特等席 [エイリア]


拍手叩いてくださった方ありがとうございます!頑張ります…!!

今回パーベル。以前あげた「それから、」の続きのようなものなのでさっさとあげてしまおうと。
一応今回、2人はエイリアの一件が解決してから初めてまともに顔をあわせて会話する。という設定の元に書いてます。
要するにファーストコンタクト。
ですので今まであげて来たパーベルとは切り離して考えてください^^;


では、それでもかまわない!という方は続きからどうぞー^^









「馬鹿野郎手前!それは俺のだ!!」
「うるせぇ!早いもん勝ちだろうが!」
「2人とも喧嘩しないのー!まだいっぱいあるんだからー!」
「喧嘩してるうちにそれ以外食べられなくなるよー」
「ごめん、醤油どこ」
「お茶おかわりー」
「あ、私も」
「いや、だから醤油どこ」

日も沈んで外も真っ暗になった中、煌煌と明かりが灯るお日さま園の宿舎では、昼間のグラウンドの活気にも負けず劣らずの喧噪が響いていた。
テーブルの上では各自自由に選んだ席に座ったり立ったりしてすでにチャンバラにも似た喧嘩が繰り広げられる。
数ヶ月も同じような事を繰り返していれば、こんな光景にも慣れるわけで。
苦笑しながらベルガはどうにか空いている席を探し始める。
やっと見つけた空席は、喧噪が他と比べて比較的大人しい場所で、思わず安堵の息を吐く。
食事くらい、落ち着いて食べたいものだ。

「隣、構わないか」

埋まっていた両サイドに断りを入れる。
チームの垣根はなくなったとはいえ、仲がいいだの不仲だのというのは健在だ。
仲のいい者と並んで食べようと思い、席を友人分多めに確保しようとしている者がいるのも事実で、実際それは女子勢に色濃く現れていた。
左側に座って、リームと談笑していたパンドラが「どうぞ」と笑顔で了承することに安堵し、右側を向く。
どうも料理を口に運ぼうとしていた最中だったらしく、箸をくわえ、ゆっくりと咀嚼しながらこちらに視線を向けてくる。
見上げてくる瞳はバンダナが落とす影のせいなのか、元からなのか、どこまでも暗かった。
ごくり、と嚥下する音。

「どーぞ」

時間をかけて返された言葉に、一拍遅れて礼を言う。
席について、皆とは少し遅れて晩飯に手を伸ばす。
周りの喧噪を聞き流しながら、実に奇妙とも言えるような沈黙がその場に流れる。
聞こえるのは箸と食器のぶつかる音と、咀嚼音。
先ほどから忙しなく動く右隣に座る者の手。見かけは小柄だが、どうもよく食べるらしい。
そんな事を頭の端で考えながら、自らも適度に口を動かす。
今日は少し焼きすぎたかもしれない。料理当番だったからか、そのようなことも考えながら。

「アンタさ」

唐突だった。
喧噪に混じって、随分とクリアに聞こえた声に、思わずベルガは右を向く。
相手はベルガの方を見る事もなく、黙々と箸を動かしていた。

「ダイヤモンドダストの奴だろ」

言われた言葉が、一瞬なんの話か分からなかった。
しばらく経って、「ああ」と思い出したかのような随分のんきな声を上げてしまった。
ここ最近はそんなチーム名、すっかり忘れていた。
そう問われて、改めて右隣の男の顔を見ると、何となく見覚えがあった。
そうだ。同じマスターランクで、確か。

「そっちは、プロミネンスだったか」

質問に質問で返す形になったが、隣の男は一拍置いて、ニヤリと笑った。
その、笑い方もどこか見覚えがある。練習試合で、何度かゴールを割られたときに見せた、それだ。

「…確か…ネッパー、か?」

正直、チームも別、カオスにも参戦しなかったベルガにとって、自分のチーム以外の選手の個人的な情報を得る機会は僅かしかなかった。
その限られた中で、しかもこの大人数の中で覚えていられた事は,ある意味奇跡に近い。
名前を言った途端、相手は驚いたような顔をしたが、やはり先ほどのようにニィと笑う。

「名前、知ってるとは思わなかった」
「私も驚いている」
「アンタ、ベルガだろ。GKだった」

今度はベルガが驚いた。
自分が相手の事を知っていた事にも驚きだったが、相手も自分の名前を言い当てた事に少なからず驚く。
一つコクリと頷いたベルガを見て、やはり楽しそうにネッパーは口角をつり上げた。

「よく、覚えていたな」
「それはアンタもだろ」
「まあ、そうなんだが」

箸を口に運びながら、言葉に詰まったように遠くを見つめる。
周りは未だに喧噪が響いており、周りの会話に混ざって、自分たちの言葉もただの場の一部に変わる。
ベルガがゆっくりと食事を進める間も、隣のネッパーは忙しなく箸を動かしていた。
おそらくはそれが自分のペースなのだろうが、ベルガにとってみれば随分とがっついているように映ってならない。

「…よく食べるな」
「んあ?」
「いや、まず口の中にある物を飲み込め」

呆れたように注意するベルガの言葉に、ネッパーは素直に応じてもくもくと口の中の物を飲み込む。

「アンタは俺の保護者か」
「少なくともそっちよりは年上だと思うが」
「ふうん」

素っ気なく返された言葉にため息を返すベルガを尻目に、再び目の前の皿に盛られた料理に手を伸ばす。
一体何個目だろう。そんなことをぼんやり考えながら、ベルガも目の前の皿から一つ適当につかみ出す。

「コレ、アンタが作った奴だろ?」

唐突にそんな事をいわれ、思わず惚けたような顔をネッパーに向ける。
料理当番は皆、作る量が量なので順当に一度に10人前後が選び出される。
料理ができるものは問答無用で毎日のように当番が回ってくるので確かに今日の料理の中にもベルガが作った物が含まれていてもなにもおかしくはない。
だが、見た目は完全にどれも同じであり、作った当人でも見分ける事は不可能だ。
ただ、ぼんやりと、あそこに運ばれた皿に自分の作った物が入っていた気がする。という覚えはあるのだが、どこにだとかどれがだとかは一切不明だ。
しかも、作るのは大人数。10分の1の確率など、そうそうあたるものではない。
そう言った事もあり、ベルガの表情は思わず表情を曇らせる。

「何故分かる?」
「勘」
「勘、か」
「そう、勘」

あまりにも説得力のないネッパーの言い分に、ベルガは納得いかない顔をして首を傾げた。
勘だけでそこまで堂々と言えるのならばたいした物だ。

「けど、自信あるぜ」

にやりと笑って口の中にそれを放る。
噛み砕いていく様を眺めながら、ベルガは「そうか」と一言だけ返すに止まった。
まず、何をどう返せば良いのかがわからない。
それが自分が作った物であるという確証もない分、何も言えない。
ベルガの素っ気ない返事もあって、ここで会話は一端打ち切られる。
二人の間にだけ沈黙が流れ、周りの喧噪がどこか遠くに聞こえていた。

「そうだ」

遠くに聞こえる喧噪を押しのけて、ベルガが声を上げる。
再び黙々と料理を食べ進めていたネッパーの箸が止まり、ベルガを見上げる。

「自信があるなら、こっちの皿でも、分かるのか?」

指差した先には大皿に盛られたおにぎりの山。
夕飯が始まってすぐにはもう少し山と盛られていたのだが、大分時間が経った今では山は控えめになっている。
こちらの方は、ベルガもどこに自分が作った物があるのか把握していた。
アイシーが、自分が作った物は形が悪くて恥ずかしいから。とベルガとリオーネが作った物の間にねじ込むように入れていたのを覚えている。
アイシーの作った、形も不揃いな丸いおにぎりは嫌でも目につく。
その右隣にあるのがリオーネ、左隣にあるのが、ベルガのものだ。
自分自身で見分けがつくのなら、ネッパーの言う勘も判断しやすい。
そう思っての提案だったのだが、案外沈黙が息苦しくて場を持たせるために提案しただけにすぎないのかもしれない。
だが、そんなベルガの申し出に、ネッパーは一端箸を置き、その皿を見やる。
真面目に応じるようだった。

「当てられたら、お前の勘を信じることにしよう」
「そりゃあ有り難い」
「大げさだな」

思わず苦笑するベルガを見て、何かを思いついたようににやりと笑うネッパー。

「もし俺が当てたらよ、なんか一つ言う事聞けよ」
「横暴だな」
「そういう性格なんだよ」
「開き直るな。…まあ、別に構わないが」

何をすればいいんだ?とベルガが問うた矢先に、ネッパーは皿の中から一つを迷う事なくつかみあげる。
見やれば、確かにそれは自分が作ったもの。
驚きながらネッパーを見れば、楽しそうに楽しそうにカラカラと笑いながらベルガを見やる。
当たりだろ?と自信満々に言いたげに。

「…私の負けか」
「別に賭け事じゃねーだろ」
「まあ、約束は約束だ。何をしたら良い」

苦笑しながら呟いたベルガの言葉に、ネッパーはカラリと笑う。
最初から決めていたかのように、流暢に。



「今日みたいにアンタの席取っといてやるから、これから飯の時は俺の横に座れ」



予想だにしなかった要求に、あっけにとられるベルガを見ながら、
ネッパーは楽しそうに愉しそうに手にした物に噛み付いた。


********************************
ベルガはさして気にしてなかったけどネッパーはずっと気にしていた。
そしてずっと食べてたのは全部ベルガが作ったと思われるものだけ。
…そんな裏設定があったりなかったり。
他にもいろいろ考えてたりしたんですけど入り切りませんでした。
どちらかというとこれはパー→ベルか。ネッパーさんからストーカー臭がする…(爆)

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