2分の1 [エイリア]


拍手がずっとエラーなんですけど何が合ったんですか…!



今回は久々に小説。パーベルになりますが設定がちょっと特殊です。
とりあえず幼児化苦手な方は見ないでくださいね!←
見た後の苦情は一切受け付けません。ネタ切れると色物に走る癖どうにかしようか。
そんなわけでどんな状況でもパーベル美味しいですという同志様は続きからどうぞー^^


















…大丈夫大丈夫。
俺はまともだし、夢を見ている訳でもない。
そう自分に言い聞かせた後、ゆっくりともう一度、もう一度だけ目の前のそれを見やる。
おそらくこちらを見ているであろうそれの視線と交差して、盛大にため息をつく。

「…冗談だろ」

言って、自分で冗談ならどれだけよかっただろうと更に空しくなる。
ああ、だってそうだろう。
自分より明らかにでかかった奴が、自分の腰よりも低いくらい縮んでるだなんて。






気づいたのは数時間前だ。
練習も休みだったという事もあり、ちょっかいを出しに行こうとベルガの部屋を訪れたのが事の始まり。
いや、もしかしたらそれよりも前にすでに変化はあったのかもしれない。
とにもかくにも、部屋に入ったネッパーを待ち受けていたのは、普段の半分ほどに縮んだ自分の掌をじっと見つめる少年の姿だった。

「………何をどうしたらこうなんだよ」
「それはわたしがききたい」

見た目は完全に小学校低学年といったところか。
ベッドにちょこんと座るそれを、ネッパーはしゃがみ込んで見やる。
まず最初に名前を聞けばきちんと「ベルガ」と帰って来た。
本名を言わなかったあたり、記憶はそのままらしい。
こういうとき、記憶まで巻き戻るというのがセオリーな気もするが記憶はそのままの方が断然いい。なにより面倒臭くない。
喋り方もいつも通りどこかくだけきらない喋り方で、態度も普段と遜色なかったのがネッパーが冷静でいられる一つの要因でもあった。
だが、それを除いた容姿の部分は随分と今までよりも異なっていた。
いつもつけている青い目隠しはやや大きいのか僅かにずり落ち、その度に忙しなく引きずり上げるように右手が動く。
何よりも変わっていたのは肌の色だろう。
いつもはおおよそ人の肌の色とはかけ離れた青い色をしていたそれが、今は健康的な肌色をしている。
そして、消えた、頬を走る縫合痕。

「アンタ、昔は普通だったんだな」
「…まあ、な」
「怒らねぇの?俺、今アンタの事馬鹿にしたんだぜ?」
「なれている」

淡々と告げられる言葉にふうんと短く返事を返す。
古傷でも抉っただろうか、と僅かに懸念したが、当のベルガは本当に気にも留めていない様子で、
彼の「慣れている」という発言は嘘ではないということが見て取れた。
…それもそれで、どうかとは思うが。

「ネッパー。本当に、気にはしていない」
「……分かってるよ」

長い沈黙に不安になったのだろうか。ベルガが同じ事を繰り返す。
実年齢は確かにほとんど差がないのだろう。
だが、今の見た目ではどう見ても自分より年下に気を使われたような気がしてならない。
どうにも居心地が悪く、目の前のそれの扱いに困ってしまう。

「とにかく、原因が分かんねーんじゃあ話にならねぇ」

今はとりあえずベルガを元に戻す事に専念した方が良いだろう。
そう判断したネッパーが、立ち上がると、それを目で追うベルガ。
僅かに目隠しがずり落ちる。

「どこへいくんだ?」
「他の連中に聞いてくる。アンタのチームの奴そこらにいたろ」

自分は変化が起こった後の事しか知らない。
それ以前の様子は他のチームメンバーの方がよく知っているはずだ。
ベルガをその場に残し部屋を一端出ようと出入り口へと足を伸ばす。
が、

「まて」

ぐい、とユニフォームの裾を引かれる。
適当に鷲掴まれた裾の先を見やれば、首を横に振るベルガの姿。
どうやら他の連中に言いに行くのはお気に召さないらしい。
まるで駄々を捏ねられているようで普段の彼からは想像が出来ないその姿をしばらく見つめていると
聞いているのか。と再びぐいと裾を引かれた。
少々我が儘になっているのかもしれない。

「なんだよ。なんか問題あんのか」
「みんなにはなるべくめいわくをかけたくないんだ」

だからいわないでくれと頭を下げられる。
行動に反して妙に理性的なことを言うベルガにどう反応していいのかわからない。
迷惑をかけたくないと言っても、正GKがこのざまなのだ。既に十分迷惑だ。
本人にそれを言えば余計に凹むだろうからそんなことは言わないが。
それにこのままここに2人で缶詰になっていても何も解決しないだろう。
そう思い、ベルガには申し訳ないがネッパーは彼の意思を汲む事を諦めた。

「そうも言ってらんねーだろ」
「あ」

縮んでしまったせいで力も弱っているのだろう。
簡単に振りほどけた手に僅かな罪悪感も感じながら出入り口のドアノブを掴む。
ガチャリと言う音が響くと共に、後ろの方でどさりと何かが落ちる音。
まさか。と思いおそるおそる後ろを向けば、そこには見事にベッドから転げ落ちたベルガの姿。
正直、頭の中が真っ白になった。

「……何、やってんだよ…」

普段こんなドジは踏まない奴だと言う事は重々分かっている。
そのため、呆れ半分にベルガを見やる。扉は後ろ手に閉じられたまま。
怪我がないことを確認したらそのまま強行して出ようと思ってはいた。
眺めていると、実に緩慢な動作でもぞもぞと起き上がり、辺りを見回すベルガ。怪我はないらしい。

「…ネッパー」
「なんだよ?」
「ネッパー」
「だから、何だよ」

呼びかけても返事はなかった。
ぺしぺしと床を撫でながら辺りを見回す。
まるでそれは、手探りで動いているように見えた。

「ネッパー」

声に、僅かに滲んだ不安の色を聞いて、ハッとする。
慌てて近寄り、床を這いずる手を掴んでやれば、それは僅かにびくついた。

「ネッパー」
「なあ、アンタまさか」

問うような声。握った手が、きゅっと握り返して来た。
当たりらしい。

「見えてねーのか?」

ネッパーの問いに、ベルガは一つ頷いた。











「せいかくにはきょくたんにしりょくが低いだけだ」
「じゃあ少しは見えてんのかよ」
「ほんとうに、少しだけ」

転げ落ちたままだったベルガを再びベッドの上に座らせ、目隠しの奥に隠れた目を見やる。
昔の話なんてほとんど聞いた事がなかったし、自分自身も幼いときは彼とほとんど面識はなかった。
だからこそ今初めて知った事実にネッパーは驚いている。
幼い時は全く見えていなかった目。だが、それが、今では不自由なく見えている。
それはつまり…そこまで考えて、ネッパーは考える事を止めた。
ベルガ本人が吹っ切れているのなら蒸し返す必要はない。そう思った。

「中身そのままの癖に、それ以外は全部退化してんだな」
「そうらしい」
「やっかいなことになりやがって」
「まったくだな」

ため息を吐けば、苦笑が返って来た。そこは、本当に普段と大差などなくて。
変わってしまったのは大きさと、容姿と、視力だけ。
よくもまあ、平気でいられるものだ。

「俺のこと、見えてんのか?」

問う。
しばらくの沈黙の後、ベルガが僅かに手招きして来たので近寄ってやる。
途端、精一杯腕を伸ばされ、頬を掴まれる。
痛くはなかった。

「ここまでちかよれば、見える」

目と鼻の先まで引き寄せられてのその一言。
視界を埋め尽くす青のせいで見えないが、僅かにベルガが笑った気配がした。
ああ、コイツは、本当に。

「アンタ天然だよな」
「なにがだ」
「こんなに近寄ったらキスしたくなる」
「………っ」

ネッパーの言葉にようやく状況を飲み込んだらしい。慌てて突き放される。
ニヤニヤと笑いながらベルガを見やれば、よっぽど恥ずかしかったのか
先ほどまで懸命にずり上げていた目隠しを今度は顔を全て覆い尽くさんばかりに引き下げ始めた。
あれでは窒息してしまう。
手を伸ばしてぐいと鼻辺りまで引きずり上げてやれば、その下には可哀想なくらい真っ赤になった顔があった。

「俺、このままでも楽しいかもしんねぇ」
「おまえは…!」
「冗談だよ。冗談」

カラカラと軽快な笑い声が響く。
ベルガの表情は見なくても大体察しがつく。呆れているか、苦笑しているかだ。
あやすように頭を2、3度撫でてやり、立ち上がる。
ネッパーがどこかへ行くことを察したのか先ほどのように引き止めようと手を伸ばされたが、先読みしていたネッパーがそれをひょいとよけてしまう。

「なあ、アンタ、そこから俺の顔、見える?」
「りんかくだけなら」
「輪郭だけ、ねぇ」

ベルガの返答にネッパーは渋い顔をして扉を開ける。

「やっぱ、アンタいつもの方がいいわ」
「ネッパー、」
「アンタの言う事は聞かねぇよ」

皆に言わないでくれ。と言いたいのだろう。
ベルガの口が開くのを確認すると、すかさずネッパーは言葉を遮った。
ニヤリと笑うネッパーの表情を、果たして今ベルガは確認できているのかどうか。
きっと、答えは否。

「アンタが俺の事見えてねーとか、耐えられねぇ」

他の奴がどうだとか、そういうのはどうでもいい。
ネッパーに重要なのはその一点。その一点だけ。
ネッパーに言われた言葉の意味をベルガが咀嚼している間に、開けた扉からするりと抜け出す。
まずはやはり医務関係者に聞くべきか。
そう考え、とりあえず足を医務室へと向ける事にした。



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続きそうだけど続きませんよ!
とりあえずエイリア石の副作用かなんかで縮んだんだと思います。
なんて便利な言葉。「エイリア石の副作用」…。日付が変わればきっと元に戻ってます。

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