ろくでなし賛歌 side:P [パーベル学パロ]

パーベル学パロ番外編その1。ネッパー失踪時のプロミネンス家。
ほ、補足になってんだかなってないんだか…!!


あ、空パチありがとうございます!!励みに頑張らせていただきます…!!


では、続きからどうぞー。










大晦日も近い夜。ネッパーからいきなりの連絡。
心配であれこれ言ってたら、「ボニトナと替われ」だなんて言われてなおさら驚く。
その後急に家に戻って来たネッパーの一言に、家族全員が驚いた。


「俺、大学行く事にした」


ボニトナはネッパーの心変わりを「自分がやかましいから仕方なく折れたのでは」と考えしばらく頷かなかった。
そりゃあそうだ。ネッパーは普段適当にいろんな事をこなしているけど、こうと決めたことには頑固だ。
確かにずいぶんと日はすぎたけども、こんなにあっさりと意見を変える事が信じられないのは自分も同じだった。
行きたい大学を聞いたら、文系の学科ばかりがある大学名を口にする。
今までそんな大学の名前、口に出した事も気にかけた事もなかったのに。
一体家出して、何がネッパーをそんなにも突き動かしているのかがわからない。
家出先の情報を俺にさえも言わなかった彼は、頑にその大学への進学を許してもらえない限り動かない。と言いはった。
志望動機を聞いても詳しいことは何も言わない。これじゃあ前に喧嘩したときと二の舞で。
やっぱりボニトナと大討論。二人とも最後には完全な怒鳴り合いになっていた。
俺たち家族は見守る事しか出来なくて。サトスなんかは胃痛が悪化して最終的には寝室に駆け込んでしまった。
でも、最終的にはボニトナが折れた。理由は、これまで考えもしなかったこと。
口論も激化して来た時。ボニトナに「適当な気持ちで大学選ぶんじゃないの!」と叱咤された時。
ネッパーが、普段の様子からは信じられないほど鋭い目をして、吠えた。


「五月蝿ェ!!適当な考えだったら手前とこんな口論するためだけに戻ってくるかよ!!
 俺は手前の反対押し切ってでも自分の考え貫き通すために戻って来てんだよ!!」


信じられなかった。
ネッパーがここまで必死になるのもだけど、
ちゃんといろんな物見据えて、自分の考えを守り通す彼を、初めて見た。
ネッパーは自分が興味を持った事以外には酷く消極的だ。
無難にこなして、無難にやりすごす。本気を出せばなんでもできるのに。
本気を出した事なんて、ただの一度もなかった。
なのに、そのネッパーが必死になってる。本気になってる。
それだけで、ボニトナが反対する理由なんて見つからなくて。
睨みつけてくるネッパーの暗い瞳を見据えた後、諦めたようにため息をついた。

「じゃあ、死ぬ気で頑張りなさいよ?」

顔は呆れてたけど、言葉尻に嬉しそうな響きが滲んでいたのを覚えてる。














「よかったぁ…本当に良かった…!!」
「何だようるせぇな」
「だって、このままネッパー戻ってこないと思ってたんだよ?」
「そりゃどうも」
「ああー!本当なんだからな!皆心配してたんだよ!」
「はいはい」

部屋に戻ってから、学校が冬休みに入って以来音沙汰のなかった家族との再会に心から喜ぶ。
そんなヒートを大げさだと言わんばかりに軽くあしらうネッパーに、ヒートは口を尖らせた。

「でも、驚いたよ。ネッパーがまさかあんなに真剣に大学進学考えるなんて」
「まあ、な。俺も驚いてる」
「何それ?」
「………なんだろうなぁ」

バスン、とベッドへ背中から倒れ込むネッパーを視線で追う。
その体勢のまま、ポケットから携帯を取り出し、画面を眺める。
何をしているのだろう。と首を傾げているとしばらくの間の後、ネッパーは携帯を閉じてベッドの端に放り投げた。
カチャン。と携帯とストラップのぶつかる音が辺りに響く。

「そういえば、家出先の人にお礼言った?」

ヒートからすれば、ふと思った事を口にしただけ。
だが、ネッパーはヒートの質問に、すぐに答える事はしなかった。

「…何も、言ってねぇ」
「えぇ!?黙って出て来たの!?」
「……………まあな」
「駄目だよ!!お礼はちゃんといわないと!それにその人もいきなりいなくなったら心配するよ!」
「…もう、だらしねぇ姿、見られたくねーんだよ」

ネッパーの言葉は、予想以上に重かった。
真剣な顔をして寝転がるネッパーに、ヒートは口を噤む。
以前話した時、ネッパーは凄く嬉しそうにその人について話していた。


「ネッパー、その人の事、凄く好きなんだと思ってた」


こぼした言葉が、重い沈黙を一瞬霧散させた。
目元を腕で覆い隠して、ネッパーはその言葉を静かに受け取る。
沈黙は長く、重苦しく、酷く静かだった。
だからこそ、はっきり聞こえた。僅かに囁いたネッパーの言葉を。


「……ああ、好きだ」


その最初の一声は酷く小さかった。
だが、一度吐き出したことによって、何かがネッパーの中で切れた。

「好きだ。どうしようもなく好きだ。あそこにいたときなんか落ち着いたしあいつが誰かからなんか貰ったときとかなんでかすげぇ腹立った。いつまでも一緒にいていつまでも笑ってていつまでもあそこにいたかった」

あふれる言葉は、まるで本人には伝えられなかった分を吐き出すように止まらない。
ネッパーの心情の吐露に、ヒートは静かに耳を傾ける。


「だから、好きだと思った瞬間、ろくでもねぇ自分を殴り飛ばしたくなった」


こんなに力なく話すネッパーを、見た事がなかった。
泣きそうだ。と思った。

「………よかった」
「…何が」
「そう、ネッパーに思わせるような人が、ネッパーのそばにいてくれて」

何事にも無関心。無頓着。
世の中を全部斜めに見るような性格で、出会ったときから底のない暗い瞳をぎらつかせていた。
今の家族が出来上がってから、随分明るくなったと思うけれども性格は変わらなくて。
だからこそ、ヒートはずっと不安だった。
悪い奴じゃないのに、こんな性格だから損をする事の方が多い。でも、それにさえも無関心。
だけど、そんなネッパーが今、人のために、自分のために変わろうとしている。
前を見ようとしている。何かに興味を持とうとしている。
それが、純粋にたまらなく嬉しかった。

「大丈夫だよ。今のネッパー、凄く格好いいから」
「…………」
「大丈夫」

だから、また会いにいきなよ。やっと見つけた大事な人に。
ヒートの言葉に、ネッパーはがばりと起き上がる。見れば、酷く驚いた顔。
何となくヒートは察していた。
ネッパーは自分が自分に納得できるようになるまでその人に会わないつもりだ。と。
本当は、今すぐにでも会いたいくせに。いつまでもそこにいたいくせに。我慢してる。
だけど、それは悲しすぎるんじゃないかな?
それは、ネッパーにとって、酷く苦しい事なんじゃないかな?
前を見るのは誰だって怖いんだから、それに向き合えた彼は、もうすでに、十分立派なんじゃないだろうか。

「ネッパーは、自分が思ってるよりどうしようもなくなんてないよ」
「………」
「だからさ、会いに行きなよ。ネッパー我慢するの得意じゃないくせに」

好きは好き。嫌いは嫌い。
誰よりもはっきりしてて、遠慮がないのが彼の欠点であり長所。
変なところでかしこまらなくて、良いと思うのに。
茶化すようにヒートが笑えば、ネッパーは珍しく困ったように笑っていた。
どこか、照れくさそうに。

「…………んなもん、俺が一番よく知ってらぁ」
「うん。そうだね」



そうだ。皆、幸せになればいいんだ。











「ところでどんな人なの?」
「教えねー」
「ええー!教えてよ!今度会ってお礼言わないと!」
「お前は俺の保護者か」
「家族だよ」
「駄目だ」
「なんで!」

「惚れられたら、困るだろ?」

詰め寄るヒートに、ネッパーはニィ。といつも通りに笑う。
一瞬惚けてしまったが、楽しそうなネッパーに思わず笑みを浮かべる。
一切家出先の家主の情報を得ていないヒートは、よもやその人が男であるなど念頭にないだろう。

「そんなにいい人なの?」
「年上だけどな。可愛いもんだ」
「へえ。年上かぁ。大学生?」
「おう」
「あ、じゃあさっき言ってた大学、その人の大学とか?」
「まあな」
「結構惚れ込んでるねぇ」
「病気だな」

カラカラと楽しそうに笑うネッパーの表情を、久しぶりに見た気がする。
きっと、本当にいい人なんだ。すごく、すごく。
思わず、ヒートは幸せそうに笑った。

「で、そんなに好きなら告白とかしたの?」
「いや、まだ」

ネッパーならば早々に告白しそうなものを。と思い聞いたのだが、
予想外の返事でヒートは驚きの声を上げる。
なんで。と詰め寄れば、ネッパーはにやりと笑う。
ああ。いつも通りの彼だ。再度安心する。




「告白は、合格通知片手にって決めてんだよ!」





うん。ネッパーは、こうでないと。





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こういう経緯の後、「ろくでなしの歌9」に至る、と。
…8.5くらいで間に入れても良かっただろうか。



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