確信犯は笑う [エイリア]


今回もリクエスト!
「パーベルでネッパーに名前を呼ばれて照れたりするベルガ」になります^^
















「白井一角」
「熱波夏彦」

2人で顔を突き合わせてお互いの名前を復唱し合う。
そもそもの始まりはエイリア学園の一件が落ち着いて、しばらくした後、誰かが言った一言だった。

「もうエイリアでもないのに、エイリア名で呼び合うのはやめにしないか」

その一言にまばらではあったが賛同の意を唱える声が上がり、全員が一通り自分の本名を名乗ったのは数日前の話だ。
ジェネシス計画が始まってから、もう何年経ったか知れないがその経過年数だけご無沙汰だった自分の本名に違和感を覚える者も少なくはなく。
中にはうろ覚えだったり忘れてしまった。という者までいるほどだった。
最初は戸惑いがちだったが徐々に慣れていく者が出始めたのが最近だ。
そういう風潮が出始めた中、「ネッパー」と「ベルガ」一時期そう呼ばれていた彼ら2人は自分たちの本名を目の前に、2人で向き合っていた。

「夏生まれなのか?」
「いや、そうでもねーけど」
「そうなのか」
「つかアンタどっから『ベルガ』なんて出て来たんだよ」
「よくは分からないが…白イルカがどうのと…」
「イルカ?は?」

訳が分からないという顔をするネッパーに対し、ベルガは解説でも挟もうかと口を開きかけたが、片手を突き出され阻止されてしまう。
難しい話は、あまり聞きたくないらしい。

「そういえば、これからはなんと呼べばいい?」
「あー…」

最もと言えば最もなベルガの質問に、ネッパーはその場で思案するように宙を見る。
今まではエイリア名で呼び合っていたが、エイリアも何もなくなった現在ではそれも妙な気がする。というのがベルガの心境だろう。
だからこその進言だろうが、ネッパーはしばらく考えた後、答えを口にした。


「今まで通りでいい」


予想外の答えに、ベルガは無言で僅かに驚く。
目元は見えないが、そうであることを確信して、ネッパーはニィと笑った。

「今まで通り『ネッパー』でいい」
「だが、それでは…」
「いいんだよ」
「………」
「俺がいいってんだからいいだろうがよ」

押し切るように言うネッパーに、ベルガは苦笑して一つ頷く。
本人がそれがいいというのならば、無理に呼び方を変える必要はないだろう。
それになにより一番馴染みのある呼び方だ。
それは双方とも同じで、正直言って、ネッパーにとってみれば同じ響きでたいして変わりがなくとも、本名の「熱波」より「ネッパー」の方が気に入っていた。
何よりも、目の前で苦笑している彼が初めて自分を意識して呼んだ名前が、そちらであるから。

「じゃあアンタはなんて呼べばいい?」
「私も『ベルガ』のままで構わない。正直こちらの方が呼ばれ慣れていて今更本名を呼ばれるのもどうにもむず痒くてな」
「へえ」

ベルガの言葉に、ネッパーがニヤニヤと笑みを浮かべる。
ああ、何か企んでいる。
嫌な予感はするが、確信ではないので何とも言えず、ベルガは居心地の悪さに身じろぎした。

「まあ、気持ちは分かるけどな」
「あ、ああ」
「俺だって『ベルガ』の方が呼びやすいしよ」

呼びやすい。と言ってみたが実際ネッパーがベルガの名前を呼んだ事はほとんどない。
他の人物にそれを言えば確実に驚かれるであろうが、紛れもない事実だ。
何故。と聞かれれば首を傾げるしかないのだが、名前を呼ばずとも振り返ってくれるベルガに対する一種の甘えから来るのかもしれない。と頭の片隅で考える。
だがそのようなやりとりのままで別段2人とも不満はなく、今までを過ごして来た。
ならば呼び方などどうでも良いのではないか。と思うが、ネッパーはあえて「ベルガと呼ぶ」ことを選んだ。
それは自分が相手にネッパーと呼ぶ事を望んだ理由と同様、自分が相手を意識し始めた時の名前が、ベルガだったから。という理由だけだ。
そんな深層心理を知って知らずか、ベルガはネッパーの申し出に一つ頷く。

「じゃあ、何も変わらないな」
「まあな」

自分の本名を言いあっただけで、何も変わらない。
結局いつも通りな結果に落ち着いた事に、思わず二人で笑ってしまう。
そこで名前の話題から離れ、徐々に別の話題へとシフトしていき、ついには名前のことなど完全に隅に追いやられた頃、
ネッパーがふと時計を見上げて立ち上がる。

「あ。やべぇ。葉隠とゲーセン行く約束してたわ」
「はがくれ?」
「…バクレーだよバクレー」
「ああ」

まだしっかりと覚えきれていない名前に申し訳なく思いながら、立ち上がり準備を始めるネッパーを見やる。
準備と言っても財布をポケットにねじ込むだけなのだが。

「日が暮れる前に帰るんだぞ」
「だから、アンタは俺の保護者かよ」
「八神が怒って、とばっちりを食らうのはごめんだからな」
「ああ。あの男女…」

ネッパー達の帰りが遅いと、激昂するのは生真面目な八神ことウルビダに決まっている。
それを見る周りの目はその飛び火がこちらに来るのでは、と怯えるものばかりで正直見るに耐えないのだ。
そんな状況を知ってか知らずか、ネッパーはカラカラと軽快に笑う。
笑い事ではないというのに。

「気が向いたら早く帰るわ」
「お前は…」
「じゃあ行ってくるわ」
「……ああ」

いまいち信用のない言葉を置いて、ネッパーががらりとふすまを開ける。
にやりと笑う彼を見て、これは早めに帰らないだろう。と苦笑した刹那。





「後でな。一角」





ふ、と場の雰囲気が固まる。
ぽかんとするベルガに、ネッパーは再びにやりと笑ってふすまを閉めた。
ああ。そうか。先ほど、にやりと笑ったのは、帰る時間を、誤摩化すためではなくて。



(……まったく…)



その場で、見えない目元を目隠しごと覆い隠す。
見る者等誰もいないのに、妙に熱くなっていく顔の熱が恥ずかしい。
彼は自分が「名前を呼ばれるのはむず痒い」と言った時から計画していたはずだ。この「悪戯」を。
そう考えると余計にたちが悪い。
そう思うのだが、その悪戯にまんまとはまり、こうしてこみ上げた熱さと羞恥心をどうすれば良いのか。
と言う事を考えあぐねるベルガの耳に、蝉の声だけが静かに響き渡っていた。


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バクレーとウルビダさんの本名すごーく不安なんですけどwww
これ打ってるときにそういやネッパーにベルガの名前ちゃんと呼ばせてない事実に気づいたとか…
名前呼ぶとか恥ずかしいと思っててもそれはそれで美味しいんですけどね!

ではでは、リクエストありがとうございました!!^^


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