「嗚呼、青春だなぁ」と呟くのであった。 [その他]


久々に小説。仲良し尾刈斗。

私は元々鉈先輩の供給があまりにも満たされなかったので鉈幽に手を出したのが
鉈幽好きになったきっかけなんですが(爆)
ぶっちゃけ最初の方は幽鉈とか考えてたんでこの2人はどっちでもありなんです。
…リバ苦手な私が好きなジャンル全てに置いて唯一許せるリバカプかもしれない鉈幽鉈…。

まあ、そんな話は一切関係なく小説は鉈先輩メインで尾刈斗の皆。
友人との会話から辛抱ならずに書いてみましたが鉈先輩をそこまで可愛くできなかった。
それでもいい方は続きからどうぞ!








「鉈先輩」
「…………」
「…鉈先輩?」
「……………」
「なーたーせーんーぱーい」
「………………」
「………」

「鉈先輩ッッッ!!」
「ッ!!?」


部室の中に、幽谷の大声が響き渡る。
全員が何事かとそちらの方を向くと、よほど驚いたのか椅子からずり落ちている鉈がいた。

「…どうしたんですか?ぼーっとして」
「あ、…いや」

なんでもない。と椅子を元の位置に戻しながらはぐらかす。
普段から冷静な鉈がこんな事になるのだ。何ともない訳がない。
全員から疑念の目を向けられ、鉈が内心冷や汗をかき始めた時、
部室の中に楽しそうな声が響いた。

「僕知ってるよー!」
「黒上先輩」

嬉々として手を挙げる黒上に全員の視線が移る。
目元は相変わらず目深に被ったフードのせいで見えないが、口元は楽しそうに歪んでいる。
そんな状況下に一人慌てているのは話の中心である鉈だ。

「く、黒上!」
「なんだなんだ!なんかあったのか!」
「僕見ちゃったんですよ!」



「鉈が体育館裏で女の子から手紙もらってるのを!!」



鉈がひとり動揺し、いろんなものにぶつかる音だけが響く。
しばらくの沈黙の後、爆発的に部室の中がやかましくなった。
全員が全員、一気に鉈に詰め寄ったのだ。

「えぇええええ!!マジか!鉈!!」
「どんな子だった?どんな子だった?」
「………いいなぁ」
「なんて書いてあった?つかつき合うの?つき合うの?」
「何だよ言ってくれよー!」
「なんで言う必要があるんですか…」
「ちょっ……待て、落ち着けお前ら…!!」

あっという間に鉈を中心として無邪気な尋問の輪が出来上がる。
中にはそんな連中を止めようと奮闘してくれている者もいるが、無駄に終わっていた。
しばらくの間は嵐のように騒がしかった部室だが、
しびれを切らせた幽谷が「いい加減にしてください!!」と渾身の力で叫ぶ事により、なんとか収束を迎えた。
その後は、緩やかな尋問が続く。

「………で、手紙は読んだんですか?」
「ゆ、幽谷お前まで!?」
「まあ、そりゃあ気にならない訳ないでしょー」

事態を収束させた幽谷にまで問われる。
落ち着いて常識的に聞かれるため、無下に切り捨てる事も出来ず鉈はほとほと困り果てる。
観念したようにガサガサと自分の鞄を漁り、一枚の可愛らしい封書を取り出すと、
全員の視線が一気にそれに向けられる。その光景は一種の恐ろしささえ感じさせた。

「…こ、これなんだが…」
「中身どんなんだったの?」

表に『鉈十三様へ』と丁寧な字で書かれた封筒を三途が覗き込む。
素直に聞いたにすぎなかったのだが、聞かれた方の鉈は硬直する。
そのまましばらく「ええと」だの「あー…」だの言葉になっていない言葉を漏らすと、
観念したのか、俯いたまま三途にその手紙を手渡した。
自分で内容を言うのが、どうも照れくさいらしい。
思いもよらず話の中心にあった手紙を入手した三途は手にした後しばらく固まっていたが、
「失礼します」と一言断り、中に入れられている手紙を取り出した。

内容は、まさしくラブレター。
前々から好きだったと。よければつき合ってほしいと切々に綴られた思いを、
三途はこともあろうに声に出して読み上げる。
その間、鉈は耳を真っ赤にさせ、落ち着かないのか視線をあちこちに彷徨わせる。

「やったじゃねーか鉈ー!!」
「………いいなぁ」
「で、どうするんですか?」

三途が読み終わるか読み終わらないかのうちに、月村や幽谷が詰め寄る。
月村はともかくとして、まさか幽谷がここまで興味津々になるとは思わず、
鉈はせわしなく手にはめていたキーパーグローブを弄ぶ。

「……どう……すればいい?」
「へ?」

仮面越しのくぐもった低い声が、助けを求めて来た。
「どうすればいい」と聞かれても、ラブレターだとか恋路の事は当人の問題。
周りがとやかく言う筋合いはないように感じるのだが…
仮面越しに感じる鉈の切実そうな視線に無下に突き放す事が出来ない。

「ど、どうと言われましても…」
「んなもん、好きなら好きでつき合っちまえばいーんだよ。女はいいぞー」
「月村先輩は黙っててください」

不躾な事を言い始める月村を武羅度が頭をひっぱたき黙らせる。
「つき合う」という単語に、鉈はますます耳を赤く染め、挙動不振さに拍車をかけ始めた。
正直、ここまで動揺する鉈を見た事がない。

「…だ、大丈夫ですか…?鉈先輩…」
「…だ、大丈夫……じゃないかもしれん…」

どうしようどうしようとふらふらし始める鉈を幽谷が心配げに見る。
ラブレターよりも動揺している鉈の方が珍しい気がする。
他の面々は段々と困惑している鉈の方に興味を引かれ始めていた。

「鉈って女の子苦手だったの?」

はい。と元通りに封筒に手紙を戻し、三途が手紙を返しながら鉈に問う。
その質問に、鉈はすぐさま「苦手じゃない」と返す。
ならば、なぜそこまで動揺しているのか。
首を傾げる三途に、鉈は誰もが納得する答えを叫んだ。


「こっ、こういうことに、な、慣れてないだけだ!!」


どもりながらの必死の叫びに、誰もが「ああ」と納得する。
確かに今まで鉈に女がらみの話が持ち上がった事など一度もない。
きっと初めての経験なのだろう。
だが、初めての経験だとしても、果たしてここまで動揺するものなのか。
仮面のせいで顔は全く見えないが、隠しきれていない耳は心配になるほど真っ赤だ。
ラブレターを握りしめ、おそらく顔もこれでもかと紅潮させているであろう鉈を、皆は物珍しげな目で見る。
今の鉈は普段の冷静さからは遥かにかけ離れていた。

「なあ。なんか面白いから、しばらくほっとこうぜ」

などと言い出したのは月村だったか、誰だったか。
しかしその言葉に誰も反論しない分、きっと皆もどこかしらでそう思っていたのだろう。



結果、皆から的確なアドバイスを受ける事もできなかった鉈は、
1週間ほどキーパーとして使い物にならなかったというが、それはまた別の話である。





***************
黒上とかの性格や口調は完全に捏造です。イメージと違っていたら申し訳ありません。

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