名を呼ぶ声が合図 [鬼受け]


カッコいい鬼道さんが書きたいです…(爆)
ウチの鬼道さん本当に女々しいなぁ…と思う今日この頃。

続きから源鬼。甘いです。






たまに、本当にごくまれにだが、鬼道がやたらと甘えてくるときがある。
と、言ってもそこら辺の女性が彼氏に甘えるのとは訳が違う。
多分、世間一般では「甘える」の部類に入らないほどの甘えだ。
最初は俺だって気がつかなかったのだから。


「源田」

練習が始まる前、不意に名前を呼ばれて、何だろうかと振り向き、言葉を待つ。
だが、鬼道はこちらを見て、視線を外して。の繰り返しをした後
決まったようになんでもない。と返してくる。
それが一日のうちに数回。今日はこれで5回目。
何か言いにくい事でもあるのだろうかと少し不安になったりもした。

「…源田」

一日分の練習が終わり、皆がわいわいと部室に戻って行く中、
再び鬼道に声をかけられる。
今度もまた、「何でもない」だろうか。

「何かあったのか?」
「………いや」

やはり、視線を彷徨わせる。
そろそろいろいろじれったい。

「きど…」
「鬼道さーん!!」

声をかけようとしたところに、タイミング悪く佐久間の声が被る。
鬼道ははっとしたように佐久間の方へ視線を向け、
すまないと一言断った後にマントを翻した。
ひとりフィールド内に取り残される形となった源田は、
呆然と鬼道の後ろ姿を見送るしかなかった。
その後は、部室に戻り着替えをすませて、
真剣に佐久間と話し込んでいる鬼道を横目に見る。
どうやらフォーメーションに関して考えを巡らせているようだ。
だとしたら自分の出る幕はないだろう。と考え、先に荷物を持って部室を後にする。
そのまま帰る気はない。校門の前で鬼道を待つつもりだった。





空が暗くなって来た頃、鬼道はようやく姿を現した。
校門前にいた源田を見つけた鬼道は、一瞬驚いたように足を止めたが、
すぐさま微笑みながら歩み寄って来た。
心なしか表情が嬉しそうに見えるのが嬉しい。

「すまない。まさか待っているとは思わなかった」
「気にするな。好きで待ってただけだ」

どちらともなく歩き出す。
会話はどちらかと言えば源田の方から始まり、
ぽつぽつと、話題が思いつく度に声を発していた。
そんな、会話の切れ目の時、他に何かなかったかと源田が思案しているときだった。

「源田」

ああ、まただ。

「本当に、今日はどうしたんだ鬼道」

言いたい事があるなら言ってくれ。とストレートに問えば、やはり視線が宙をさまよう。
何を言い淀んでいるのだろう。
鬼道は、また小さく「げんだ」と呟いた。

それから、会話は続かず、沈黙が流れる。
地面を靴底がこする音がいやに大きく聞こえた。
さて、どうしたものかと源田が困り果てて来た最中、くい。と袖を引かれる感覚。
見れば、鬼道が僅かに源田の制服の袖を握っているのが見て取れた。
そして、先ほどから何回も聞いている、彼の自分の名を呼ぶ声。

そこで、やっと理解する。
その言葉の先に、続きはないのだと。

恥ずかしくなったのか、そっと袖を握る手が外される。
それが逃げ切る前に、無理矢理つなぎ止めれば、鬼道は驚いたようにびくついた。

「…言えば良いのに」

苦笑しながら言えば、うるさいと怒られた。
おそらく、言えないのだろう。鬼道は案外プライドが高いから。
自分から滅多に「好き」とさえ言ってくれない奴だ。
甘えるなんて高等技術、到底出来るはずがない。

「甘えたかっただけだったんだな」
「そ、そんなことは!!」
「照れるなよ」
「照れてない!」

だんだんとムキになってくる鬼道の手を、そっと繋ぐ。
すると、鬼道は急に押し黙る。
どうやらこれだけでも満足したらしい。
口元が少し緩んでいるのを見て、源田は思わずわかりやすいなぁと呟いた。
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