陽炎が泣いた [その他]


さすがにパーベル以外も更新しないとな。と思い三途と幽谷。
たまに妙な雰囲気の文が書きたくなるんです。
そろそろプレイ記も書きたいなぁ。とか。ちみちみやってるんですよ!


あ、空パチありがとうございます!!励みに頑張らせていただきます!!



では、続きからどうぞー。
いつもと文の雰囲気は違ってます。









夕暮れ時でございました。
正確には夕暮れ時であるだろう。でしょうか。
踏みしめる草花は皆赤や紫に彩られ、非常に毒々しい色をしておりました。
太陽ががらがらと重力に従い下へ引きずり降ろされるのを仰ぎ見れば、
空は深緑に染まっておりました。
風は吹いておりませんでした。
ただ、ごうごうとうねりをあげる音だけが耳元をやかましく過ぎ去ります。
それが酷く耳障りだったので、手元にあったつまみを「切」にしてやれば、
それはぴたりと止んだのでございます。
空はどこまでも続き、大地は幾分か前方の方で途切れておりました。
空は続いているというのに大地がないとは。
その大地の先にはなにがあるのだろう。と考え、
結局何も思い浮かばずに頭のスイッチを切るのです。
そうすれば、周りのさえずりが聞こえて来たので、ああ。やかましかったのは自分の頭の中か。と初めて気づくのでした。
何も考えず、草花を踏みしめ先を急げば、川がありました。
酷く広い川で、向こう岸はもやがかかり何も見えません。
仕方がないので川の中を覗き込めば、鳥が優雅にその中を飛んでいるのでした。
ああ。そこはお前の居場所ではないだろう。とその鳥をつかみ取り、
川底から引きずり出して空へ放ってやれば、それは羽ばたきもせずにその形のまま地面へと落ちていったのです。
死んでおりました。
ああ。お前はえら呼吸だったのか。
ならば雄大な空を泳ぐあの魚は肺呼吸なのだろうか。と思い、こちらへ近づいた魚を捕まえてやりました。
見たところそれはトビウオでして。
ああ、飛魚ならば空も飛ぼう。
そう思って私は素直にそのトビウオを空へと返してやったのです。
それは、実に嬉しそうに空へと再び舞い上がっていきました。
頭上でくるくると幾匹かのトビウオが旋回しております。
まるで鳶のようだ。と思い、その様を眺めていますと、それらはすうっと川の向こう岸に飛んでいったのでございます。
もやの中へと掻き消えたトビウオたちはどこへ行ったのだろう。と思い、
近くで煙管をふかしていた船頭にあれらはどこへ行ったのか。と問うてみました。
船頭は深く笠をかぶり、見えない眼を川の向こう岸へやると
あちら側へ行ったのだ。とだけ答えました。
あちら側は分かるのだ。あちら側には何があると聞いている。
そう問えば、船頭は行ってみれば分かる話だ。とだけ言い、答えを教えてくれないのです。
ならばあちら側へ連れて行ってはくれぬか。と頼めば、手を差し出されまして。
6文よこせ。と乗船料をせびるのです。
はて、文などあっただろうか。と思い、身を探っていますと、
どこからともなく、声が聞こえたのです。

そろそろ帰って来なさい。と。

まるで子供に早く帰るように促す母親のような声でした。
どこか懐かしさを感じて、ふと声の方を顧みれば、誰もおりません。
ただ、空を見れば重力により無理矢理引きずられていた太陽が、完全にあちら側へさらわれる前でして。
ああ、ならば帰らねばならぬ時間だ。と思い、船頭にあれらを追うのは今度にしようと断りを入れて、川からゆっくり離れました。

遠くで、重力にさらわれた太陽の断末魔が、響いておりました。


































がばり。


そんな音を立てるように起き上がれば、雑多とした部屋の中。
ぐるりと見渡せば、そこがサッカー部室であるとようやくのことで気がついた。
どうやら、長椅子の上で寝ていたらしい。
ふ、と顔を上げれば、机を挟んだ向かい側で、幽谷が綺麗に笑っていた。



「おかえりなさい。三途先輩」



おかえり、とは。と首をひねっていると、あんまり遠くまで行っちゃ駄目ですよ。と苦笑まじりに怒られる。
なんだか素直に謝らなければならない気がして、ごめん。と謝れば、また、綺麗な笑顔が返って来た。



「今日はどこに行ってたんですか?」



問われて、首を傾げる。
わからない。



「…ちょっと、そこまで」


「そうですか」



俯き加減に呟けば、幽谷はやはり、綺麗な笑顔を返すのだった。






*********************
フィーリングでくみ取っていただければ。と思います。

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