君を愛するために生まれた [土受け]


凄く短いです。
そして土門一言も喋らない(爆)


それでもいい方は続きから!






今日俺の命日だよ。



にこりと笑いながら呟いた言葉は表情にそぐわないものだった。
カレンダーを見てみれば、今日は以前、土門と秋が一之瀬の死亡を告げられた日付と同じだった。
今目の前で生きている人物に命日だと言われる事に違和感を覚えない訳ではない。
だって、現に一之瀬は呼吸もしているし足もある。
土門は複雑な顔をして一之瀬を見つめた。
それでもやっぱり一之瀬は言葉に似合わず清々しい笑顔を浮かべたまま言葉を続ける。



そして、俺が生まれた日なんだ。




自分を死んだ事にしてくれと頼み、実際皆の中で自分が死んだ日。
一之瀬はベッドの中で一人天井を見つめていた。
少しの罪悪感はあったものの、後悔は微塵もしていなかった。
サッカーをしていた自分は死んだ。
これからはサッカーのできない一之瀬一哉が生き続けるだけ。
そう考えて悔しくない訳ではなかったが、仕方ないことだと無理矢理片付けようとした。

夜になっても、一之瀬は天井を見つめていた。
サッカーが出来ない事は悔しい。
でも、それ以上に悔しい事がある。
それは、もう二度と、土門や秋の前に姿を現せない事。
彼らの中では自分は死んだ事になっていて、そして、サッカーのできない自分を見てほしくなくて。
そう思って選んだ苦渋の策だったのにそれが一之瀬を苦しめた。
会いたかった。
誰にと聞かれれば、迷わず皆に。と答えるだろうが、それ以上に土門に会いたかった。
言いたい事があったのだ。
だけどそれを言う事で今の関係が崩れる事が怖くて言えなかった事が、あだになった。
まさか、こんなことになるなんて微塵も考えなかったから。
後悔してももう会えないのだから、それを伝える手段がどこにもない。
だけど、それは自分の胸の内に押しとどめておけるほど小さいものでもなくて。
一之瀬は自然と泣いていた。そして一言呟いた。



会いたい。と、一言だけ。






「俺、必死でリハビリしてサッカーできるようになったんだ」

サッカーが出来るようになれば、彼らには会わないという自分で課せた制限を取っ払える。
そうしたらまた、土門に会える。
土門にあったら、そしたら。


「なあ。土門」



「俺、お前に好きだって言うために、生まれ変わったんだよ」



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