物言う口 [エイリア]


拍手叩いてくださった方ありがとうございます!頑張りますー!


今回久々キューベルで失礼しますー。
パーベルばっか描いてますけど他のが嫌いになったわけではないのですよ!!
ばっちこいという方は続きからどうぞー^^


















昔から、見える物なんて限られていた。
本人が見せたがらないなら無理に見ようとは思わなかったし、
何よりそれが見えないからといって別段困る事は何もなく。
何不自由なく今の今までやって来れたからそれはそれでいいと思っている。
それでも、それでもやはり好奇心という物は覗き出るもので。
ふ、とこちらを向いて何だ。と首を傾げる彼の隠れた目元にそっと触れた。

「どうした?」
「いや。思えば、一度も見た事がないと思って」
「ああ」

直接的な事は何も言っていないのだが、ベルガはそれだけで言葉の意味を汲み取る。
確かにアイキューとは小さい頃からの長い付き合いだ。
だが、幼い頃からずっと覆い隠されて来たベルガの目元は未だに知らず。
むしろ知っている者がこのエイリア学園内にいるのかどうかさえ怪しいくらいである。
そんな、謎や未知ばかりが詰め込まれたそこに触れても、硬質な布の感触しかない。
さり、となぞれば、布に皺が寄るだけだ。

「アイキュー、くすぐったい」
「あ。ごめん」
「いや」

どうやら本人に気を使う事なく好き勝手にいじっていたらしい。
困ったように笑うベルガに謝ればその笑顔を崩す事なく手を振られる。
そう言う時は別に本気で困っている訳ではない時だ。
長い間一緒に過ごしてきた中で、彼の感情を読み取る事が上手くなったと自分でも思う。
目は口ほどに物を言うなどとは良く言うが、それは少し間違っている。
彼には物を語る目はない。
正確には存在しているのだろうが、確認する事が出来ない。
なのにこんなにもよく、彼が何を言いたいのかがわかる。
自分だけなのだろうか。そうであったら、嬉しい。

「アイキュー?」
「ああ。ごめん。いきなり変な事して」
「いや、別にそれは構わないんだが…」

もの言う口がもし何も言葉を発する事がなかったら。
そう考えて思い描くけれどもそれでもやはり彼の気持ちを汲み取れる気がする自分は図に乗っているのだろうか。
いや、そう思ってもやはり、自分は彼の考えを読み取れる自信が、ある。

「本当に、さっきからどうしたんだ」

困ったような声に少しだけ心配そうな響きが含まれる。
ああ。急に黙ったり、触ったり彼は彼なりに自分の奇行を心配してくれているのだろう。
そう考え、彼を困らせてしまっていた事を素直に詫びるとやはり困ったような顔をしながら頷く。
納得してはいないけれど、これ以上言及はしないという意思表示。彼は、優しい。

「アイキュー?」

今日彼に名前を呼ばれたのは何度目だろう。
不思議そうに名前を呼ぶ彼に、笑顔を向ける。
自分に、彼自身の気持ちを正確に伝えてくれるそれが、何よりも愛おしい。

「ベルガ」
「?」
「俺、ベルガの口が好きだな」
「…え」

彼の顔のパーツで唯一見えるもの。
彼の意思を伝えてくれるそれが何よりも何よりも愛おしい。

「いや、それ以外も、好きなんだけどさ」

こともなげにそう言えば、彼ははくはくと口を開けたり閉じたりして言葉を出しあぐねている。
照れている証だ。
それに思わず微笑むと、未だに魚のように開閉を繰り返すそこに、自分のそれをそっと重ねた。





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