隠れた私を知らないで、私を探す嘆きの声 [エイリア]


また友人宅に入り浸って(以下略)
プレイ記いい加減書かないと何書くつもりだったか忘れる(笑)
いつもどおり俺ブン育成についてあれこれ話すだけだとも思いますが。

あ、空パチいつもありがとうございます^^


今回は久々にゼルデザ。ギャグです(笑)
以前同様タイトルは「light sky」様からいただきました。『身分差に悩む10題』より。






「オイ!痛い!引っ張るな!!」
「うるさいわねぇ!いいから来なさいよ!」

各自に与えられた部屋でぼうっとしていたら突然のマキュアの来訪。
何事だと聞くか聞かないかのタイミングでぐいと腕を掴まれそのまま連行。
なにも理由が分からないままずるずると引きずられ、物陰に引きずり込まれた。
文句を言ってもさっきの調子で切り捨てられ続けたせいで理由は分からずじまい。
ようやく腰を落ち着けたマキュアに対して,ゼルは噛み付かんばかりの勢いで吠えた。

「なんなんだ一体!!」
「いいから大人しくしてなさいよ。ちょっとおもしろい事思いついたの」

意地悪くクスクス笑うマキュアを呆然と見つめる。
どうでもいいが自分は部屋でぼうっとする暇はあってもマキュアの思いつきにつき合う暇はない。
ゼルが腕を押さえつけるマキュアの手を払おうとしたその時だった。



「ゼル」



自分が先ほどまでいた部屋の方面から聞こえる、聞き慣れた声。
すぐさまその声の主の姿がゼルの脳裏に映し出される。
そのまま、忠犬のごとき機敏さでその人物の前に飛び出そうとしたのだが、
マキュアに捕獲されたままだったため思うように行かず盛大にこける。

「駄目よゼル!!アンタが出てったらマキュアが考えたおもしろい事が失敗するでしょ!」
「どうでもいいんだよんなことは!デザーム様が俺を呼んでいらっしゃるんだ!出て行かなくてどうする!!」
「だから!!それでマキュア考えたの!」

全力でデザームの元へ行こうとするゼルを引き止めるマキュアの腕力の凄まじさ。
ついに根負けしたゼルが何の話だ。と言わんばかりの目でマキュアを見据える。
そんな視線に臆する事なく、マキュアはにやりと楽しそうに笑った。
まるで悪戯を思いついた子供の顔だ。

「いい?デザーム様が何か相談事をするっていったら参謀のアンタのところに行くでしょ?しかもあんたデザーム様大好きだから何があってもすぐに飛んで行く。
 だから、マキュア考えたの。もしゼルがどこにもいなかったらデザーム様どうするのかなーって」
「は!?貴様マキュアの分際でデザーム様に謀だと!?ふざけるな!!」
「なによう!!ゼルも気になるんじゃないの!?ゼルがいないときデザーム様がどうするのか!!」


…俺がいないときのデザーム様?


ふっと、マキュアに言われた事を脳内で考えてみる。
もし自分がいつも通りすぐさまデザーム様の元へ行かなかったら?
誰か別の奴、例えばメトロンやクリプトの元へいったらどうする?
それは自分がただ単に「参謀」であるからデザーム様はまず自分のところに来ていた。ということにならないだろうか?
順序という奴だ。その程度にしか思われてなかったとしたら?

「…それは…」
「でしょ!?そうと決まれば尾行よ尾行!マキュア一度してみたかったんだー!」
「………」

一人テンションを上げて行くマキュアを追いかけて、ゼルも影に隠れる。
覗き見ればゼルの部屋の前で立ち尽くしているデザームの姿があった。
ノックをしたり名前を呼んだりとあれこれしているが、部屋の主はデザームの背後にいるのだ。出てくる訳がない。
…その隠れている本人は、デザームの現物を目の前にして何やら葛藤に苛まれてはいるが。

「……ゼル、いないのか?」

僅かに首を傾げてぽつりと呟くデザームに、隠れているゼルが落ち着かない様子で身もだえる。
それをマキュアが押さえつけていると、デザームはゼルの部屋に背を向けて再び歩き出した。


「どこいくんだろ。デザーム様」
「あぁああああ……すぐにご要望にお応えできないこのゼルをお許しください…!!」
「ゼルうるさい」

罪悪感に苛まれ続けるゼルを引きずってデザームの後を追う。
長い通路を真っすぐと進む最中、時たまゼルを呼ぶデザームの声にゼルはいちいち反応する。
いい加減ゼルを押さえ込む事に飽きて来たマキュアがふてくされた顔で前方を見ると、デザームの他にもう一人、通路を歩いてくる人物を見つけた。

「あ。メトロン」
「何ィ!?」

ゼルが勢いよく通路を見れば、そこには見慣れた紫色の髪。
メトロンはデザームの姿を確認すると、挨拶代わりに一礼をした。
思いもよらぬメトロンとの接触にゼルが今まで以上に興奮気味に飛び出そうとする。
マキュアが全力で押さえ込むが、もはや物陰から随分とはみだしてしまっている。
デザームの背後に彼らがいる事がせめてもの救いだろう。

「どうされました?」
「いや、ゼルを探している」
「ゼルですか?部屋に戻ると言っていましたが」
「行ったがどうやらいないようだ。だから探している」
「そうで……」

メトロンの言葉が不自然なところで切れる。
何かあったのかとマキュアが視線を上げれば、見事にかち合う2人の視線。
バレた。完全にバレた。
メトロンはゼルを押さえ込もうと彼の腰にしがみつくマキュアを何か異様な物を見る目で見つめる。

「…あの…デザーム様…」
「?」

メトロンが親切心でデザームの後ろで起こっている異常事態を説明しようと口を開く。
が、デザームの肩越しに見えるマキュアの表情を見て再び言葉を切った。
後日「あれは阿修羅だった。人を殺す人の顔だった」と語られるその気迫に、
メトロンは一気に冷や汗を流し、何故か深々と頭を下げた。


「……ご武運を…」
「…?……うむ」







メトロンと遭遇した後も、散々歩き回りゼルを探すデザーム。
よっぽど重要な用事があるのだろうか。
そう思えば思うほど、ゼルは今すぐ飛び出したい衝動に駆られるのだが、
横にいるマキュアがそれを許さない。
そんなことを繰り返しながら、ついに数時間が経過していた。


「あ。デザーム様座っちゃった。やっぱり疲れたのかなぁ」
「当たり前だ!!あぁあああ…申し訳ありませんデザーム様…!!」


ついに探し疲れたのか腰掛けてしまったデザームを、2人が少し離れた場所から見やる。
腕組みをした状態で、何をするでもなくぼーっと前方を見つめている。
いい加減諦めてしまったのだろうか。つまらない。とマキュアがため息をつく。
…が、その状態のまま、再び数時間が経過したあたりから一つの考えが浮かんだ。


「……待ってる、のかな?」


何時間も一つの場所に留まって、何もしない等それくらいしか思い浮かばない。
おそらく歩き回って探すのは効率が悪いと判断したのだろう。
デザームは決して頭が悪い訳ではないのだ。
そうなれば、探しまわるよりも一所で待っていた方が効率がいい。

「で、デザーム様…!!それほどまでして…!!」
「…あれ?でも寝てない?」
「え」

よくよく見れば、腕を組んだままこくりこくりと舟を漕いでいる。
さすがにただただ座って待つだけ、というのは正直暇な作業だ。
無理もないと言えば無理もない。
そんなデザームの姿に、ゼルの我慢の限界がついにやってきた。
飛び出すゼルをやはりマキュアが抑えようとするが、今回はそのマキュアの動きよりもゼルの動きの方が速かった。
尾行を続けて早半日。
ゼルはやっとの事でマキュアのディフェンスを突破した。


「デザーム様!!!」


ゼルの叫び声に、デザームがはっと顔を上げる。完全に眠りに落ちかけていたらしい。
僅かに眠そうな表情で、目の前で焦ったような表情をするゼルを見つめた。

「デザーム様!このようなところで寝ては風邪を引かれてしまいます!!」
「ゼルか…お前を捜していたのだ」

はい!知っています!と、言える訳もなく、
ゼルは半端ではない罪悪感と共に、震える声で「なんでしょう?」と問うのが精一杯だった。

「それがだな…」
「はい!」
「……」
「……」
「………」
「………」
「…………」
「…………デザーム様?」

無言になってしまったデザームを不安に思い、ゼルはデザームの顔を覗き込む。


「………忘れた」
「えッ…!?」



そんなやりとりを見て、マキュアが物陰で大笑いしていた事を、2人は知らない。




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