我が侭の時間 [エイリア]


今回更新はパーベル。
ちょっとヤンデレというものに挑戦したかったんです…。
なんか見事に玉砕した気がするんですけどね!!←
とりあえず若干の暴力表現があるのでそういう系が苦手だ!という方は回れ右で。
見た後の苦情は一切受け付けませんのであしからずですー。










気がついたら誰かと話していて。
気がついたら誰かに絡まれていて。
気がついたら誰かに引っ張って連れて行かれて。


「アンタは自由だなぁ」

本に向けられていた視界が、持ち上がった。
向かい側で気怠げに頬杖をつきながらベルガを見やるネッパーの表情には何の色もない。
ただただいつも通り底の見えない暗い瞳がひたすらにベルガを凝視するのみだ。
慣れきったその視線に対し、ベルガは僅かに首を傾ける事で返事を返す。
それだけで相手は十分にベルガの意思を読み取ってくれる事を、よく把握しているからだ。
伝えたかったのは「よくわからない」
シンプルなその問いかけに、ネッパーはようやく表情に色を見せた。
にやりと笑う。

「まあ、いきなり言われても分かんねーよな」

それがアンタだ。とカラカラ笑う。
相手が分からない事を前提で話すとは。普通ならばそこで怪訝そうな表情を浮かべるのが通常なのかもしれない。
だが、ベルガは僅かに首を傾けて、静かに本を閉じるだけ。
そうすることでネッパーの話を真剣に聞く体勢を作る。首は傾げたままだ。意味は未だに分からない。
そんなベルガの元に、ネッパーはゆっくりと近づき、目の前で腰を下ろした。
縮まった距離の中でお互いを見やる。ネッパーの表情からは再び色が消えていた。
ああ。珍しい。こんなに無表情なのは。
ぼんやりとそう考えるのは今までの傾向から考えてだ。
普段ニヤニヤと人をからかうような笑みを浮かべているネッパーのここまで読めない表情は初めてだった。
ベルガは再び首を傾げる。なんでそんな表情なのだと。
ネッパーは無表情のままクツリと笑ってさあな。と返す。これまで、ベルガは一言も言葉を発していない。

「アンタ、誰とでも話すからよ」

ぼそりと吐き出した言葉は、理解が難しい物だった。

「アンタ誰とでも同じように話すからよ」

じりじりと距離を詰めるネッパーの瞳はどこまでも暗い。
だがそれにベルガは臆する事なく真っすぐに視界をそちらに傾け続ける。
彼の目が暗いのはいつものことであり、見慣れた光景だからだ。
しかしそれでも今まで見た事のない気迫を持ってして迫って来るネッパーに僅かに気圧されてしまっている。という事実は決して揺るがない物だった。
僅かに、ベルガの頬に冷や汗が伝う。
どうしたというのだろう。彼は。

「俺はその度に」

ゴッ、とネッパーがベルガのもたれかかっている壁に自分の額を打ち付けた。

「すげぇイライラすんのに」

ゆっくりと瞳がこちらを向く。底のない目だった。

「アンタ、平然としてっから」

そのままずるずると、ネッパーの額はベルガの肩口に着地する。
自由に飛び跳ね、うねる彼の髪が喉元に当たってくすぐったい。
だがその感覚に笑っていられるような状況では、ないらしい。
怒っている。今までの比ではないほどに。
それが分かったとしても、ベルガには理由が分からない。
人知れず眉をひそめるベルガの肩口から、バネのようにネッパーが顔を上げる。
その瞳は、どこまでも暗かった。
暗かった。

「なあ」

言葉が飛び出す。

「俺はアンタが好きだ」

ストレートな告白。これがひょっとしたら初めてかも知れない。

「好きだ」

だが、今はそんなことはどうでもいいらしい。

「だから俺はアンタがずっとそばにいればいいと思っているしアンタは俺と話してさえいればいいと思ってるそれなのにアンタときたら」

徐々にペースアップしていく言葉に反論の余地はない。
静かに聞き続けていくと、不意に喉元に手が伸びた。
優しく喉仏をなで上げられる感覚。何故かゾワリと視線が粟立った。

「なあ、何でアンタはそう無神経に他の連中とベラベラ喋れんだよ俺だって確かに他の連中と話したりはするけどアンタの事忘れた事なんてこれっぽっちもねぇのにアンタは平気で他の連中に引っ掻き回されて連れ回されてそれでも楽しそうにヘラヘラ笑ってんじゃねーかよどういう神経してんだ俺がそれをずっと見てるのに気づいてないわけねーだろ気づいてねーとかアンタなら言い兼ねないから言うけどよ気づけ。気づかないとか言わせねーよ俺がこんなにアンタの事見てんのにアンタが気づいてないとか馬鹿にしてんのかアンタは俺の事どうでもいいと思ってんのかふざけんなふざけんなふざけんな!!」

ギリギリと、徐々に喉元を撫でる指に力がこもっていく。
ネッパーが叫び続けているのはただの駄々っ子のような主張であり、嫉妬であった。
延々と吐き出されるその言葉には怒りというよりも苛立がにじみ、
強まる指先の力加減も相まって徐々にベルガを追いつめる。
かは、という空呼吸のような音がベルガの口から漏れる。
虚しく開けられた口内に覗く冷ややかな色をした舌を見つけて、ネッパーは開いている手でゆるりとそれを撫で、悪戯するように引っ張る。
楽しげに、爛々と輝く暗い瞳が、ニンマリと笑った。

「それが、俺だけのモンだったらいいのによ」

ずるり、とだらしなく先ほどまで張りつめられていた力が嘘のようにネッパーの腕が脱力する。
一気に流れ込んで来た空気をむせながら摂取するベルガを、ネッパーは何をするでもなくただただ見つめる。
ひたすらに、見つめていた。楽しそうに、楽しそうに。
げほりと一つ咳をして、ベルガがようやく落ち着いたのか、僅かにネッパーを見上げる。
先ほどまで人の首を締め上げていたとは思えないような涼しい顔で、そこにいる彼を。

「お前、は…」
「死ぬかと思った?」
「少し」
「殺されるかと思った?」
「まあ、な」
「俺の事殺したい?」
「いいや?」
「何で」
「何で、と言われてもな…」
「アンタMだっけ」
「それはない」
「じゃあ、なんで」
「殺されてないからだ」

短い問答の中、ベルガがむせながら笑った。
…そう、笑ったのだ。
まるで子供のいたずらに苦笑するように。

「お前は私を殺してないだろう」
「当たり前だろ」
「だからだよ」
「わかんねーよ」
「分からないか」

また、苦笑する彼を信じられないような目つきで見やる。
首を絞められて、少しでも生死の境を彷徨ったというのに、なんで笑ってられる。



「お前は私をそんな風に勢いに任せて殺したりしないだろう」



正直辛い事に変わりはないんだがな。と、世間話でもするように笑う彼に、一気に毒気を抜かれた。
普通許せる訳がないだろうに。なのに、そんなあっさりと。

「…アンタ、馬鹿だな」
「そうかもしれないな」

そう言って、やはり微笑む彼を見て、どうしようもなく彼の大人っぽさを痛感する。
それと同時に、自分の大人げなさも痛感して、ネッパーはそっぽを向いてため息を吐く。
だからこそ、自分達は上手くやっていけているのだろう。
その事実を、一番自身ににじませながら。



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独占欲と嫉妬が強い彼と、それを全部まとめて許容する人。
これ、ネッパーだけじゃなくてベルガもそれなりに病んでいる気がする。

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