シャボン玉とんだ [その他]


綱塔。
この2人は一緒にいるだけでもおいしいです。
最近は綱海さんが立向居に構いっぱなしなのであまり絡みがないのがな…。







「なあ。これどうやるんだ」
「あたしが知る訳ないだろ」
「威張って言えることじゃねーだろー…」

秋に「洗濯お願いできるかな?」なんて頼まれて、2つ返事で了承したものの、
いざ、現物を目の前にして綱海と塔子は困り果てていた。
洗濯と言えば洗濯機だろう。
だが、目の前にあるのはたらいと洗濯板。
文明が進んだ現代っ子である2人にとって、それは未知なる物だった。

「とりあえず、これに水入れて、多分これで洗うんだろ」

綱海がひょいと洗濯板を持ち上げ、しげしげと眺める。

「おろし金みたいだな」
「なんだそれ」
「大根おろし作るやつだよ。なんだ。知らねーのか?」
「う、うるさいなぁ!!あたしはそんなに料理とかしないんだよ!!」

ケラケラと楽しそうに笑う綱海に、どうにも勝てずに塔子はそれきり口を噤んだ。
要領としてはおそらく綱海の言った方法で合っているのだろう。
とりあえず、水を入れよう。とたらいを担いだ綱海と共に水道へ向かう。
沖縄の太陽は眩しくて暖か。そのおかげでたらいへ注がれる水は普段以上に涼やかに見えた。
たらい一杯に水を張り、その中へ洗剤を投下する。
全て綱海の独断と偏見で行っているため、塔子が口を挟む隙を与えない。

「洗剤ってそうやって使うのか?」
「いや、知らねーけど洗濯機は水の中に入れるだろ」
「まあ、そうだけどさ」
「ま、なるようになるだろ!!そりゃっ!」

完全に事を楽観視している綱海が、また独断と偏見で豪快に洗濯物をたらいの中に放る。
あぁ!!と塔子が声を上げるのもどこ吹く風で、洗濯物は完全に水の中へと沈んで行った。

「お前…これで間違ってたらどうするんだよ…」
「まあ、そんときゃ全力で土下座するなりなんなり、だな」

うだうだ言うものの、もうここまでくれば間違っていたとしても後戻りは出来ない。
塔子はついに綱海を責める事を諦め、自分もたらいへ向き直った。
ここまでは出来たが、問題は、この板をどう使うかだ。

「で、これどうするんだろ…」
「やっぱ、大根おろすみたいにこするんじゃねーの?」
「大根みたいになるなら洗濯物がぼろぼろになるんじゃないか?」
「…でも金属じゃねーし…大丈夫じゃね?」
「お前のその自信はどこからくるんだよ!」

2人でたらいを囲み、洗濯板を眺める。
途方に暮れ始めた時、いきなり綱海ががばりと立ち上がった。
何かをひらめいたような、そんな顔を見て塔子は訳が分からず洗濯板を持ったまま固まった。

「めんどくせぇ!そういうの使わねぇ別のやり方思い出した!」
「へ?」

唐突に何を言いだすのだろうと呆然としていると、
綱海が何のためらいもなく靴を脱ぎ、水道で軽く洗うと何を思ったのかたらいの中に飛び込んだ。
思わず塔子はぎょっとする。

「な…なな何やってんだよお前!!」
「なんか近所のばーちゃんがこうやって洗ってんの見た事あるんだよ!!」
「ほ、ほんとかよ!?」

ばしゃばしゃとリズミカルな音を立て、たらいの中の洗濯物を遠慮なく踏んで行く綱海。
いまいち信じられず、塔子はしばらくそれを見ているだけだったが、
だんだんと綱海の足の動きによって水が泡立って行くのが見えた。
きっと、さっき入れた洗剤が泡立って来ているのだろう。

「お!なんかいい感じじゃね?」
「…かも、しんない…」
「それに水が冷たくて気持ちいいぞー!お前もやれよ!!」

綱海の言葉に、塔子がたらいに向けていた視線を上げると、
そこには実に楽しそうに笑う綱海の姿。
確かに水は気持ち良さそうで。なによりこんなこと、やったことがない。
好奇心が強いという自覚も十分だったため、塔子も靴を脱ぎ、足を洗った。

「よしっ!!」
「うわっ!?」

グイ。とひっぱり上げられ、たらいの中に足を突っ込む。
ひやりとした感覚が、沖縄の気候の中ではなんだか心地よかった。
ばしゃばしゃと、リズミカルな音が二つに増える。

「ほんとだ!楽しいなこれ!!」
「だろ?」

2人ではしゃいで、狭いたらいの中で足踏みを繰り返す。
ふと、自分より背の高い綱海の方を見やれば、その顔は案外近くにあって。
視線が合うと、綱海は楽しそうにニィと笑った。
その笑顔になんだか無性に楽しくなって来て、塔子も思わず、悪戯っぽい笑みを浮かべた。





それから、すっかり夢中になって、気づけば太陽は僅かに傾き始めていた。
慌てて洗濯物を干したものの、これは今日中に乾くとは思えなかった。

「あー…怒られるかなぁ」
「ま、こういう事もあるって!」

ひらひらと風にはためく洗濯物を見ながら、2人並んで異なった表情を浮かべる。

「楽しかったんだから、いいじゃねぇか!」

カラカラと楽しそうに笑う綱海に、どうも怒鳴る気になれない。
塔子は一つため息をはき、思わず苦笑する。

「ま、いっか」

そうだそうだ!と快活に笑う綱海に、つられて塔子も笑みをこぼした。




*************
私も洗濯板での洗濯の仕方そんなに知らないのでいろいろと間違ってたらすみません。
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