ろくでなしの歌 6 [パーベル学パロ]

パーベル学パロその6!起承転結で言えば転あたりに突入気味。
なんか凄く気になるような終わり方させてた気がするので早めに上げに来ました。
のってきました。楽しいです。主に私が!(爆)



折りたたみからどうぞー。









状況を整理しよう。

まず、俺が家に帰ると最初から扉は開いていた。
そして、見慣れない靴が一足。
そして、リビングには……

「…なんで、アンタがここにいんのよ…!?」

一人の、セーラー服を着た、少女。




年齢はおそらく自分と同じ。もしくは下。
濃紺の髪は短く切りそろえられ、前髪の下から鋭い灰色の瞳がネッパーを睨みつけていた。
見た事がある。確か、見た事がある。
そう、あれは確かベルガと初めて顔を合わせたときと同じ頃。
名前は。

「………誰?」
「クララよ。アンタの家の隣に住んでる。ベルガと同じ家の!!」

語気がどんどん荒んでいくクララを見やりながら、ああ。と納得する。
たしかそんな奴がいた。だが、自分の記憶の中ではもう少し大人しい奴だったように記憶している。
そのことから、目の前の少女が怒っている。ということがよくわかった。

「…なんでいんの?」
「それはこっちの台詞。ここどこだと思ってるの?帰る家間違えてない?」
「ここベルガの家だろ。分かってんだよんなことは」
「じゃあなんでいるのよ?」
「家出してっから」
「…は?」

訳が分からない。と言いたげに眉根に皺を寄せるクララ。
ネッパーの家の者が事情を知っている事は当たり前だが、だからといってベルガの家の者が事情を知っているとは限らない。
だが、このクララの発言により,確信が持てた。
ベルガは、ネッパーが自分の家にいることを本当に誰にも告げていない。
それが無性にむず痒くて、思わずマフラーに口元を埋めた。

「で、なんでアンタ家出してベルガの家にいるのよ。アンタの家にも一人暮らしのやついるでしょ」
「こっちの方が都合よかったんだよ。ってか、お前どうやって入った」
「ベルガの家族なんだから合鍵くらいもらってても不思議じゃないでしょう?」

チャリ。と可愛らしいキーホルダーの付いた鍵を見せびらかす。
そりゃそうだ。とあっさり納得し、ネッパーは何も言わずに荷物を下ろすと腰を落ち着けた。

「じゃあ、数ヶ月前から居候してる俺が合鍵貰ってても不思議じゃねーよな」
「信じらんない!!アンタ、ベルガの人の良さにつけこんだんでしょ!!」
「あいつが人がいいのは認めるけどよ、そりゃ言い過ぎだ」

負けじとネッパー自身も何の飾り気もない鍵をクララに見せる。
徐々にヒステリックに声を荒げるクララを、ネッパーは綺麗に無視する。
相手にされなくなったのを見て、クララはギリ、と苛立たしげに表情を歪めると、
傍らにあった自分の鞄から雪の結晶を模したストラップの付いた携帯を取り出す。
嫌な、予感がした。

「…何してんだよ」
「レアンに連絡するのよ。『アンタの家の問題児がここにいるから回収しに来てちょうだい』って」
「…ッ!!ばかやろ…ッ!!」

クララの言葉にサッと青くなったネッパーは、なりふり構わずクララの携帯を奪い取ろうと手を伸ばす。
だが、寸でのところでかわされ、手の届かない位置に携帯は移動してしまう。

「寄越せッ!!!」
「何よ。ムキになって。そんなに自分の家が嫌な訳?」

噛み付くように吠えるネッパーの勢いに気圧される事なく、クララはせせら笑う。
ネッパーはギリリ、と奥歯を噛み締め、クララを射殺さんばかりに睨みつける。
違う。
家が嫌な訳ではない。




ただ、帰りたくないと、まだここにいたいと、思うだけ。





「うるせぇッ!!いいから寄越しやがれ!!」
「馬鹿じゃないの!?何が理由か知らないけど勝手に家出して転がり込んで、人に迷惑かけてるって思わない訳!?」
「手前には関係ねーだろ!!」
「関係あるわよ!!ベルガは大事な家族なんだから!!困らせたらアンタの事許さないからね!!」
「あいつはいていいっつったんだよ!!問題ねぇだろ!!」
「馬鹿じゃないの!?そんなのベルガの優しさに甘えてるだけじゃない!!一人でいたって路頭に迷うだけだから、ベルガに頼ってるんでしょ!?ベルガだってそうなることが分かってるから仕方なくアンタみたいな奴を置いてやってるだけに決まってるわ!!」
「違…」





「違わないわよ!アンタはね、ベルガに寄生してるだけの厄介者よ!!!」






吠えるように放たれたクララの言葉に、打ちのめされる。
あいつは優しかった。ずっと、最初から、ずっと。
自分は逃げてばかりで、先の事を見たくないだけで。
今に甘んじているだけ。その場しのぎで生きているだけ。
自分の事を何一つとして知らない奴に、そんなことを言われる筋合いはないと、
今までのネッパーなら反論できていただろう。
だが、今はぐうの音も出ない。
反論できない。




確かに、彼は優しかったから。








「ただいま」

がちゃり。と言う音と共に、もうすっかり聞き慣れた声にはっとする。
家主の帰宅に、その場の険悪な空気が一気に霧散した。
クララの表情が180度変わったからだ。

「おかえりなさい。ベルガ」
「…クララ?…ああ。玄関の靴が増えていると思ったら、来てたのか」
「今日、テスト期間で早めに授業が終わったのよ。だから久しぶりに顔見に来ようと思って」
「そうか。あらかじめ言ってくれればお前の分も晩飯作っておいたんだがな」
「気にしないで」
「そうもいかないだろ。今から何か作ろう」

先ほどとは打って変わってにこやかな笑みを浮かべるクララを、無意識のうちに睨みつけるネッパー。
その視線を、クララは無視したがその側にいたベルガが気づいてしまった。
そして、視線の意味をどう捕らえたのか「あ」という顔をした後、焦ったようにクララに視線を投げた。

「クララ。ネッパーのことは…」
「……いいわよ。ベルガがそう言うなら内緒にしてあげる」
「すまないな」

心底安心したような表情のベルガの横で、微笑むクララをネッパーは再び睨みつける。
この猫かぶりめ…。そんな言葉を口に出さないのはベルガに嫌われたくないから。

「…アンタ」
「?」
「今日、遅くなるんじゃ、なかったのかよ」
「ああ。バイトが予定より早く終わってな。早く帰って来れた」

クララを引き連れ台所へ向かうベルガに投げかけられるネッパーの言葉。
それに笑みを浮かべながら言葉を返すベルガの腕を、クララが引っ張る。
まるで、そっちではなくこちらを見ろと言わんばかりに。

「そうだ。今日はベルガに渡すものがあって来たのよ」
「渡すもの?」
「これ」

クララがポケットから取り出したのは、雪の結晶を模したストラップ。
先ほどの、彼女の携帯に付いていた物と同じ、物。

「アイシーとリオーネと一緒に遊びに行ったときに買って来たの。家族全員分あるのよ?」
「そうか。ありがとう」

微笑みながらそれを受け取るベルガに、クララも楽しそうに笑う。
その光景を目の当たりにして、ネッパーはそれから思わず目を背けた。
クララに言われた言葉、ヒートに言われた言葉。それらに関して、様々な思いが浮かんでは消える。
だが、今はそんなことよりもなによりも、


ただただ、目の前にある光景をおもしろくない、と。
そう感じる気持ちの方が、強かった。




*********************
サブタイトルをつけるならばクララ様襲来(笑)
クララはこの学パロ内ではネッパーより1つ下の設定です。つまり高1。ネッパーとは違う高校。
ネッパーが高2、ベルガが大学1、2年くらいでしょうか。正直ベルガが一番曖昧(ええ)


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