なくこはいないか [エイリア]


ネパリオ。過去捏造ですんでご注意を。
…注意書きは、そろそろいいかな。とか…(笑)








「リオーネの馬鹿ぁっ!!」

弾かれたように泣き出したアイシーに、こちらまで泣きそうになった。
最初は普通に遊んでいただけなのに。
気づけば喧嘩になっていて、今、この結果。
自分は絶対に悪くないのに。喧嘩というのは先に泣いてしまった方が勝ちなのだ。
だって、皆、泣いた方が可哀想って、思うから。
アイシーの泣き声に、彼女の兄や他の皆もよってくる。
大丈夫?なんて訪ねられるのはアイシーばかりで。
なによ。私だって、泣きたいのに。なんて思う言葉は全部飲み込んで。
リオーネはその場から脱兎のごとく逃げ出した。




「…私は…悪くないもの……」

ほとんど人が寄り付かないような暗くて狭いところで、一人膝を抱えて泣きじゃくる。
拭っても拭っても涙は止まってくれなくて。
ああ。きっと今の私は酷い顔をしてる。なんて頭の片隅で考える。
これが、現実逃避という奴だろうか。
逃げ出したリオーネを追って来た者は誰もいない。
望んで一人になったはずなのに、なんだか無性に寂しくなった。

「……何よ……なによぉ…」

上げそうになる泣き声を懸命に抑える。
誰も聞いてくれないなら、そんなに声を上げて泣き出す必要なんてどこにもない。
泣く意味も、どこにもないのだ。
「泣く」ってことは、所詮その程度のもの。



「だっせぇの」




一人で散々声を押し殺して泣いているときだった。
誰も来ないはずのところに,自分じゃない誰かの声が響いた。
何事かと、リオーネは涙を拭う手を止めてそちらを見やる。
その間だけは、なんでか涙が止まっていた。
顔を上げて,視線を向けた先にはあんまり見た事がない男の子が立っていた。
ただでさえあまり光の入らない暗い場所なのに、目元ギリギリに巻いたバンダナが、彼の顔にさらに影を落とす。
その中に虚ろに浮かぶ目にも、光はなかった。

「だっせぇ」
「……な、何よ…」

鼻で笑うような物言いに、思わずむっとして食いつく。
やっぱり、涙は止まっていた。

「お前、あんとき泣いてなかったから少しは強いかと思った」
「…強くなんか…ないわよ…」
「だな」

ケラケラという笑い声に反比例して、目は死んだまま。
だが、不思議とそれが怖いとは思わず、リオーネはただただ目の前の人物を睨んだ。
リオーネから敵意むき出しの視線を浴びながらも、男の子は平気な顔をして、
近くにあった段ボールの上に腰掛けた。

「泣いて、誰かが助けてくれるなんて思うなよ」

そういう考えは、だいっきらいだ。
そう呟く彼は、本当に忌々しげに言葉を吐き捨てた。
別に、そう言う事を考えていた訳ではない。
むしろ彼の言い分に賛同する思いもあったリオーネは一つだけ、頷いた。

「泣いたら、皆がその子を心配するわ。そういうのは、嫌い」
「俺も嫌い。だけど、心配してくれる奴がいるってのは…」
「…なによ」
「………お前にゃ、かんけーない」

にぃ。と笑うと、段ボールから飛び降りる。
そのままずいと顔を近づけられて、何がなんだか分からずにドキドキした。
だって、こんなに男の子が近寄って来た事なんて、ない。

「お前、なんか悪い事したのかよ」
「してない」
「じゃあ、なんで逃げた」

悪くないのに逃げ出した。
逃げる必要もないのに、逃げ出した。
そういうのは、嫌いだ。と、彼は吐き捨てるように呟いた。

「……だって」
「ウジウジしててなんかムカツク」
「何よ!!関係ないでしょ!」

食って掛かると、彼は何が楽しいのかニヤリと笑う。
そして、軽くデコピンをされた。痛くは、なかった。

「そんな風に食って掛かれよ。ばーか」
「………」
「悪くないならここで泣くより自分が正しい事証明してこい」

なんにもしねーやつも、嫌いだ。
呟く彼の声は、今までで一番優しかったような気がした。
リオーネはデコピンされた場所をかばいながら、目の前の彼を見る。
相変わらず暗い瞳が、こちらを見ているだけだったが、
なぜだかそれが、無性に優しいように感じた。

「……励ましてるの?」
「違ぇよ」
「…励ましてるんだ」
「違う」

感じた事を率直に言えば、目をそらされる。
ああ。照れているんだと感じると思わず笑みがこぼれた。
彼の動揺する様が楽しくて、クスクスと笑みを浮かべる。
なんだよ畜生。なんて毒づかれながらも、悪い気はしなかった。
すっかり涙の引いたリオーネに反論する気も失せたのだろう。



「俺、今のお前の顔は、好きだ」



彼は盛大にため息を吐き出し、困ったように笑った。








皆の元へ帰ると、すぐさまアイシーが頭を下げて謝って来た。
皆も理解してくれたらしい。
別に、責め立てるつもりもなかったから、そのまますぐに和解をして。
ふと、振り返った時、
ここまで一緒に戻って来たはずの彼の姿は、どこにもなかった。


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