浸食 [エイリア]


拍手叩いてくださった方ありがとうございます!!
励みに頑張ります!返信とかもしたいんですが、ちょっと今日体調が優れないので…orz



今日はリクエスト!「パーベルでネッパーが夏風邪」です。
リクエスト物研修に行く前には全部上げたいですが…ぐぬぅ…あと1つなのよ…
まにあわなかったらすみません…。
そんなわけで続きからどうぞ!お持ち帰りはリクエストしてくださった方のみ可です!
















「馬鹿は何とかは引かないって言うのになぁ」
「手前伏せる場所間違ってんぞ」
「ありゃ?そうか?」

けたけたと笑う悪友を睨みながらネッパーは自分自身の額に手を当てた。
そこに乗っていた氷水によって冷やされていたはずのタオルはすでに熱さにあてられていて本来の役目を果たしていない。
職務放棄をしたタオルをそのままつまみ上げ、隣の氷水の入った容器の中に投げ入れる。
その中も、もはや氷が残っているのか怪しいが。

「夏風邪とか、お前、馬鹿だったんだなぁ!」
「うるせーよ。馬鹿が夏風邪引かねーのは引いた事に気づかねーからだ」
「つまり気づいた自分は馬鹿じゃねぇと」
「もういい、黙ってろ」

これ以上喋ってると頭が痛くなる。
そう吐き捨てて布団に潜り込むネッパーを見て、バクレーは押し黙った。
最初はただ体のだるさを感じるだけだったので放置していたのだが、その結果がこのざまだ。
同室のバクレーが気遣うように氷水を持って来てくれたのは良かったが、その後はずっと先ほどのように茶化され続け、正直うんざりしているのが現在。
バクレーにしてみればいつも元気な悪友がベッドの上でぐったりしているのを元気づけようとしたのかもしれない。
サングラスのせいで全く見えない彼の目に、真意が見えないとうんざりする。
どうして俺の周りはこう、目元が見えない奴が多いんだ。

「なんだよ。つれねーの」
「うるせぇ。しんどいんだよ休ませろ」
「こりゃ本気で参ってるなぁ」
「見てわかんねーか」
「すっげぇ明白」

言っておいて1人でケタケタ笑う。何が楽しいんだ畜生。
もうふて寝してやろうかと思っていると、突然バクレーが立ち上がる気配。
何を始める気だと思わず上半身を起こす。
見れば、部屋の入り口でにやりと笑うバクレーの姿。
そのまま扉を閉められ、直感する。ああ、あの野郎面倒臭くなって逃げやがった。
静かにはなったが、去っていった彼が恨めしい。
やることもなくなったので、仕方がなくネッパーはふて寝をする事に決め込んだ。
















ふ、と目が覚める。
ひんやりした感覚を額のあたりに感じる。起きたのはそのせいかもしれない。
じんわりと目を開けるとそこには見慣れた2段ベッドの天井があって、しばらくそれを眺める。
はて、何時間、寝ただろう。回らない頭でそんなことを考え、時計を見ようと携帯を漁った。

「これか?」
「ん」

ごそごそと目的の物を探す手にポンと何かが乗せられる。
見ればそれは確かに自分の携帯で。
手際よくサイドボタンを押して時間を見る。ああ。なんだ、そんなに時間は経っていないようだ。

「…………あ?」

携帯を握ったまま固まる。待て落ち着け。ここには自分しかいないはず。
じゃあ、今携帯を渡したのは、誰だ。
どうしようもない違和感に思わず自分が風邪であることを忘れて勢いよく起き上がる。
同時に、先ほど容器の中に投げ入れたはずのタオルが額から落ちた。冷たかったのは、これか。
いや、いまはそれどころじゃ、ない。

「どうした…!?」

驚いたような声に思わずそちらを見る。
そこには、こちらを見ながら、本を開いて固まっている見慣れた人物の姿。
警戒心が一気に解け、再びずるずると布団に倒れ込んだ。

「何なんだ一体…」
「それは俺の台詞だっつーの…なんでアンタいんの」
「何でと言われてもな…」

ジト目で見られながら、いつの間にかそこにいた人物、ベルガは困ったように宙を見る。
一体、彼はいつからいたのか。
全く話が分からないネッパーはただただベルガを睨み続ける。
別に怒っている訳ではない。驚いているだけなのだ。それを理解しているからこそ、ベルガは苦笑した。

「いや、部屋にいたらいきなりお前の友人が来てな…」
「…友人?」
「ああ。確か、バクレーだったか」
「あの野郎…」

出て来た悪友の名前に思わず手にしていた携帯を握りつぶしそうになる。
あの野郎良い顔して出て行ったと思えば。
ベルガ曰く、いきなり訪問して来たバクレーに「アンタがいないと死にそうな奴が一人いるから来てほしい」などと言われて案内されたのがここだったらしい。

「確かに死にそうな奴がいたから驚いたんだがな」

冗談かと思ったんだ。と苦笑するベルガに罪はない。
本人もいきなり呼びつけられた事に対して怒ってはいないようで、そんな彼の様子を見ていたネッパーも毒気を抜かれたようにため息を一つ吐いた。
緊張がとけて、そう言えば風邪を引いていたのだったと今更に思い出す。
先ほど無茶して勢いよく起きたのが駄目だったらしい、頭がぐらぐらする。
げほりと一つ咳が出た。

「大丈夫か?」
「…まーな」
「しかしお前も運が悪い」
「何が」
「お前のチームでまともに介抱できそうな奴が全員出払ってると聞いた」
「あー…」
「通りで、私なんかが呼ばれるはずだ」

笑いながら先ほどネッパーが盛大に跳ね飛ばしたタオルを再び氷水に浸してしぼる。
確かにベルガの言う通り、ボニトナやサトスと言ったまともなメンツは今日ここにはいない。
昨日ボニトナが久々に買い物に行くのだとはしゃいでいたので、きっとサトスあたりが荷物持ちにかり出されたのだろう。
畜生。元気な奴らがうらやましい。
些細な事に苛立ちながら、横目で友人が呼んだ人物を見やる。
あの野郎。憎らしいほどに良い人選しやがって。
妙なところで頭の回転が良い悪友のにやつく顔を思い出しながら、額に触れる冷たいタオルの感覚に目を瞑った。
「自分なんかが」と彼は言ったが、正直ネッパーにとってこれほどに良い人選もなかった。
彼以外にこんなことをされたら、気持ちが悪くて仕方がない。きっと。
冷たさが早くもなじんできた頃、再び目を開けば、視界に青い彼の手が映る。
普段キーパーグローブに覆われているせいで見えないその色が、今のネッパーには妙に涼しげに見えた。

「…ネッパー?」

気づけば、目の前を逃げていくその手を捕まえていた。

「冷て」
「まあ、さっきまで氷水につけていたからな」

熱に浮かされたネッパーの手の熱が、手中のベルガの手の冷たさを速いスピードで飲み込んでいく。
じわじわと温くなり、自分の手の熱に浸食されていくその手。
悪い気はしなくて、思わず両手で包み込んだ。もっと移れば良い。

「熱いな」
「アンタの手、温い」
「お前のせいだろう」

苦笑する彼を見て、カラカラと笑う。
包み込んだ彼の手は冷たさなんてもう欠片もなくなっていて。
すっかり自分の熱に飲まれてどこからが彼の体温で、どこまでが自分の体温かまるで分からなかった。
悪い気は、やっぱりしない。

「熱ぃ」
「だろうな」
「アンタの手」
「だから、お前のせいだ」
「だな」

カラカラカラカラ。熱があって、頭は重いが笑い声は高らかで。
何が楽しいのかベルガには分からないが、ネッパーはただただ楽しそうに笑う。
少しだけ、熱にやられているのでは、とベルガが不安に思う程度には、軽快すぎる笑い声だ。

「片手」
「?」
「寄越せ」

握り込んでいた手を片手で掴んだまま、催促するようにもう片手をせがまれる。
意図は分からなかったが、大人しく片手を差し出せばすかさず捕まえられる。
案の定驚くほど熱いネッパーの手。あっという間にベルガの手の温度は彼に持っていかれる。

「熱ぃ」
「ネッパー大丈夫か?」
「あぁ?…あー、少し、ぼーっとするなァ」

カラカラと笑う彼はまるで酔っぱらいのようだ。
暗い瞳が澱んでいる。これはいよいよまずいのではないか。
高熱が出ると吹っ切れてテンションが高くなるという噂を聞いた事がある。
高熱よりも、微熱の方がしんどいのだそうだ。
そんなどこから仕入れたのか分からない知識を元に、目の前の彼を見る。
実に楽しそうに笑っている。ああ、これはどうにも高い熱があるらしい。

「ネッパー、そろそろ寝たほうが…………ッ!!?」

注意しようとした刹那、ぐいとネッパーに掴まれていた手を引っ張られる。
身構えていなかったベルガがそれにきちんとした対応などできるはずもなく、
ただただ引かれるままにネッパーの方へと倒れ込んだ。

「ネッパー…!?」

ネッパーにしてみれば、先ほどの手の延長戦のつもりだ。
握った手が自分の温度に浸食されていくのがたまらなく楽しく、ならば全身を。と思った結果がこれだ。
普段は無表情でこういった事を平気でしてくるのが彼だが、今日は妙に笑顔が絶えない。
と、言ってもクツクツと楽しさを押さえ込むような笑い声で、無邪気なのかなんなのか、全く判別が出来ない。

「熱ぃ」
「…熱いな…」

夏の暑さに関係なく、じっとりと汗ばむ感覚。
押さえきれずにカラカラと笑いながら自分を抱きしめる彼の声が耳元で聞こえる。
まんざらでもないかもしれない。と思っている自分は、彼の熱に当てられたのかもしれないな。
そう思い、ベルガも釣られて笑みをこぼした。




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リクエストありがとうございましたー!

風邪引くと判別つかなくなったりするよね←
ネッパー思いっきり思考能力低下すると良いです。酔っぱらいみたいに常にけらけら笑ってる。




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