せめての埋め合わせ [エイリア]


拍手叩いてくださった方ありがとうございます!励みに頑張らせていただきます…!!


はい、なんかもうまるっとホワイトデー忘れてたのが本当に忍びなさすぎたんで
オレンジデーで挽回を図ろうというあれですよ!つかこれ全国的な記念日だったんですねぇ。てっきり愛媛県内だけかと。3月から随分CMやってたものです(爆)

そんなわけでさすがに取り扱い全部を全部というわけにもいかなかったので
アンケートでぶっちぎりで首位を争っているデザーム受けとベルガ受けで1本づつ。
当日は現時点で1位のデザーム受けよりゼルデザでお送りします^^まさかアンケートがこんなところで役に立つとは(爆)
アンケート答えてくださっている方本当にありがとうございます!!
ちょっとずつでもほぼ全部に票が入ってるのが本当に嬉しいです。スカウトとか特に(笑)取り扱いは俺得な組み合わせばかりですけどもww


ってなわけで続きからゼルデザオレンジデーです^^










最低だ。
何が最低かというと自分自身が最低なのだ。
バレンタインデーは想い人からチョコを貰う日。
自分はきちんと彼から目的のものを貰えたというのに。
ホワイトデー、そう、問題はホワイトデーなのだ。
それはバレンタインデーに貰ったものに対してお礼をするという行事なのであって、
たとえそれが製菓業者の陰謀であろうがなんであろうが世間一般に浸透している限りさけては通れない行事である。
だが、それをよりにもよって完全にスルーしてしまうとは何事だろうか。
いや、例え「申し訳ありません。失念していました!」と額を地面にこすりつけて謝ったところで、百歩譲って彼が許してくれたとしても自分の納まりが付かない。
あの方は行事ごとに疎そうに見えてならないが、バレンタインデーはきちんと認識していた方である。
ホワイトデーというものも覚えていて当然しかるべきなのだ。
これはもはや自分のせいではないなどと言ってしまいたいがそれでは話が成り立たない。
そもそも3月があんなにも忙しかったのがいけない。
マキュアが花見がしたいだのなんだのと言って、桜の見頃などを調べたり準備をしたりしていたせいでこうなったのだ。
桜の見頃が3月14日に被っていたのもいただけない。
忙しさのせいで失念していた。これは事実だ。
だが、事実だからといって許される問題ではないのだ。
自分はあの方から貰うものだけ貰って、何も返せていない。
それが問題なのだ。生死に関わる問題なのだ。
そう、今問題なのは「何故忘れていたのか」ではない。
「忘れてしまっていた埋め合わせをいかにして行うか」なのである。





「ばっっかじゃない?」

自分1人で悶々と考えた結果、何も良い案が思い浮かばず、仲間に知恵を借りればこれだ。
いきなりのキツい一言にゼルは底辺まで落ち込む。
普段ならば噛み付かんばかりの勢いで反論できただろうが、今回確かに自分は馬鹿なのである。
ゼルはテーブルに額をゴリゴリとこすりつけながらマキュアの悪態を受け入れていた。

「バレンタインもらっといてホワイトデー忘れるとかサイテー」
「確かに最低だ…!謝っても謝りきれない…いっそ死にたい…」

いい加減凹むを通り越して鬱になりつつあるゼルをみて、マキュアはため息を一つ吐いた。
ゼルがデザームに好意を寄せているのは随分前から知っている。
自分自身も確かにデザームのことが好きだがゼルのような恋愛感情にまでは発展していない。
だからこそ、応援してやろうとも思っているのだが、当の本人がこれだ。
確かにホワイトデー時期に花見をやろうだのなんだのと自分が言った記憶はある。
そのせいで彼が忙しそうにしていたことも。
だが、そこに同情の余地はない。

「マキュアだってちゃーんとお返ししたわよ」
「何ぃ!?」
「メトロンだってモールだってクリプトだって、ファドラさえお返ししてたのに」
「な、ななななな…」

マキュアの口から出てくる名前の数々にゼルは頭を鈍器で殴られたような衝撃を受ける。
メトロンやクリプト、モールは分かるとしても、ファドラがホワイトデーを覚えていた事が何より衝撃だった。
ファドラさえ覚えていて、自分が忘れていた。
正直ファドラには失礼きわまりない考えだが、他の誰よりも意外すぎた。それ故にショックも半端ではない。
一瞬にして真っ白になったゼルを見て、マキュアは再びため息をつく。
すぎてしまったものはもうどうすることもできない。
挽回できる機会があったとしても、今のこの男はきっとそれを棒に振る。
すべて、嫌われたのではないか。という思いが先行してしまうせいだ。
もし、「お詫びです」と言って渡そうとしたものを受け取る事を拒絶されたら。
最悪の場合、目の前でゴミ箱に捨てられでもしたら。
本来人としてそれは最悪なのではないかと思うようなことまで想像してしまい、その妄想がゼルの足を止めるのだ。
サッカーに対してはあんなにも挑戦的で攻撃的なゼルではあるが、敬愛するデザームのこととなると話は別だ。一気にヘタレと化す。
それもそうだろう。ゼルにとって、敬愛する彼に嫌われる事は、最もさけて通りたいことなのだから。
目の前で手を振っても何をしても反応を返さないゼルに、もう何度目になるかと思うため息を吐きながら、マキュアはテーブルに肘をついた。

「あーあ。このままだったらゼル、ブラックデーやんないとねー」
「ブラック…?なんだそりゃ」

励ます事も馬鹿らしく思えて来たマキュアの皮肉に、ゼルは首を傾げる。
てっきり知っているものと思って話題を出したマキュアは一瞬呆然とするが、
すぐにニヤニヤと笑いながらブラックデーを親切丁寧に教えてやる。
可愛い顔をしていながら、我が儘でえげつないのが彼女である。

「ブラックデーっていうのはね。韓国かどこかの記念日でね。
 恋人のいない人が黒い服着てジャージャー麺食べるんだってー」
「恋人の…いない人………」

マキュアの説明の一部分がダイレクトにゼルの心に突き刺さる。

「いっ、いや待て!俺は別にデザーム様とそのだな、こ、ここここ恋、人同士、に、なってる訳じゃねーからなんともな…」
「まあ、バレンタインデーにチョコ貰えなくてお返しできる人がいない人がやる行事らしいわよ」
「なっ…」
「お返しできる人がいないのも、お返ししないで嫌われるのも、一緒よねーえ?」

ニヤニヤと笑うマキュアの言葉はついにゼルにとどめを刺した。
がっくりとうなだれたゼルはただひたすらに「嫌われた」を呪詛のように繰り返すばかりで、それに続くマキュアの嫌味も耳に入らないようだ。
だが、それに構わずマキュアは話を続ける。

「あとイエローデーとかもあるらしいわよー。恋人いない人が黄色い服着てカレー食べるんだって。ここまでくると意味分かんないけど。
 あとは…オレンジデーとか。これは日本の行事でねー」





「大切な人にオレンジとか、オレンジ色のものを贈る日なんだってー」





マキュアの最後の一言で、ゼルが勢い良く顔を上げる。
大切な人にものを贈る日。それは、まさしくホワイトデーの埋め合わせになるのではないか。
そこまで考えて、目を輝かせたものの、ゼルは再び首を振ってテーブルに突っ伏した。

「何よ?ホワイトデーすみませんでしたー。って言って蜜柑でもあげたら解決じゃないの?」
「駄目だ駄目だ駄目だ…!その日を祝ったところで俺がホワイトデーを忘れていたという事実はデザーム様の中から消えねーだろ!」
「そうだけどさぁ。別に良いじゃん」
「よくねぇ!ホワイトデーを忘れた時点で俺は最低だ!せっかくデザーム様からチョコをいただいたのにそれに対して何も報いる事をしなかった俺は最低だ…」
「あー。もー!ゼルめんどくさーい!!」

とことんネガティブになっているゼルは、もはや聞く耳を持たない。
何を言っても駄目だ。許されないの一点張りで、どうしようもないのだ。
これでは、あまり気長な方ではないマキュアが放り投げるのも時間の問題だった。
つかつかとどこか部屋の奥へと歩いて行き、オレンジ色の球体を持ち出してゼルの目の前に乱暴に置く。

「とにかく!ごめんなさいって言って!これ渡すの!!マキュアこれ以上は面倒見ないからね!!」

もーつかれた!とぼやきながら部屋を後にするマキュアの背中を見もしないで、
ゼルは机に突っ伏したまま去って行く足音を聞いていた。
しばらくして、ふ、とあげた視線の先にはぽつりと蜜柑が一つだけ、残っていた。









(こんなものを渡したところで一ヶ月前の失態が許されるわけねーだろ…)


マキュアが置いて行った蜜柑を宙へ放り投げながら、廊下を歩く。
結局そのままにしておくのも気が引けたので持ち出したのだが、
こんな蜜柑一つでどうこうなる問題ではないのだ。
そもそもこれを渡して受け取ってくれるかどうかさえ不安だというのに。
突っ返されたら今後自分は生きていられないかもしれない。
そんな、生死に関わる事にまで思考回路が飛んだときだった。

「ゼル」

その声に弾かれたように顔を上げると、目の前にはいつの間にいたのか、デザームの姿があった。
考えにふけっていたせいか、気づけなかった。
慌てて手にしていた蜜柑を後ろ手に隠す。

「で、デザーム様」

何の御用でしょう?と、いつも通りに答えたつもりだったのだが、僅かに声が震えた気がする。
思えば、ホワイトデーの失態に気づいてからデザームと1対1で話すのはこれが初めてだ。
そのせいもあってか、極限まで高まるゼルの緊張。
そんなゼルの様子に気づく事もなく、デザームはいつも通りの声色で、用件を述べ始めた。


「お前にこれをやろう」


実に、簡潔な用事だった。
そう言って差し出されたそれは、ゼルが手に持っているものと同じもの。
オレンジ色の丸いもの、蜜柑がデザームの掌の上で転がっていた。

「で、デザーム様?」
「今日はこれを渡す日だと聞いた」




バレンタインデーやホワイトデーなど、恋人に関する行事は予想以上に多いのだな。



そんな、こともなげに言われた言葉に、ゼルはただただ呆然とする。
要するに、デザームは今日この日をオレンジデーと知っている。
そして、想い人たちの日だということも。
もう、これだけの材料でゼルの気持ちは一気に晴れ渡って行く。
先ほどまでの暗い、後ろ向きな気持ちが嘘のようにゼルは自然と後ろに回していた手をデザームの方へ差し出した。

「お、俺もこれを!」

マキュアに教えられて初めて知った。などとは口が裂けても言えない。
先月のようなヘマはしてはならない。
嫌われていないどころか、好意を寄せられている証のようなものまで貰って、ゼルが喜ばない訳がない。
差し出された掌に乗る蜜柑を見て、デザームは、それを素直に受け取る。
結局2人の手の中に残ったのは最初に持っていたものと何も変わりないものとなったが、
それでも、ゼルにとってはそこら辺の店で売っているそれより数十倍の価値があるものだ。

「俺、一生大事にします!」
「そうか」
「はい!」

満面の笑みで答えるゼルを見て、デザームも満足そうに頷く。
そうして見事に挽回できた14日は、ゆっくりとすぎて行くのであった。

「…だが、蜜柑の賞味期限というのはいつなのだろうな」
「…カビが生えるまでですかね」
「それでは具体的な時期がわからんな」
「個人の判断で見極めろということでしょうか」
「…うむ。限界が見えないとは…尊敬に値する」

……ゆっくりとすぎて行くのであった。





















おまけ。

「デザーム様ー」
「マキュアか」
「これ、差し上げます!」
「これは?」
「今日はオレンジデーといって、好きな人に蜜柑とかオレンジ色のものを贈る日だそうですよ!」
「ほう」
「あと、もうひとつ差し上げますね」
「む?」
「一つ目はマキュアの気持ちですけど、もう一つはデザーム様が好きな人にあげてください」
「そうか。すまない」
「いやあ。そうしないと何も発展しないんで」
「?」
「あ、こっちの話でーす」


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…ほんと、ウチのゼルどうしようもないヘタレですみません。そしてマキュアの力がないと進展しなくてすみません(笑)
ゼル本人は絶対にホワイトデー忘れないと思うんですけどね!


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