グレーゾーンの返答 [エイリア]


昨日はレポート描いてそのあと死に絶えてましたすみません^^;



今回久々にフロベル!需要なんてしらない!(爆)
前回あげた「キャッチボール」の続きとなっていますので
そちらの方を先にご覧いただければ、と思います。^^
なんか描いてるうちに甘ったるくなりました。
フロストさんが皆から怖がられてるとか嘘だろ。


そんなわけで続きからどうぞー^^











いきなり告白されて、果たして何人がその場で回答できるのだろうか。
少なくとも、その回答できるものの中に、自分は含まれてはいない。
ただただ、妙に恥ずかしくて、混乱して、考えさせてほしいと告げるのが精一杯だった。
好きだと言われたその声を聞いて、歓喜に震えたことは、確かなはずなのに。


「ベルガ」
「…フロス、ト」

練習終了後、皆ががやがやと自室へ戻る中、引き止められてぎくりとする。
振り向いたその先には、いつぞやと同じように無表情の彼がいて、
そんな顔で「話がしたい」と言われれば、首を横に振ることなど、できるわけもなかった。

好きだと言われた。
だが、その当時はなんとも答えが見つけられなくて、逃げるように考えさせてくれとだけ呟いた。
その言葉を彼はきちんと受け取ってくれ、気長に待ってくれた。
だが、それもひと月経てばさすがに待たせすぎ、に、なるのだろう。

「………すまない」
「なんで謝るんだ」

皆が去って行った誰もいないグラウンドのベンチで、最初に吐き出された言葉がそれだった。
待たせすぎている。それは、分かっている。
だからこそ謝ったのだが、とうのフロストは訳が分からないとでも言いたげに、首を傾げた。

「俺はいつまででも待つつもりだ」
「…すまない」
「だから、謝るな」

お互いがお互いを見ないまま、ぼうっとグラウンドを見つめる。
思えば、あそこで告白されたのだ。

「…その、いいのか」
「何がだ」
「………私は男だ」
「ああ。知っている。残念ながらお前みたいに体格の良い女は今まで見た事がない」
「……褒め言葉と取っておこう」
「で、他に不安要素は」
「……………私は、普通じゃない」
「何が」
「…肌の色も、目も」
「それを俺に言うのか」

青い肌をした顔が、フロストの方を向く。
目隠しに隠れて、本来ならば見えないはずの視界で、目の前の彼を見た。
その視線を絡めとるように向けられた目には、虹彩も、瞳も存在しない。
青く塗り込められた、ビードロのような目がベルガを見やる。
そんなフロストの髪は、結晶化されたかのようにグラウンドを照らすライトの光を反射していた。

「…すまない」
「お前は謝ってばかりだな」

苦笑をこぼすフロストの言葉に、ベルガは更に萎縮する。
謝るしか今は何も見つからなかった。謝る要素しか見つからなかった。
そう思ってうなだれるベルガをちらとだけ見て、フロストは口を開く。
表情は、今まで同様、見事な無表情。

「不安なのはそれだけか」
「…他にも色々とはあるが…………まあ、な」
「だとしたら、それは俺にとっては不安に値しない」

男同士である事も、容姿が他の者と違っている事も。

「それを全部ひっくるめて、お前だろう。その、お前が好きなんだ」

改めて告げられる「好きだ」と言う言葉に、ぎくりとする。
嫌な意味ではなく、むしろ喜びに近い形で肩を震わせる。
だが、それをどう捉えて、どう扱えば良いのかを会得するのに、ベルガの知識は乏しすぎた。
何分、恋愛感情としての好意には不慣れ。
当初自分の容姿に引け目を感じていたからこそ、そういったものと触れ合う機会はなかった。
ひょっとすると、向けられてはいたが、自分自身が気づかなかっただけなのかもしれない。
思わず視線を彷徨わせたベルガを見て、彼の心境を僅かながらに悟ったのだろうか。
フロストは突然、問いただすようにベルガに言葉を向けた。

「お前は、俺が嫌いなのか?」
「嫌いでは、ない」
「なら、少しでも好意はあるのか」
「…おそらく」
「それは友愛か。恋慕か」
「…わからない」
「俺から好きだと言われて嬉しかったか」
「………おそらく」
「だとしたら、答えは出てるんじゃないのか」
「だが」
「普通なら、男に好きだと言われて嬉しい訳はないだろう」
「…そうだが」
「なら、答えはもう」
「わからないんだ」


「…お前の答えは、どれも曖昧だな」


苦笑まじりに呟かれた言葉に、弾かれたように顔を上げる。
見やったフロストの表情は、いつもの無表情ではなく僅かに和らいでいるように見えた。
矢継ぎ早な質問。
だが、そのやりとりの合間に告げられた答えに、フロストは何となく答えを見つけた気がして、ベルガの正面に立つ。
立っていれば身長差はほとんどない二人だが、ベルガは座っているため、僅かに首を上へと向ける。
見上げた瞬間、迫る青。頬にひやりとした感覚が触れた。
そういえば、彼は低体温だったか。



「頼むから逃げるな」



俺が、死んでしまいそうだ。
そう呟く目の前の彼の声は、聞いた事がないほど必死だった。
その声で、ようやく自分が逃げていた事に気づいたのは、あまりにも遅かったのかもしれない。
額がぶつかりそうになる距離に迫った目の前の青を、見えない瞳で見つめる。
もう、逃がしてはもらえないと思った。

「答える事は簡単なんだ。たった2つでいい。どちらかを選んでもらえたらいい」

交わる視線、触れる手と、自分の肩が、僅かに震えていた。



「俺の事が、好きか。嫌いか」



その選択肢は、ずるい。と思った。
合間がない。中間がない。逃げられない。
はくりと口を開けて、閉じる。答える事に躊躇うように、ベルガは何度かそれを繰り返す。
考える時間は十分にあった。その間十分に考えた。
答えは出ていたように思う。ただ、その過程が見つからなかった。だから確証がなかった。
だが、目の前の彼は目で訴えるのだ。

過程はいらないから、結果だけを寄越せと。


「………好きだ。…きっと、」


答えた結果は結局のところ曖昧で。
だが、それでも満足したように鉄面皮は崩れて、そのまま勢い良く抱きつかれた。
加減を知らないきつい抱擁にベルガは慌てて背中を叩く。
しばらくした後解放されたと思えば、一拍と待たずに「キスしてもいいか」だなど。
言葉の意味を認識するまで随分と長い時間を要して、再び口の開閉を繰り返す。

「…多分」

やっとのことで帰って来た答えは、やっぱり曖昧。
だけれども、フロストは「お前らしい」と一笑して、遠慮もせずに口づける。


答えが不透明だった割に、不思議と悪い気はしなかった。




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