無題 [鬼受け]

タイトルを付けるセンスがほしい!なので無題に逃げます。
続きから源鬼です。今回ほのぼの。
鬼道さんにツンケンした部分がないので多分地区予選決勝後くらいかなー。
といいつつ時間軸とか何も考えず書きました!!




珍しく教室にいないものだから、案外必死になって探してみた。
せめてもの救いは、今が昼休みだったこと。時間に余裕を持って捜索できる。


「鬼道」

無駄に広い帝国の校舎を走り回って、ようやく屋上でその姿を捉えた。
フェンスの向こう。遠くを見つめるようにぼうっとしているものだから、何故だか焦る。
フェンス。屋上。遠い瞳。…なんて自殺する一歩手前によくありそうなシチュエーション。
…まあ、自殺など鬼道に限ってないだろう。そんなこと。

「鬼道」

こちらに気づいた様子を見せない鬼道にもう一度、
近寄って声をかければ、はっとしたようにこちらを向く。
やっぱり気づいてなかったのか。と苦笑すれば、すまない。と真面目な答えが返って来た。

「珍しいな。お前が屋上にいるなんて」

てっきり部室にでも行ったんだと思ってた。と呟けば返事は返ってこなかった。
ただ俯くだけ。
ひたすらに、そこに何かあるのだろうかと思うほどじっと地面の一点を見つめていた。
そんな普段と違う鬼道の表情を見て源田は鬼道のすぐ横に歩み寄る。

「なんかあったな」
「………!」

言い切ってやれば、弾かれたようにこちらを見る。
ゴーグルのせいで見えやしないが、きっとびっくりしている。
目を丸くしているであろう鬼道を横目に、源田はフェンスにもたれかかる。
しばらくふたりで屋上から見える景色を眺めていると、不意に源田が鬼道の顔をのぞき見る。
ふいと反らされる視線に、再び苦笑した。

「話くらいなら、俺にも聞けるんだがな」

話してみろ。とは言わない。鬼道のプライドの問題だ。
眉根に皺を寄せてこちらを見てくる鬼道に、笑顔を返してやると再び顔をそらされた。
あ、迷ってる。迷ってる。

「……期末考査…」
「ん?」
「期末考査の結果が、帰って来ただろう」
「…ああ」

先ほど終わった4時間目の話。
担任から返された期末考査の源田の成績は中の中といったところ。
別に悪くもなかったので、同時に返された国語の答案を眺めてその時間をつぶした。

「なんだ?悪かったのか?」

毎回首位。全科目満点の鬼道に限ってまさかと思って笑いながら訪ねれば、俯かれた。
まさか。と思い冷や汗が伝う。
そのまさかなら、自分は今とんでもない地雷を踏んだ気がする。
おそるおそる鬼道の顔を覗き見るが、ゴーグルのせいでやはり表情は読みとれない。
なんとも歯がゆい気分になっている横で、ふと鬼道が何かを呟いた。
自分より背が低い彼は、俯いたままで。
聞き取れるか聞き取れないか小さな声だったので何かとさらに顔を近づければ、
思いも寄らない言葉が返って来た。

「…98点」
「え?」
「国語が98点だった」

なんだそんなことかと思わず源田はため息をつく。そんな点数。自分に比べたらよっぽどいい。
確かにあと2点だったら悔しい気持ちはよくわかる。あと2点で満点。だが、そんな。
思わず黙り込んでいるとずいと一枚の紙切れを渡される。
何かと広げてみれば、それは先ほど返された国語の答案用紙だった。
丸ばかりが目立つ中で、唯一見つけた三角印がつけられた部分。
字数制限のされた記述問題で最後の1マスに句読点を打ち忘れただけという初歩的なミス。
見逃してくれれば良いのに。と地団駄を踏みたくなるような間違いだ。

「あー…これは、悔しいな…」
「こんなことでは…」

すっかり凹んだ鬼道を見て、源田は参ってしまう。
どう声をかけていいのかわからない。
恥じるべき点ではないのだ。…鬼道でなければ。
鬼道にとっては満点以外は赤点と同じ。
おもわず、かける言葉に困ってしまう。
しばらく痛々しい沈黙が流れた後、ふっと源田が思い出したように自分のポケットをあさる。
鬼道はそんな源田に見向きもせず、ただただ落ち込むばかり。

「鬼道。鬼道」

そう呼びかけられ、ようやく鬼道は僅かに顔を上げる。
源田に手渡された紙切れ。なんだと思い、源田を見上げれば、酷く楽しそうな顔をしていた。

「俺は56点」
「………お前…勉強したのか」
「したんだけどな。どうも範囲を間違えて覚えていたらしい」

勉強する場所間違えて、半分しかとれなかった。
そう笑って言えば、鬼道が呆れからか何からなのか分からないが笑みをこぼす。
丸とバツがバランスよく分布する答案用紙にふと目を通す。
最初から最後まで目を通す最中、一つの回答枠に書かれた回答を見て、思わず吹き出した。

「だからってお前、『山月記』の作者がペリーはないだろう…」
「いやぁ。全然覚えてなくてな…だったらウケ狙いに走ろうと」
「答案でウケを狙うな」
「俺としては渾身のネタなんだが」
「にしても、これは、ない」

声を上げて笑われた。
その笑顔に安心する。
そう。お前は笑っている方が良い。

「すこしは元気出たか」
「………おかげさまでな」

お前のせいでなんだかばからしくなってきた。と呆れたように言われ、思わず笑顔を浮かべる。
そんな時間も突如鳴り響いたチャイムにより現実に引き戻される。
慌てて教室に二人で走り戻ったが、屋上から教室までは案外遠くて。
2人して次の授業に遅刻してしまったが、説教されて席に戻り視線があった時、
ふっと笑いかけてきた鬼道に、たまらなく胸が高鳴った。

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