をした。

「……えーと」

2人で微妙な顔をしたまま続く沈黙が辛くてノープランで声を出す。
沈黙を破ることで、散々あちこちを彷徨っていた鬼道の視線を自分に戻す事はできた。
だが、ノープランなのだから、言葉が続く訳がない。
ますます気まずくなる。

「……鬼道は?」
「え」
「…いや、だから、鬼道は、どうなんだ?」

率直に「俺の事を好きか」と言えない自分がもどかしい。
再び微妙な顔をする鬼道に、源田の心労がさらに増える。
一大決心をして告白したのに、返って来たのは微妙な顔とは。
何かしらの答えが欲しくて、鬼道を見つめる。

「…な、にが?」
「へ?…いや、だから…」

そうか。鬼道は天然だったのか。
どうでもいいことばかり頭をかすめる。今はそんなこと発見している場合じゃない。

「き、鬼道は、俺の事、どう思う…?」
「どう…」

ゴーグル越しに見つめられる。
本人はそんなつもりはないのだろうが、品定めされている気分がして緊張する。
今、俺は今までにないほど硬い表情をしている気がする。妙な自覚が生まれた。

「源田の事は、頼りにしている」
「ああ」
「………うん」

いや、うんじゃなくて。
おそらく鬼道には源田の言いたい事の8割も通じていない。
やっぱり天然だったのか。と再確認して、源田は意を決して鬼道の肩に触れる。
ビクリと揺れる鬼道の体に、少なからず「こういう答えを求められているわけではない」
という自覚はあるのだろう。とどこか遠くの頭で考えた。

「俺は、お前の事が好きだ」

一回言ってしまえば、二回目は案外すんなり出てくるもので。
鬼道はそれに頷いた。

「…恋人になりたいって、意味で、だ」

静止。
多分その単語を使うのがあっている。鬼道は動きを完全に止めた。息も多分止めている。
そこからの光景は、本当に珍しいものだった。
ぽかんとしていた顔が、源田の言った言葉の意味をようやく理解したのか、
じわじわと赤く染まって行くのが分かった。ああ、こうやって人は紅潮するのか。

「…なっ…!?」
「ああ、やっと分かったか」

鬼道のワンテンポ遅い反応に緊張しているのがばからしくなってきた。
今となっては源田に緊張はほとんどない。慣れとはやはり大事なようだ。

「で、そのお前の答えが聞きたい」
「…いや、…その…」

先ほどまでとは明らかに違う反応。あの鬼道がうろたえている。
今まで色恋沙汰になぞ興味がなかったのだろう。
当たり前だ。今までずっとサッカー一筋。たった一人の肉親のために脇目もふらない。
そんな鬼道に、雷門との試合のあとゆとりができた。
今ならば、と告白した結果が、これだ。
サッカー一筋なのは源田も同じだったが、源田はここまでウブではない。
そのため、鬼道の反応は珍しいもののように目に映った。むしろ、貴重だ。

「ゆっくりでいいから考えておいてくれ」
「…………」

緊張が消え、相手に自分の気持ちを理解してもらえたあと源田の中に生まれたのはゆとりだった。
最初は答えが早く聞きたくて仕方がなかったが、今はいつまでも待てる気がする。
長丁場になりそうなことを覚悟で、鬼道に優しく言うと、
鬼道はまた、微妙な顔をしていた。ああ、その顔は止めてくれ。不安になる。

「……源田」
「?」

このまま黙りを決め込まれるだろうと思っていたが、予想外に名前を呼ばれる。
俯いたままの鬼道の、次の言葉を待つ。
大丈夫。今の自分には、余裕がある。

「…俺は、お前の事は好きだ。……おそらく」

おそらくとはなんだ。

「だが、源田と同じ意味で、その、好きかどうかは、俺にはわからない」
「……ああ」

なるほどな。と思うと同時に鬼道らしいな。とも思う。
思わず笑みがこぼれた。少しでも特別に思ってくれるならそれでいい。

「…俺は、」
「鬼道。焦らなくて良い」

今の俺には余裕があるから。
鬼道の気持ちが完全にこちらを向くまで待つ余裕が。

「返事はいつでもいい。今日はもう、帰ろう」

外も暗くなって来たから。と椅子に起きっぱなしになっていた鬼道の荷物をとってやる。
そのまま鬼道の眼前にそれを持って行き、差し出すが鬼道は受け取らない。
源田の手をじっと見つめたまま、何かを考えているようだった。

「鬼道?」
「…不思議だな。源田」

何がだ?と聞き返せば、鬼道は今度は源田の顔を見つめる。
少し落ち着いたようで、顔に狼狽の色も、微妙な表情も浮かんではいなかった。
落ち着いているならいい。慎重に考えてもらった方がいいから。
鬼道の言葉の続きを待っていると、ゆっくり、鬼道の口が開いた。

「好きかどうかは分からないのに、お前に言われた言葉は、嫌じゃなかった」

静止。
身長差のせいで、源田よりも下から向けられる言葉に、源田の脳内が完全に停止した。
…鬼道…………それは………。

源田は気づけば荷物を落とし、鬼道を抱きしめていた。
苦しそうに抵抗する鬼道を後目に、体中が歓喜で熱くなる。


ああ、余裕があったんじゃなかったのか。俺。


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