セレスト 9 [エイリア]


ゼルデザ連載ラストぉおおおお!!
あー…長かった…まさかここまで長くなるとは…。
ここに来てちょっとした補足。
タイトルのセレストは青色の一種で「神います至高の天空」という意味があるんだとか。


そんなわけでやっとラストです(笑)








「と、言う訳で!今日から新しく仲間になったゼルだ!」
「…………」

キャプテンの話は上の空で聞いていた。
スタメンの連中に紹介された後、じゃあ次は他の連中にも紹介しないと!
などと意気込む円堂に引きずられるように雷門のグラウンドを連れ回される。
集合をかければ良いのに。と思うのだが、どうやら他のスカウトされてきた連中も
同じ洗礼を受けたらしい。
「手がもげるかと思ったぜ。お前も頑張れ」などと言ったのは、金髪で褐色肌の男。羽縞と言ったか。
新しい仲間が出来るのが嬉しいらしく、先ほどから円堂は楽しそうに笑っている。
なるほど。これは人のいい馬鹿だ。などと思ったが、口には出さない。
散々連れ回されて、最終的にゴール前へと引きずられて行った。
どうやら、シュート練習をしているらしい。


「デザーム!!」


呼ばれた名前は、自分のものではないのにドキリとする。
それは本人も同じだったらしく、デザームは手にしていたボールを思わず落としていた。
トントンと転がるボールを目で追い、おそるおそる視線を上げる。
そこには、服装は違えども最後にであったときと何も変わっていない彼が、いた。

「ゼル、連れて来たぞ!!」

にこやかに笑い、ゼルの背中を豪快に叩く円堂に、怒る気も湧かない。
それほど久々の再会は両者にとって特別なものだったらしい。
目の前の、黒の中に浮かぶ赤い瞳を見つめながら、ゼルは何も言わない。
それはデザームも同じで、無言のまま、ただただ視線を真っすぐにゼルへと向けていた。
かつて、互いに背中へ向けていたそれを、正面から一心に。

「…ん?どした?」

何も言わず、微動だにしない2人を不審に思った円堂が2人の顔を交互に見つめる。
天然とはこういう時便利であり、厄介だ。
変に鋭ければ余計な茶々を入れられる可能性がある。それはそれで不快だ。
だが、鈍感すぎると訳が分からないので今のようにお互いの顔の前で手を振り、
大丈夫かとひっきりなしに聞いてくる。…これはこれで邪魔だ。
あー!もー!!どーしたんだよ!!なんて喚き始めた円堂に、いい加減イライラしてきたゼルが、目の前の頭をしばいてやろうかと思い始めたときだった。

「円堂君。今日は豪炎寺君のシュート練習につき合うんでしょう?」

べり。という効果音が正しいかもしれない。
どこからともなく現れた秋が、2人の間に割って入っていた円堂をその場から引きはがした。
秋の言葉にハッとした円堂が、そうだったな!と笑顔を取り戻し、嵐のように去って行く。
そんな円堂を見送り、秋は2人に向けて含みを持った笑みを向ける。
こういうときに一番良いのは、鋭いけれども空気を読んでくれる奴だと思う。
ほっとして、何か礼の一つでも言うべきかと思い、ゼルが秋の方を向く。
それとほぼ同時に、秋はデザームに向かって微笑み、一つの起爆剤を投下した。




「デザームさんも、あんなに『会いたい』って言ってたんですから。
 せっかくの再会なんだし、2人でゆっくり話してください」




なんの邪念も含まない、非常に清々しい笑顔を浮かべ去って行く秋を見送る。
後に春奈から「木野先輩は、鋭いんですけどどこか抜けてるんです!」という言葉を聞く事になるのだが、
今はそんなことなど関係ない。
ただただ、秋の投下していったものに対して、2人がそれぞれ自分なりの思案の時間に突入していた。
一番訳が分からないのはゼルの方だ。
円堂から「自分を必要としている」という旨は聞いた。
だが、デザームが自分に「会いたい」と人にこぼしていた等聞いてない。
その現実味のない事実は、徐々にゼルの中で理解され、実感される。
惚けたような顔で、デザームの方を見れば、僅かに眉根に皺を寄せているが、いつも通り。
だが、首元に巻かれた髪に顔を半分ほど埋まらせている状態なので、詳しい表情は読み取れない。
しかし、他の露出している部分は随分と顕著で。
耳は、これでもかというほど真っ赤に染まっていた。
眉根に皺を寄せているのは、居心地の悪さからだろうか。
ぼうっと、向けられている視線に気づいたのか、デザームがちらりとゼルを見やる。
気まずそうに、「なんだ」と髪の毛越しにくぐもった声が響いた。
そこで、やっと理解する。


照れている。あの、デザーム様が。


その事実は自分に随分と彼を身近に感じさせた。
今までのデザームの印象は、崇高で、強く、自分が絶対に手の届かない存在。
そんな彼が、自分がこぼした言葉を他人に暴露されて照れている。
今、自分が彼にそんな風に思われていたのか、と理解し、照れているように。
同じなのだ。
彼も、自分と同じ、ただの人だ。
そう理解した途端、イプシロンとして所属していたときは抑え続けていたものが一気にわき上がる。

エイリア学園は滅んだ。
自分は、今、彼の隣にいる。
序列もなく、強さによる格付けもない、
ただただサッカーが好きな者が平等に存在するこの雷門で。



言っても、いいだろうか。


やっと対等な立場になれた今なら。

言っても、
触れても、
許されるだろうか?




「デザーム様」

なおも居心地悪そうに遠くを見る隣の人物に、声をかける。
呼称に様がつくのは、もう癖と言っても仕方ないので、許してほしい。
そっと手を取る。
あまりそういった事はされた事がないのだろう。僅かに驚いたように跳ねるそれを、静かに握る。

「好きです。前から、ずっと」

デザームから視線をそらす事なく、言う。不思議とためらいはなかった。
ゼルから向けられる視線に、デザームの視線が絡む事はなかった。
ただただ、無言のままで遠くを見つめ続ける赤の瞳。
だが、それでもゼルは歓喜に満ちあふれた顔で微笑む。
返事がなくても、よかった。


僅かに握り返された掌が、なにより雄弁な答えになっている気がしたから。









神は、いるのかもしれない。

手が届かなかった空に、今なら手が届く気がした。



end


*********************
これまでおつき合いくださった方、ありがとうございました!!


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