ろくでなしの歌 8 [パーベル学パロ]


パーベル学パロその8!久々の続きです…。
ぶっちゃけ少しだけ煮詰まってました(笑)
そして勢いで9まで書いたところで綺麗にまとまらないことに気づく。
…………すみません。番外編として多分11,12くらいまで延長します(爆死)
もうしばしおつきあいくださいませ^^;




では、続きからどうぞー。今回もやたらと長いよ!











「今年も終わりかぁ…」
「あ、俺プロレス見るから8チャンに変えて」
「はぁ!?年末に紅白見ないとか馬鹿じゃないの!?」
「好きな歌手でないから興味ない」
「あたしとクララが好きなグループが出るんだから!!」
「ブロウやめとけー。クララとアイシー相手じゃ勝ち目ないぞー」
「あ!ドロル!お前もプロレスみたいよな!」
「……………え?」
「ちょっとー。少しは手伝いなさいよー」
「そういや0時になると携帯回線混雑するから嫌なのよねぇ」
「あけおめメールでしょ?年賀状出せば良いのにねー」
「ほんとだわ。私があけおめメール送れないじゃない」
「だーかーらー!!お蕎麦運ぶの手伝いなさいってばー!!」

ぐるりとこたつを囲い込み、思い思いの事を話す面々。
リオーネが盆の上に年越し蕎麦を乗せて忙しなく台所とリビングを行ったり来たりするも、誰も手伝おうとしない。
顔も個性もバラバラのこの家族ならば、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。
むしろリオーネの声が聞こえているかどうかも怪しいところである。

「あ。ごめんリオーネ。手伝おうか?」
「ありがとうドロル。机拭いといてもらえるかしら?」
「…皆が物退けてくれたら頑張ってみるよ」
「コラ!お前ら机の上片付けろ!!」
「ゴッカが怒ったー!」
「ってかガゼルは?」
「ああ。こたつの中」
「寒いからって頭まで潜ってる」
「…皆が足突っ込んでるのに…!?」
「危ないから引っ張りだしなさい!!」

ゴッカの一喝によってわらわらと行動を始める皆を見て、リオーネはため息をつく。
10人近い人数が動けば机の上を片付ける等あっという間で、
リオーネとゴッカが11人分の蕎麦を運んで来てしまえば年越しの準備はもう完璧である。

「ベルガー!早くおいでよ!蕎麦伸びちゃうよー?」
「片付けが終わったら行く」
「後にしなさいって!」
「紅白始まったわよー」
「ああーッ!!いつの間に!!」
「チャンネルを確保しておかなかった自分を呪いなさい」

クララが得意げにチャンネルをちらつかせたあたりで、ようやくベルガが台所から姿を現す。
全員がこたつに足を入れると、さすがに窮屈だが寒さには変えられない。
肩と肩を寄せ合うように全員でこたつを囲んで、箸を持つ。

「じゃあ、食べましょうか」
「いただきまーす!」
「あー…なんかベルガの料理久々ー」
「リオーネのご飯もおいしいんだけどね」
「ありがと。ドロル」
「でも相変わらず味薄いなぁー」
「アイキューは濃い味が好きなんだってー。醤油でも入れてあげたら?」
「オッケー」
「あぁああああ!!?蕎麦にそんな大量の醤油注ぎ込まなくてもっていうか高血圧で死ぬ!!俺死んじゃう!!勘弁してくださいクララ様!!」
「すごいな。それ。蕎麦が見えん」
「………交換してあげようか。フロスト」
「生憎俺は薄味派だ」
「喧嘩せずに食べろよ…お前ら…」

久々に聞く家族の喧噪に、ベルガは思わず微笑む。
自分が高校生の時はリオーネやゴッカ、バレンと当番制を組んで食事を作っていた。
他の連中に頼んだときもあったが、そう言うときは決まって店屋物になっていたのが事実だ。
そのため、結果として料理がうまいこの4人が食事当番となった。
自分が自立した今では、作り手は減ったものの、きちんと当番制は機能しているようで安心した。
家族、といっても全員が同じ親を持っている訳ではない。
アイキューとアイシー以外は全くの他人だが、皆そんなことは気にしていない。
むしろそこらの家庭以上に深い絆で結ばれているつもりだ。
そんな家族が大好きであったし、嫌だと思った事もなかった。
この場所が、ベルガは好きだった。
だがしかし、脳裏をかすめるのは自分のアパートの部屋に置いて来た1人の居候のことばかり。
きちんと食べているだろうか。風邪などひいていないだろうか。
たった数日のはずなのに、心配で仕方がない。

「…ベルガ、エビ天食べないの?」
「………え?」

物思いに耽っていると、不意に袖をひっぱられる。
アイシーに言われてみて見れば、確かにそばの汁の中で、エビ天の衣がへたっていた。

「食べないならちょうだい!」
「ああ。食べたいなら食べるといい」

無邪気にやったぁ!と喜ばれ、ベルガは思わず苦笑する。
自分のどんぶりを差し出せば、エビ天はアイシーのどんぶりへとひょいとさらわれて行った。

「ああー!アイシーずるい!」
「ベルガが良いって言ったんだから文句ないでしょー!」
「ベルガもアイシーの事甘やかさないの!そうしてたら全部持って行かれちゃうよ!」
「分かった分かった」

バレンがアイシーとエビの取り合いをしているのを眺めながら、自分の蕎麦をすする。
全部持って行かれちゃう、か。
確か前にネッパーにも似たような事を言われた気がする。
お人好しすぎるから、誰かに騙されてしまう。と。
彼は優しいだのお人好しだのと言ってくるが、そうではない。
自分は、彼にアドバイスをしてやれるほど、立派ではないのだ。
自分も家族にあまり金銭面のゆとりがないことを知っていながら、大学に進学した。
周りは「ベルガの生きたいように生きれば良い」と言ってくれたが、
今でもたまに後悔する。ゴッカのように職に就いて資金援助しておけば。と。
だからこそ、ネッパーに何も言えなかった。
自分と似たような家庭で暮らす彼に、自分と同じこの葛藤を味わってほしくない。
就職も、進学も、どちらも厳しい自分たちの立場。
ゆっくりと考えてほしかった。後悔しないように、ゆっくりと。
最初はそれだけの思いだったのだ。彼をあの部屋に置いた理由は。











彼らの家はさほど広くない。
男と女で単純に部屋割されて設けられた自室で、ベルガは携帯の画面をじっと眺めていた。
あの日以来、ネッパーからはなんの音沙汰もない。
それはつまり何も困る事なく無事に生活できているという証拠でもある。
だが、何故だかそれを「寂しい」と感じるようになっていた。
眺めていても何にも変わりはしない待ち受け画面も見飽きて、携帯を閉じる。
その反動で携帯ストラップがぎこちなく揺れた。
一つは以前クララに貰ったもの。帰省した時、アイシーに嬉しそうに「皆お揃いね!!」と見せられたのを覚えている。
確かに、皆の携帯を見てみれば同じものが付いていて、なんだか嬉しくなった。
そして、もう一つは帰省する前にネッパーに押し付けられるように渡されたもの。
何度も念を押されるようにつけろといわれ、帰りの電車の中でしっかりとつけさせてもらった。
よくよく見てみれば、何となくネッパーの携帯にも同じものが付いていたような気がする。
と、なると彼ともお揃いか。と不意に思い、笑みがこぼれた。


(……私は、何を、考えているんだろう)


先ほどからネッパーのことばかり気にかけている。
確かに家事などさっぱり出来ない彼を1人にして心配するのは理解できるが、
ストラップの件はどうかんがえてもおかしいだろう。
ベッドに腰掛けて、1人頭を抱えていると、不意にノック音が響いた。
扉は開けっ放しのはずだったが、と思い顔を上げると、開けられたままの入り口にフロストが立ってこちらを見ていた。

「…フロスト」
「風呂、開いたぞ」
「あ、ああ。すまない」

もうそんな時間か。と思いベルガは腰を上げる。
気づけば随分長い間考え事をしていたらしい。

「何かあったのか?」

フロストの言葉に部屋を出ようとしたベルガの足が止まる。
ネッパーの事は家族といえども口外することは出来ない。
どういった経緯で彼の家の者へ漏れるか分からないからだ。
そのため、ベルガはなんと言っていいのか分からず、曖昧な笑みを浮かべる。
それだけで、フロストは諦めたようにため息をついた。
長い付き合いだ。表情だけでどんなことを思っているのかくらい、よくわかる。

「…まあ、言いたくないなら言わなくても良いが」
「すまないな」
「あまり気負うんじゃないぞ」
「ああ」

あまり追求してこないことが逆に嬉しかった。
追求されれば、きっと家族に隠し事があることに心苦しさが増すに違いないから。
だからこそ、僅かに、ベルガの心情が漏れた。

「なあ。フロスト」
「なんだ」
「もし、自分の進路が決められなくて喧嘩して、家出した。という奴がお前のところに来たらどうする?」

誰、とは特定しなかった。
だが、自分1人で結論にたどり着く事が苦しくて、思わず問う。
すると、答えは想像していたよりも早く帰って来た。

「甘ったれるなと言ってぶん殴る」
「………お前らしい」

そしてその親に突き返すな。などと言いだす。
物騒にも聞こえるが、正論だ。本来ならばそうするべきなんだ。
そうする、べきなのに。

「お前はどうせ、かくまってやるんだろう?」

ベルガの状況を見透かしたかのように呟かれると、何も返せない。
呆れたようなため息をつかれるのを見ながら、ベルガは苦笑した。

「やはり、私は甘いのだろうか」
「ああ。甘いな」

気にしている事を指摘される。分かってはいたが、改めて言われると案外こたえるものだ。
自分は彼を甘やかしているだけなのだろうか。
だとしたら、彼がなかなか答えを見つけられないのは、自分のせいなのか。
完全に言葉を発する事なく、入り口で立ち尽くすベルガを見て、フロストは言葉を続けた。
多分、一番言いたかった事を。




「だが、それがお前の良いところだ」



俺みたいに、厳しいだけじゃ心が折れる。
そう呟くフロストの方を見やれば、苦笑を浮かべていた。
たった一言だというのに、なんだか報われた気がして、ベルガは僅かに笑い、
ありがとう。と呟くと部屋を後にした。



「…まあ、そのお前の甘さにいつまでも甘えるような奴だったら、
 それこそ俺が殴り飛ばしてやりたいがな」


フロストの最後のぼやきを、聞く事もなく。
























1月3日。
予定より早かったが「バイトが朝早いから前日に戻る」と家族に告げて戻って来た。
それももちろん理由の一つだが、一番は居候の事。
結局一度も連絡がなかったネッパーがどうしようもなく心配になったのだ。
カン、カン、と安っぽい音を立てる階段をのぼり、自分の部屋のドアノブに手をかける。


回す。…が、開かない。


出かけているのだろうか?と思い、鍵を取り出して扉を開ける。
自分の家だというのに、その行為が酷く懐かしく感じた。

「ただいま」

返ってくる言葉はない。
開ければ中はがらんどうで、やはり誰もいない。
待っていれば帰ってくるだろうか。と思い荷物を下ろす。
酷く綺麗に片付けられたその部屋が、当たり前のはずなのにむなしく感じられた。








そして、結局。
ベルガが開けた後、一度もその扉は開かれることなく、



4日の朝を、迎えたのだった。







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「ろくでなしの歌」としては9で終わらせますが、補足、後日談としての番外編を2つほど追加する…かも。
この連載、ごくまれに反応いただけるので凄く嬉しいです^^*


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NO NAME

いつも更新楽しみにしています。
頑張ってください!
by NO NAME (2010-02-17 21:09) 

紅白黒

あ、ありがとうございますー!
励みになります…!!これからも頑張らせていただきますのでよろしくお願いいたしますね^^
by 紅白黒 (2010-02-18 01:22) 

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