ろくでなしの歌 9 [パーベル学パロ]


パーベル学パロその9!
一応ここで完結。という形になります。
ですが見事にまとめきれなかったので(爆)番外編を2つほど後に上げると思いますー…
それで本当の完結…ということでひとつ^q^


まあ、終わる前にグダグダ言っても仕方がない!!
ひとまず続きからどうぞ!!












2日、3日経っても、ネッパーは姿を現さなかった。
誰にも口外していない分、下手に彼の家に連絡をとる事もできない。
唯一この事を知っているクララも、ネッパーの行方までは知らないだろう。
全く消息が掴めない。
携帯で連絡を入れても、誰も出ない。
メールを入れても応答無し。




年が明けてから、完全にネッパーはベルガの前から姿を消した。










(……元に、戻っただけだろう)

たった1人の部屋の中で、1人真っ白なレポート用紙と向き合う。
大学も既に始まった。始まればもう期末テストはすぐそこだから、考え事等している暇なんてないはずなのに。
不意に、弾かれたように周りを見回すときがある。
それはネッパーが転がり込むよりも以前と同じ室内。
そのはずなのに、違和感が拭いきれない。
いたのだ。ここに。彼が。
1人じゃないこの部屋を、この空間を、知ってしまった。


(…戻っただけなのに、なんで、こんなに寂しい)


目の前の白紙と向き合う気になれず、思わずそこに寝転がる。
無機質な天井が、ベルガを無言で見下ろしていた。
こんなにも彼の事を気にかけるのは、きっと心配だからだろうと最初は思っていた。
だが、心配だけなら、こんなに寂しいとは、思わないはずだ。
こつ然と消えた彼は、何が不満でここを飛び出したのだろう。
そんな事ばかり考える。
ああ、このレポートは、明後日提出なんだがな。
レポートの内容なんて欠片も思い浮かばないのに、嫌なことばかり思い浮かぶ。
フロストに言われた「お前は、甘い」という言葉。
甘すぎたのだろうか。
家出はしなかったが、就職か進学か。で迷った時期は自分にもあった。
だからこそ、彼にはじっくり考えて、後で後悔しない道を選んでほしかった。
猶予期間をたくさん与えた。だが、飽和した時間は人の思考を先延ばしにしていく。
だから、なのだろうか。ここにいては考えはまとまらないとでも思われたのか。
だとしたら、自分は馬鹿だ。彼の気持ちを少しでも理解しているつもりで、理解できていなかった。

「………………不甲斐ない、な」

力になれなかっただろうか。
年上など、年下からすれば頼りになるからこそ価値があるのではないか。
頼りにならない、年上など。



………嫌われた、だろうか。




ふ、と。寝ようと思った。
いつまでもここでこうしていても嫌な事しか思い浮かばない。
だったら寝てしまおう。と布団に潜り込む。
これは立派な逃避だ。知っていて、分かっていて目を瞑った。
明後日提出のレポートでさえ、白紙のままで。











忘れよう。

見いだした解決法はあまり頭のいいものではなかった。
彼がいなくなった事で、自分と彼は「他人」になった。
だとしたら、忘れてしまえば良い。悩まなくてすむだろう。
自分にはやることがある。やらなければならないことがある。考えないといけない事もある。
だから悩まなくて良い事をいつまでも頭に残しておけるほど、暇ではない。
関係がないのだ。もう。
彼は自分でここを出て行った。だとしたら、自分に彼を追いかける権利はない。彼の居場所は彼自身が決める。
だから、忘れようと思った。
そうしなければ、何かに押しつぶされて死んでしまいそうだった。
気づいてしまった。そう、気づいたんだ。
心配だけだったのに、心配だけだと思っていたのに。



ああ。そうだ。

きっと、私は、彼を、





























暦の上では立春だというのに、風が冷たい季節。
バイトを終えて、買い物袋をぶら下げた状態でベルガは帰路についた。
テスト週間に入ったおかげで、授業はテストがある授業と補講のみ。
学校にいる時間は短くなったが、バイトにテスト週間などあるわけもなく、帰宅は日がすっかり暮れた後だ。
帰ったところで別段何もないので、困る事はない。

そう、何も。

ようやくアパートまでたどり着き、部屋の数だけある郵便受けを漁る。
階段の下に各部屋番号の表記された郵便受け。郵便物は大体ここに全部ねじ込まれる。
大抵は何かの広告や勧誘などが書かれた紙ばかりが入っている。
数枚紙切れが入っていたので、まとめてつかみ出し、確認しながら階段を上る。
カンカンと安っぽい音を響かせながら一枚一枚に目を通す。
半分以上は広告だ。確認するのをやめようと思った時、ふと広告にまぎれて一枚の茶封筒が入っている事に気がついた。
表と裏を確認しても、差出人も何も書かれていない。切手も貼ってない事から直接入れられた物だろうと理解する。
自分がいない間に来た誰かが書き置きでも残していったのか。と思い、ベルガは足を止める事なく、封のされていないそれから一枚の紙切れを引っ張りだした。
中に入っていたのは、自分とは無縁の物。
だが、そこに書かれた文字の羅列に、ベルガは驚きで言葉を失った。


入っていたのは、「進路希望調査票」

お世辞にも上手いとは言えない文字で書かれた名前。




数ヶ月前まで、自分の部屋に居座っていたその人の、名前。










「…アンタ、いっつも帰るの遅ぇんだよ」








紙面に見入り、遅くなっていた歩みが完全に止まる。
数ヶ月前までよく聞いた、その声。
弾かれたように顔を上げると、そこにはいつかのように自分の部屋の前にしゃがみ込む、ネッパーの姿。
忘れようと、あんなに必死になったのに、覚えていた。

「…なん、で」
「アンタ、それちゃんと読んだ?」

白い息を吐きながら、ニィと笑う。
示されて、初めて彼の名前から先に目を通す。
書かれていた内容は、酷く簡素だった。
だが、ベルガに驚きを与えるには、十分な内容。


ぶっきらぼうに丸で囲まれた「進学」の文字。



そして、希望大学名は、ベルガが通う大学と、同じ、名前。







「ボニトナと散々喧嘩してよぉ。アンタは文系得意じゃないのになんで文系に行きたいの!とかなんとか。とりあえずそれで頷かねーならニートになるとか言ったらやっと折れた」

カラカラと笑いながらネッパーから言われる言葉を、ベルガは上手く飲み込めない。
急展開についていけず、惚けているベルガを、ネッパーが見据えた。
暗い瞳が、真剣な光を帯びる。
最初に見たそれとは違う、本当に真剣な、その目。

「俺、もう逃げねーから」

呟かれた言葉には、力があった。

「アンタに頼ってばっかじゃ情けねぇだろ?
 アンタに頼った分、頼れるような奴になれたら、って」

だから、前を見ようと思った。
幾重にも巻かれたマフラーの下で笑うネッパーはいつも通りで。
まるで、彼が突然いなくなった空白など、とるに足らないとでも言いたげに。
何故、だとか。どうして、だとか。言いたい事や聞きたい事は山のようにあった。
だが、口を開こうとするベルガの口元に、ネッパーは人差し指を立てる。
何も言うな。と言わんばかりに。

「で、勉強しようと思っても家じゃ五月蝿くってよ。だから……まあ。なんだ」

途中でどもるネッパーに、惚けたままだったベルガがゆっくりと事態を飲み込み始める。
つまり、いきなりいなくなったのはボニトナと話を付けるために帰宅していたから。
そして、今ここにいるのは、彼の家が勉強に適した環境ではないから。

「…とにかく、寒ィんだよ」

なにが不満なのか、口を尖らせ呟く姿に、思わず笑みを浮かべる。
また、いたいというなら、そう素直に言えば良いのに。と。

「じゃあ、上がっていくか?」
「おう」

問えば、間髪入れずに返事が返ってくる。
数ヶ月前まで遠慮なんかなかったくせに、一体どこでそんな殊勝なことを覚えて来たのだか。
それに、合鍵だって未だに持ったままだろう。
数ヶ月見ない間に、何故だか彼が随分変わったように見えた。
忘れようと努力していた自分をあざ笑うように何事もなく現れた彼に、喜びばかりが募っていく。
玄関の鍵を開ければ、ガチャリと小気味いい音が響いた。
そのままドアノブをひねり、扉を開ければ先ほどの遠慮はどこへ行ったのか、家主よりも先に部屋の中へと上がり込む。

「…おかえり」

ベルガの口をついて出た言葉。
それに驚いたように振り返り、ネッパーは一時の間を置いて、ニィと笑った。

「ただいま」

数ヶ月前まで自然に行っていたやり取り。
思えば帰るのはいつでもベルガの方が遅かったから今回のこれは何故か新鮮だった。
まるで、昨日までここにいたかのように。いなかった時間などなかったかのように。
気づけば当たり前になっていた年下の彼の存在。
ふ、と。気づけば強く握りしめてしまっていたネッパーの進路希望調査票を慌てて皺を伸ばすように広げる。
同じ大学名。彼はどちらかというと理系の方が得意なはずなのに。

「そういえば、なんでウチの学校なんだ?
 お前、この前私のレポートを見て顔をしかめていただろう」
「ああ」

気になった事を素直に口に出してみる。
対するネッパーはあっけらかんとしたもので。
いつものように、ニヤリと口角をつり上げた。




「アンタと、少しでも長くいたいと思ってよ」





やればできるんだよ。俺だって。なんて。
苦笑と共に溢れたため息は、冬だというのに熱かった。




END
         next:ろくでなし賛歌 side:P





***************************
大筋は完結でございます!!
くっついてんだかくっついてないんだかわかんねーなこれ…(爆)
書きたくても文の長さ的に入りきらなかったり、説明不足だったりする部分がある気がしたので番外編まで延長です(笑)
よければもうしばらくおつきあいくださいませ^^*

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。