曖昧メカニズム [エイリア]


拍手とかアンケートとかいろいろありがとうございます!!励みになりますー!
アンケートはやっぱり最近の更新の偏りにも原因があるんだろうか…という結果になっていますが(笑)それでも答えてくださる方がいてなんだかホクホクしております^^*


で、今回の更新。まさかの円ベル………はい、完全に触発されてますよ…?
い、いや!だってよそで見た円ベルが凄い可愛かったんで!!なんかつい!!
やっちまった感満載ですが、つきあっていただける方はお願いします…^^;
ただ、この二人に接点持たせるために完全に俺ブン設定になってます。色んな子が雷門にいますよ。
容赦なくスカウトキャラとか出てきてるんで分からない人は分からないかもしれません。
…と、言っても阿部島と河高なんで問題ない気もしますが…(ウチではよく出没する子)

ちらっとパー→ベル要素もあり!ええ、影響されてます!本家さんに土下座したい!(殴)
そんなノリですがいいぜ!って方は続きからどうぞー^^











新しく入ったチームには、妙な風体をした者が限りなく多かった。
自分に最初に話しかけて来たのは紫色の仮面をした人物であったし、
その人を引きはがして謝って来た者はガスマスクをつけていた。
仮面舞踏会でもやるのかと言わんばかりの面子が顔を揃えるその場所で、自分は別段珍しい者として取り上げられるようなものではないだろう。と思っていた。



「なあ!それってちゃんとボール見えるのか?」



今、大きな瞳を輝かせてこちらを見つめる視線に気づく、このときまでは。





「なあ、見えるのか?」

おそらく純粋な疑問だろう。目がそれを物語っている。
そんな純粋な視線に気圧されながら、ベルガはかろうじて一つ頷いた。
途端に、向けられる視線の純度は増し、輝きもよりいっそう強いものとなった。

「すっげぇな!!なんかすっごい力でもあるのか!幽谷みたいに!」
「…いや…」

いきなり話題に上ったチームのFWに目を向けると、鉈と楽しそうに談笑しているのが見られた。
幽谷もまた、ベルガのように目元を完全に覆い隠し、端から見ると何も見えていないのではないか。と懸念されるうちの1人だろう。
だが、幽谷はさすがは元尾刈斗中生といったところだろうか。透視が出来るらしく、今も足下に転がって来たボールを見つけてグラウンドに蹴り返していた。
そんな幽谷と比べられると、ベルガは困ったように首を傾げて曖昧に答えるしか出来ない。
正直言って、自分でもどうやって見えているかは説明ができないのだ。
だからこそ、こんな風に純粋な目で見つめられるとどうしようもない。

「私には特別な何かはないが、見える事は見える。それだけだ」
「…うーん…よくわかんないな…」
「私もよくは分かってないんだ」

すまないな。と苦笑を返せば、ううんと円堂は首をひねり始める。
難しい事は何も言っていないはずだが、すっきりしない答えを返した自覚はある。
円堂は円堂なりにベルガの視覚のメカニズムを考えているのだろうか。
そうも思ったのだが、残念な事に彼の頭脳はそこまで難しい事を考えるようには設計されていなかったようだ。
突然、よし!!と言って立ち上がると、ボールを一つもってグラウンドにあるゴールへと走って行く。
何がよしなのかはさっぱり分からないが、ベルガはただただ呆然とその様子を眺めるしかできなかった。

「豪炎寺ー!!ちょっとシュートしてくれ!!」

近くでドリブル練習をしていた豪炎寺に声をかけ、手に持っていたボールを放る。
それを豪炎寺が受け取った事を確認した後、あろう事かいつもは額につけているオレンジ色のバンダナを、目元がすっぽり隠れるほどまで引き下げたではないか。
普通のシュート練習をするのかと思っていた豪炎寺と、それを少し離れた場所で見ていたベルガが思わずぎょっとする。
そんな周りの反応に構う事なく「さあ!こい!!」などとやる気十分に声をあげる円堂に今更なにを言っても関係がないだろう。
豪炎寺は諦めたように苦笑を漏らし、手加減する事なくボールをゴールへ向けて蹴る。
目元を完全に覆った円堂にそのボールの軌跡が見える訳がない。
だが、それを懸命に察知しようとしているのかしばらくじっと動かなかった円堂が、急に地を蹴り左上に手を伸ばす。
おそらく空気の流れや音で判断したのだろう。むしろそれくらいしか判断材料がみつからない。
当てずっぽうにも見えたその行動は、意外にもきちんと豪炎寺が蹴ったボールが向かう場所と合致していて、思わずおお!と声を上げる。
が、位置が分かったからと言って、どこに手を持っていけばボールをきちんと受け止められるか、という微調整は至難の業で。
案の定、というか、想定通りというか。


円堂は、綺麗に顔面でボールを受け止めた。








「…何をしてるんだ…」

豪炎寺に担がれてベンチ辺りまで戻って来た円堂を、ベルガが引き継いでとりあえずベンチに座らせる。
バンダナの下で目を白黒させ、気を失っている円堂に、ベルガはもはやため息を吐く以外になにも言葉が出ない。

「私がなんとかしよう。マネージャーにでも言えばどうにかなる」
「…すまないな」
「いや、問題ない」

ボールをぶつけた事に対する罪悪感からか、ベンチのそばで申し訳なさそうに立ち尽くしていた豪炎寺にそう告げると、
もう一度「後で様子を見に来る」と言って豪炎寺はグラウンドへと戻って行った。
その背中を見送った後、視線を回りに巡らせれば、いつもはそこにいるマネージャーの姿が見えない。
他の連中に聞くと、どうやら備品の買い出しに出ているらしい。
なんともタイミングの悪い話だ。とベルガは苦笑し、キャラバンの中から救急箱を拝借する事にした。






「…あ…?」
「やっと気づいたか」

惚けた声を上げる円堂の姿に、安心したように一息つく。
円堂は、ベルガの方を見た後ベンチに仰向けで寝転がったまま、額に乗った氷嚢に手をやる。
そして、瞬きを二、三回。

「……ぜんっぜん、分かんなかった…」
「…は?」

呆然としたように呟く円堂に、ベルガは思わず首を傾げる。

「見えなかった。なんか、こう、こっちに来るぞ!っていうのは分かったけど、上手く止められなかった」
「…当たり前だろう…」

目隠しした状態でボールを止めるなど、よほどその状態で鍛えなければ出来ない事だ。
それをにわかでやろうとするなど正気ではない。
だが、それをやってしまうのが、この円堂守という人物なのだろう。
呆れたように苦笑するベルガに、円堂はがばりと起き上がって、満面の笑みを向けた。

「だからさ!ベルガってすっげぇんだな!!」
「………は…!?」

目隠しして、幽谷みたいな力もないのに、ボールの位置が正確に分かるんだからな!
と、無邪気に笑う円堂に、ベルガは返す言葉が見つからない。
目隠しして、とはいっても、円堂とは違ってきちんと見えるのだ。
そうだとしたら、別に凄くも何ともない。

「いや、だが、私は見えるんだぞ?」
「でも目隠ししてるだろ?」
「…いや、だから。これをつけた上で私は周りが見えてるんだ」
「だからすごいんじゃないか!」
「………?」
「俺は目隠ししたら何も見えなくなった。でも、ベルガはそれつけてても見えるんだろ?だったら十分凄いって!」
「…そうなのか…?」

この目隠しをつけた上で、周りが見える事は、ベルガにとっては「通常」だ。
だが、円堂たちに言わせればそれは十分に凄い事。
本人にとっての「常識」が周りの人にとっても「常識」となりうるかと言えばそうではない。
今まで、この状態でボールがとれる。と言う事を褒められた事など、ベルガには一度としてなかった。
だからこそ、円堂の賞賛を素直に飲み込めない。

「ああ!ベルガはすっげぇんだ!」
「…はあ」
「……普通喜ぶとこだぞここ」
「いや、すまない。実感が持てないだけだ。私にとっては当たり前だからな」
「あー…でもすっげぇよ!どーやったら見えるんだ?」
「私にもそれは分からないと…」

返事の途中で、ぐい。と顔を無理矢理円堂に掴まれる。
普段は身長差があるので絶対にされない事だが、今はベルガもベンチに腰掛けていたせいで、ちょうどいい身長差になったのだろう。
無遠慮に掴まれた顔は、真っすぐに円堂の眼前に向けられる。
じっと、大きな茶の瞳がベルガを凝視して、思わずベルガの背に妙な汗が伝った。

(ち、近い…ッ!!)

円堂に邪念はない。純粋にベルガの目と目隠しについて好奇心がわいたのだろう。
キーパーグローブをはめた指がベルガの目隠しを調べるように撫でる。
時折頬をかすめるグローブの感触が、妙にこそばゆい。
これは妙なことになった。とベルガは徐々に焦り始める。
対する円堂は邪心も邪念もないおかげで、ベルガとは対照的にうーん。と何か特殊なものでもないかと目隠しをいじるのに夢中だ。
いい加減離してもらわないとこちらの身がもたない。とベルガが強行手段に出ようとしたときだった。



「練習せずに何やってんだよ、オイ」



ベリ、という擬音語が聞こえてきそうな勢いで、円堂とベルガは第三者によって引きはがされた。
見上げれば、そこには何故かむすっとした表情のネッパーの姿があった。

「ネッパー!ベルガ凄いぞ!!見えないはずなのにみえるんだぜ!」
「知ってるっつーの。つか元気じゃねーかよ」

ネッパーが呆れたようにため息をつくのを横目で見ていると、他にも何人かこちらへ寄ってくるのがみてとれた。
話を聞けば、円堂が倒れたと聞いて皆、様子を見に来たのだそうだ。

「大丈夫ですか?記憶とかなくなったりしてません?」
「あ。河高君の言葉は気にしなくていいですからね。それより、本当に大丈夫ですか?…まあ、ベルガさんが介抱してたなら問題ないとは思いますが」
「あれ?私は気にしなくていいってどういうことですか阿部島君」
「言葉通りです」

がやがやと一気に騒がしくなった円堂の周りをよそに、
ベルガは1人で先ほどの出来事を思い出してうなだれる。
反応を見るにどうやらネッパー以外、誰にも見られていないらしい。
そのネッパーが凄まじい気迫で円堂を睨みつけているのが気になるが、それは今は関係ないだろう。
今のベルガにとって重要なのは、先ほどの光景を少人数にしか見られていないという事だ。
ほっとすると共に、なぜだかは分からないが、無性に顔が熱くなった。


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円堂さんの周りに人が集まるのはその人柄と人望からだと思う。
書いた本人は凄く楽しかったです^q^


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