そんなもの、人の数だけあるわけで。 [エイリア]


拍手ありがとうございます!励みに頑張りますー!!^^



今回更新はリクエストいただきました「パーベル、ゼルデザ前提のネッパーとゼル、ベルガとデザーム」になります。
リクエストしてくださった方のみお持ち帰り可です!^^

※本名バレあり。嫌な方は注意。


















「砂木沼さぁあああん!!」

叫ぶ声は高らかに意気揚々と。
廊下から響き渡るその声に惰眠をむさぼっていた熱波の脳味噌は強制的に叩き起こされる。
決して快い目覚めではなかったためか、それとも生まれつきか、鋭い不機嫌な眼差しで起き上がりながら廊下を見やる。
すると、先ほどから響く声の主の気持ちを反映するかのように、障子が勢い良く開け放たれた。
開いた障子の向こうには、満面の笑顔を浮かべた瀬方の姿。

「…あれ?砂木沼さん?」
「……………」

部屋をぐるりと見回して目的の人物がいない事に首を傾げる。
そんな自分の眠りを妨げた元凶を見やり、熱波のこめかみが僅かに引きつった。

「2時間前まではここにいらっしゃったはず…」
「オイコラ」
「あ?」

部屋の隅にいた熱波に気づく事なくぶつぶつ呟く瀬方についに業を煮やして熱波が声を上げる。
その声にようやく熱波の存在に気づいたらしい、瀬方がゆっくりとそちらを振り返った。
すごく、残念そうな顔で。

「なんだよ熱波しかいねぇのかよ」
「なんだとは何だ手前。蹴るぞ」
「俺は砂木沼さんに用があるんだよ」
「砂木沼?」

瀬方が砂木沼を盲目的に崇拝し、敬愛しているのは周知の事実だ。
だからこそ、皆彼に砂木沼の話題を振る事を嫌がる。
彼に砂木沼の事を語らせたら、丸一日は彼に付き合う羽目になる。という専らの噂があるからだ。
それは熱波も例外ではなく。露骨に嫌そうな顔をして自分がこの部屋に来る前のことを思い出す。
自分が来たとき、既にこの部屋には誰もいなかったはずだ。

「俺は見てねーぞ」
「何ぃ!?この役立たずめ!」
「うるせーよ」
「どこにいかれたんですか砂木沼さん…せっかくこの前食べたがっていた抹茶ロールを買って来たというのに…」

がさり、と瀬方の持つビニール袋が揺れる。
中には長方形の箱が入っており、その中にどうやら彼の言う抹茶ロールが入っているらしい。
…はて、抹茶ロール。

「オイ。それって駅前の店のやつか」
「おう!並んでも買えるかわからねぇ超人気商品だ!俺が朝の3時から店の前に陣取り激戦の末にもぎ取った砂木沼さんへの愛の捧げものd」
「んなことどーでもいいんだよ。つか知るか」
「自分から聞いといて何だ手前!」
「愛の捧げもの云々の件は誰も聞いてねーよ」

1人で流暢に砂木沼に対する愛を紡ごうとしていたところを無理矢理ぶった切る。
興味のないものにはとことん無関心を貫く。それが熱波だ。
それを周りも知っているので別段気にする事なく、瀬方は一つ舌打ちをすると再び周りを見回し始めた。
だから、ここには砂木沼はいないというのに。
彼が動く度にガサガサと音を立てるビニール袋に、熱波は視線を注ぐ。

「なあ、半分寄越せよ」
「………何を」
「それ」
「はぁ!?」

何の前触れもなく指差された先には砂木沼のためにと買ったロールケーキ。
まさかの申し出にすぐには反応を返せず思わず素っ頓狂な返事を返してしまう。
目を見開いて袋と熱波を交互に見やる瀬方に動じる事なく、熱波はひたすらに袋を見つめていた。

「お前甘いの嫌いだろ」
「まあな」
「じゃあいらねぇだろ。つか好きでも誰がやるか。砂木沼さんのだぞこれ」
「半分くらいケチんなよ」
「俺の睡眠時間を削り、持ちうる限りの愛で勝ち取ったこれを!誰が!お前に!やるか!」

噛み付かんばかりの勢いで吠える瀬方を熱波は相変わらずの底が見えない瞳で見上げるだけ。
確かに熱波自身は甘い物はそこまで好きではない。
ケーキ屋やデパートなどでショーケースに飾られている甘い物たちを見ても別に食べたいという欲求が湧いて来た試しがない。
むしろきらびやかなそれに吐き気を催すくらいだ。
なのに、今何故そんな彼が瀬方が手にしたこれをほしがるのか、道理がわからない。
無表情のままで寄越せの一点張りを続ける熱波に瀬方がいよいよ怒鳴り散らそうとしたとき。
救世主が現れた。


「何をしている」


程よく低いその声に、いち早く反応したのは瀬方だ。
熱波とのやり取り等なかったかのように、障子を開けて入って来た砂木沼に一目散に駆け寄った。
もはや熱波の存在等眼中にない。

「砂木沼さん!てっきりこっちにいるのかと…」
「いや、喉が渇いたんで台所にな…どうした。何かあったのか」
「あ!そうなんですよ!この前テレビの特集見て食べたいとおっしゃっていたケーキ、手に入りましたよ!」
「何…?あれはかなり入手困難なはずだが…」
「いやぁ。暇だったんでちょっと言ってみたら手に入りましてね!」

嘘をつくな嘘を。
部屋の片隅で2人のやり取りを見ながら熱波は毒づく。
きっと瀬方は自分が早起きまでして購入したと言えば砂木沼が申し訳なく思う事を危惧しているのだろう。
現にそんな瀬方の涙ぐましい努力を知らない砂木沼は純粋にほしかった物が手に入った事を喜んでいる。
瀬方としてはその喜ぶ姿が見られるだけで自分の苦労等御破算にできるのだろう。
随分献身的な愛情だ。と熱波は胸中で笑う。

「ならば今から早速いただくとしよう」
「あ、じゃあ俺お茶入れますね!」

笑顔と幸せそうなオーラを辺り一面に振りまく彼らにうんざりして、熱波は部屋を出る事にした。
これ以上あそこにいたら、胸焼けでも起こしそうだ。
もはや熱波のことなどすっかり忘れきっている2人をその部屋に残し、熱波は廊下に出て一つため息をはいた。
駄目だ。無理だ。ついていけない。

「ネッパー?」

さてこれからどうしようかと部屋の前でぼうっとしていると、不意に声をかけられる。
自分の名字と同じ響きで分かりにくいが、確実に呼ばれた名前は自分がエイリア時期に呼ばれていた呼称。
そうやって呼ばせているのは今となっては、たったの1人だ。
本名なんぞよりも、彼が自分を意識し始めてから初めて呼んだそちらの名前の方が、熱波にとっては思い入れがある名前だ。
だから本名を名乗り合った時に、そちらではなくエイリア名で呼べ。と我が儘を言ったのだ。

「よお」
「どうしたんだ。居間で寝るんじゃなかったのか」

首を傾げてこちらを見やる白井とは数時間前に熱波が唐突に「眠い寝て来る」と言い放って別々の部屋にいたはずだ。
白井の行く先々にふらりと現れては居座る熱波にしては珍しい行動だったが、白井は特に何も思ってない様子だ。

「寝てたんだけどよ、あつすぎて部屋にいられなくなったんだよ」
「そうか。まあ、今年は暑いからな」

熱波の言葉を素直に飲み込んだ白井は真意を理解する事なく素直に上っ面だけを理解して答える。
それに深く突っ込む事なく、熱波は先ほど瀬方が持っていたものをふと思い出して目の前の白井を見やる。
自分がこの部屋に寝にくる前、何をする訳でもなくただただ二人でテレビを眺めていたとき、丁度アレが紹介されていたのだ。
ふと何気なく横目で彼を見やった時、彼は画面を見ながら「うまそうだな」と一言だけ呟いたのだ。
それが、妙に耳に残っていて。

「なあ」
「?」
「明日の早朝。3時に出かけようぜ」
「…は?」

ぽかんとする白井を見て、カラカラと笑いながら無理矢理約束を取り付ける。
暑いから部屋戻ってクーラーをつけよう。
未だに先ほどの熱波の申し出に混乱する白井の腕をひいて、熱波は酷くご満悦そうに笑った。



**************************************
リクエストありがとうございました!!^^
リクエストに沿えているかとても不安なわけですが…!!
抹茶ロールはただ単に私が食べたいだけです←
ゼルは献身的な愛情。ネッパーはちょっと子供っぽい愛情。
そういうのが伝われば良いなぁとか、ね…!
ネッパーは子供っぽいといいと思います、ベルガが他の奴と仲良くしてたら無言で向こう脛蹴ってくるよ!←

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。