手の鳴るほうへ [エイリア]


拍手無言の方もいつもいつもありがとうございます!!励みになります本当に…!

今回、キューベル……なんですが、お日さま園時代の過去捏造で、す……orz
以前上げていました『過去、そして現在に至る考察』の設定を少しだけ持ってきてます。
なので、この『過去、~』の内容が許容できた方のみ読んでいただければなぁ、と^^;
私のすさまじい妄想ですので、「お前の妄想につきあってられるか!!」「変な設定つけないでもらえませんか…?」と言う方は回れ右。このままスルーしたってください…orz



と、いうわけで「捏造ばっちこい!」「前に上げてた過去捏造、大変美味しかったです!(←)」という方のみどうぞ…^^;…いや、後者さすがにないな…!
もういい加減トップ以外の本名が知りたいです…色々困るんだよ…!!








お日さま園は、子供たちの宿舎と隣接して立てられている。
日中はお日さま園の方で遊び、日が暮れてからは宿舎で生活をする。
夜になれば、数十人単位で一つの部屋に皆で布団を並べて寝る。というのが日常だった。
大人数で集まって寝ていれば、夜中に目が覚めたときでも怖くなる心配はない。
昼間遊んでいた友達も、兄妹も、皆同じ場所にいるのだから。

だからこそ、お兄ちゃん。と耳元で囁かれたとき、
アイキューは眠い目を擦りながらも必死でむくりと起き上がった。
ぼんやりとする視界で周りを見回すと、まだ真っ暗で今がまだ夜中である事を確実に物語っていた。
暗闇になかなか慣れない目で手探りで眼鏡を探してかけると、案の定、妹のアイシーが自分の布団を覗き込むようにして座り込んでいるのが見えた。

「お兄ちゃん。トイレ」
「んー…」

泣きそうな顔をしているアイシーを見て、なんとか意識を覚醒させようと必死になる。
幼い妹は、まだ夜中に1人でトイレに行くのを異常に怖がる。
これまでも何度か起こされた経験のあるアイキューは、今日もまた妹のために懸命に起きようと頑張る。
だが、どうにも、眠い。昨日皆でいつも以上に長い間外で遊んでいたせいだ。

「お兄ちゃん!いっしょに行ってよぉ…」
「ん…わかってるけど…ちょっと待って…ねむい…」
「おにーちゃんっ」

兄が付いて来てくれないとでも思ったのか、アイシーの声は必死さを帯びてくる。
アイキューも心配かけまいと頭を振る。徐々に眠気はとれて来た。
その間にも、アイシーはずっとお兄ちゃんと呟き続ける。
そのせい、かもしれない。



「…………どうした…?」




隣で寝ていたベルガを、起こしてしまったのは。










「アイシー。大丈夫だよ。ほら、電気だってついてるから」
「やだ!だってトイレまでのでんきいっつもちかちかしててこわいんだもん!」
「……たしかに…」

見上げれば、トイレまでの廊下を照らす蛍光灯はちかちかと、たまに道に影を落とす。
いつだったか、瞳子がそろそろ変えないとね。とぼやいていた事を思い出す。
そんな蛍光灯事情もあって、アイシーの恐怖感は増大しているらしい。
兄と、その友人を左右に置いて、その腕をがっちりとホールドして離さない。
ぎゅっと腕を掴む手に力が入るのを見て、アイキューは思わず苦笑した。

「ごめん。ベルガ。起こしちゃって」
「……大丈夫だ」

大丈夫。と言ったそばから欠伸をかみ殺す。
彼もまた眠いのだろうなぁ。と思いながらもう一度だけごめんと謝る。
あの後、うっかり起こしてしまったベルガを見て、アイシーが「1人より2人について来てもらった方が良い!」という思考に至るのは時間の問題だった。
起き上がって欠伸をするベルガを見て、アイシーが「ベルガもいっしょに来て!!」と飛びつけば、彼がその申し出を断る姿は、アイキューには想像できなかった。
そうして、今の現状が完成したのである。

「ほら、アイシー。ついたよ」
「ここにいてよ」
「うん」
「ぜったいにいてよ!」
「大丈夫だって」
「ベルガもだからね!」
「ああ」
「ぜったいよ!!」
「ほら!こわいなら早めに部屋にかえろう」

トイレについても、扉から僅かに顔を出して必死の形相で何度も何度も確認をするアイシー。
アイキューはあきれ顔で優しく言葉をかけながら頭を撫でると、アイシーは覚悟を決めたようにトイレの扉を閉めた。
その姿に、思わずアイキューはベルガと顔を見合わせて苦笑する。

「でも、たしかに電気取りかえてくれないかなぁ」
「1週間くらい前から消えそうだ」

チカチカと真夜中の暗闇を照らすには心許ない光量で、蛍光灯は廊下を照らす。
時折ブーンという聞き慣れない音が耳に入るのも何とも怖い。
こう中途半端な明るさだと、かえってこの場が不気味に感じる。
二人でぼんやりとついては消える蛍光灯を眺めていた。

「…あっ」

そんな、アイキューの声とほぼ同時だった。
懸命に光り続けていた蛍光灯は、ついに頑張る気力をなくしたのかふっと、突然光る事を止めてしまった。
いい加減限界だったらしい。
なんでもっと早く取り替えておいてくれないんだろう。
よりによってこんなときに。とアイキューは一つため息をはいた。
きっと、トイレから出て来たアイシーがいつも以上に怯えるに違いない。
そう、思っていたときだった。

「…アイキュー?」

隣から、不安げな声が聞こえたのは。

「アイキュー。…どこだ。アイキュー…!!」

必死さを帯び始めるその声に、思わずはっとする。
普段周りとなんの遜色もなく過ごしていたからこそ、たまに忘れるのだ。
彼の視力が、人よりも明らかに劣っている事を。
必死に自分の名前を呼ぶベルガの腕を、こちらも必死に手探りで探し出して掴む。
ビクリとこわばったそれは、カタカタと可哀想なくらいに震えていた。

「アイキュ…」
「大丈夫。となり。ずっととなりにいるからさ」

大丈夫。ともう一度安心させるように呟けば、腕の震えは徐々に収まっていった。
だんだんと暗闇に慣れ始めたアイキューの目に映るベルガの表情は今まで見た事がない怯え切った顔だった。

「……見えなく、なったんだ」
「うん」
「なにも、なにも、見えなく、なった」
「うん」
「こわいんだ。見えなく、なるのが。全部、見えなくなる、のが」
「…うん」

彼の視力は致命的なまでに低かった。
人の顔などは識別できるらしいが、自分たちのようにすべてが見える訳でもない。
どうやって見分けているのか。と聞いた時、ベルガはアイキューの眼鏡のフレームを触り、「これがあって、黒いかみがお前だ」と笑って言っていた。
つまり、その程度にしか、見えていないのだ。彼にはこの世界が。
だからこそ、彼はそのなけなしの視力を失うのを酷く恐れた。
そして、その最も恐れることを今の暗闇で疑似体験してしまった。
何も見えない真っ暗な世界。誰も分からない。誰かも分からない。自分がどこにいるのかも見えない。
それは、アイキューには想像もつかないほど、恐ろしい事なのだろう。
証拠に、ベルガの声は震えていた。

「大丈夫だから。ぼくはちゃんと、となりにいるから」
「…ああ」
「ベルガのうで、ちゃんとつかんでるから」
「…ああ」
「…大丈夫、だから」

消え入りそうな声で励ます。
彼を泣かせそうなこの暗闇が、酷く呪わしかった。
さっさとなくなってしまえばいいのに。そう、思ってもどうしようもない事くらい分かっていた。
だが、偶然とは恐ろしいもので、不意に今までこと切れていた蛍光灯が再び光を放ち始めた。
まるで、先ほどまで僅かに居眠りをしていたような、突然の覚醒だった。
チカチカしている事に変わりはないのだが、確かに再び照らされ始めた廊下で、アイキューはベルガの方を見やる。
彼もまた、呆然としてアイキューの方を見つめていた。

「…見える?」

ぽつりと聞く。

「………見え、る…」

ぽつりと、返ってくる答え。

「…見える…!」

いつかのように、アイキューの眼鏡のフレームにそっと手を触れる。
先ほどまでとはうってかわって、安心し切ったように笑顔を見せたベルガを見て、アイキューも思わず顔をほころばせた。





「わぁあああん!」



そんなとき、場の空気を切り裂くようにしてアイシーの泣き声がこだまする。
扉を蹴破るようにして出て来て、アイキューに飛びついたアイシーに、思わず二人とも慌て始める。

「ど、どうしたのアイシー!こわいものでもあった!?」
「はっ、はや、く、出ようっ、て、おも、てたのにっ、トイレットペーパー、切れて、てっ!はや、く、でっ、でられなか…た!」

ぐずぐずと泣きべそをかくアイシーを見て、二人ともキョトンとする。
きっと、早く出て早く帰ろうと思ったのに、予想以上に時間がかかってしまったのだろう。
そのせいで、ずっと張りつめていた緊張の糸が切れる限界まで来ていたのだろう。
ようやく出られる。と思った途端その糸がぷっつりと切れてしまったわけだ。
死ぬ想いをしたであろうアイシーには悪いと思いながらも、アイキューは思わず笑みをこぼした。

「大丈夫だよ。ここからはぼくたちがいるからね」
「うっ、うん…っ」
「よし、じゃあ皆のところに戻ろう」
「うん…っ!」

アイシーの手を引いてアイキューが歩き出そうとすると、アイシーはそれよりも早く、行きと同じように2人の真ん中に立ち、2人の腕をしっかりと掴んだ。

「だい、じょうぶだもん、ここからはお兄ちゃんもベルガもいるから、なかないもん…!」

既に涙で濡れている顔で力強く言う。
表情と矛盾した言葉ではあったが、力があった。
アイシーの言葉に、アイキューとベルガは顔を見合わせ、僅かに微笑む。


「ああ。大丈夫だ」


ベルガの返答に、兄妹が頷く。
そのまま、蛍光灯がチカチカと瞬く廊下を3人で進む。
行きは少しでも怖いと感じたその道。だけれども、





誰かが一緒なら大丈夫だ。と今は思えた。






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ひ、広い心で!お願い、します!!

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