ろくでなしの歌 2 [パーベル学パロ]


昨日上げた学パロパーベルの続き。苦手な方はご注意を。
2まではできてるんですw切実に時間が欲しいよ!!









居候が出来てから早数日。
態度だけはやたらとでかい居候は、早くも家になじんでいた。

「腹減った」
「そうだな」
「腹減った」
「………このレポートが終わるまで待て」
「…腹減った」

ペンを走らせる音が響いていた場に、延々とそんなやり取りが続いて行く。
机の向かい側に座り、こちらを覗き見るように視線を上げるネッパーは、
もはや何度目かも分からない「腹減った」を再度呟いた。
ベルガが視線を上げればじっとこちらを見据える暗い瞳と視線がかち合う。
ついには大きくため息をはき、ベルガはペンを置いてしまった。

「……少し待っていろ」
「今日何?」
「材料がないからチャーハン」
「えー」
「文句があるなら食べるな」

立ち上がって台所へ向かうベルガを見やりながら、ネッパーはその場に寝転ぶ。
視線はベルガに向けたまま、なにをするわけでもなくただじっと手際よく料理して行く彼を眺め続けた。

「なあ。アンタってさ、お人好しっていわれねぇ?」
「なんでだ?」
「俺みたいなの、ずっと置いてるからさ」
「なんだ。追い出されたいのか」
「そうじゃねーよ」

意地の悪い事を言ってくるベルガに、拗ねたような声を上げる。
ネッパーは、この家に来た時からすぐに追い返されるだろうとある程度覚悟していた。
だが、いざ飛び込んでみると早くも数日間置いてもらえている。
普通、昔少しだけ近所付き合いで顔を知っているからと言ってここまで面倒を見るものだろうか。
自分が厄介者以外の何者でもない事はネッパー自身自覚している。
しかし,戻りたいとも思わない。自分の生き方は自分で決めたい。
ボニトナはきっと、自分の将来を案じて声を荒げたのだろう。それも理解している。
だけれども、自分は大学へなんぞ行きたくはないのだ。元々勉強は好きではない。
それに家にはヒートやバクレーなど、頭がいい奴などはいくらでもいる。
自分にそこまで期待する必要もないのだ。期待される必要さえも。
訳が分からなくなって、結局怒った勢いのまま、家を飛び出した。
あれからボニトナからの連絡は一度としてない。数回ヒートが心配してメールを寄越して来ただけだ。
そして、そのメールの内容を見る限り、ベルガがボニトナに告げ口した節もない。
つまり、それは落ち着くまでここにいてかまわないということなのだろうか?
初日以来こちらに何も聞いてこない家主の真意が分からず、ネッパーはただただその背中を見つめた。
口ぶりも淡々としている。態度もどこかしら冷たい。でも、嫌われている様子もない。
要するに、ネッパーは未だに目の前のベルガという男を理解しかねていた。

「アンタさ、俺がいて迷惑じゃねーの?」
「エンゲル係数が上がる事以外は迷惑ではない」
「エンゲル係数ってなんだよ」
「政治経済の教科書を見ろ」
「嫌だよ。俺勉強好きじゃねーし」
「だから大学にも行かないのか」

思わぬ方向から進路に関する質問が飛び出す。
妙に気まずくなって、ネッパーはごろりと寝返りを打った。
本当に、あの男が分からない。
目隠しのせいで表情が読み取れないため、それも考えを読めない事へ拍車をかけている。
エンゲル係数が何かは知らないが、とりあえず迷惑ではないらしい。
それだけ分かれば今は十分だった。何より、ややこしい事を考えたくない。
目を瞑った時、不意に鼻孔をくすぐるいい臭いがした。
ごろりと仰向けになれば、皿を2つ手にして、こちらを覗き込むベルガの姿。
できたぞ。と一言だけいい、視界から外れる。
その言葉と香りによって増した食欲に勝てず、ネッパーは考える事を放棄して勢いよく起き上がった。



「…毎回思うけどアンタ味付け薄くねぇ?」
「文句があるなら食べるな」
「いや、腹減ってるから食うけどよ」

かちゃかちゃと食器とスプーンのぶつかる音。
ベルガの作るものは、ネッパーの舌にとって毎回薄味に感じた。
それは果たして自分の家の料理の味が濃いからなのか、それとも本当に薄味なのか、それはよくわからない。

「でも俺、アンタの飯、嫌いじゃねーよ」

素直に思った事を口に出す。
味は薄いがマズくはない。むしろ薄味好みの人は美味いと感じるだろう。
ネッパー自身も味の濃さ以外に文句を言う気はさらさらなかった。
ふ、と相手の手の動きが止まっている事に気づき、ネッパーは視線を上げる。
そこには、珍しく惚けた顔をしたベルガの姿があった。
自分は何か変な事を言っただろうか?と頭をひねるが思い当たらない。
しばらくその顔をじっと見つめていたら、不意にベルガが笑った。
そう、笑ったのだ。

「…そうか」

今度はネッパーが惚けた顔をする番だった。
笑った理由は分かる。おそらく褒められて嬉しかったのだろう。
それくらいは分かる。だが、ネッパーは目の前の男が笑ったという事実に惚けているのだ。
今までネッパーがこの家に来てから、彼の呆れたような顔は散々見て来た。
だが、笑った顔を見たのは今が初めてなのではないだろうか。
人というのは不思議なもので、今まで無愛想だった人間が一回でも柔らかい表情を見せると、その人が悪い人間ではないと感じてしまう。
今まさに、ネッパーの中にあるベルガと言う人物のイメージが変わり始めていた。

「どうした?」
「いや、アンタの笑った顔初めて見た」
「…そうか…?私は今までそんなに無愛想だったか」
「さっきの見て俺がビックリする程度には」
「表情が読みにくいと言われた事は多々あるが…それは、すまなかったな」

再び笑う。今度は申し訳なさそうに。
ネッパーは完全に食べる手を止め、目の前の男を食い入るように見つめていた。
要するに、なんだ。
このベルガという人物は表面上で内面を推し量ろうとしても無理な人物だという事か。
言葉が冷めているように聞こえるのも、口調がくだけていないから。
無愛想に見えるのは、目隠しのせいでほとんど表情が読み取れないから。
上っ面だけで人は判断できない。というのはこのことか。
ネッパーは見られている事に気づき、食べないのか?と首を傾げる男に、
自分の好奇心のベクトルが向いている事を急速に自覚した。


「…俺、アンタの事誤解してたわ」


ニヤリと笑うと、訳が分からない。と言いたげに口を噤むベルガ。
そんな彼を見て色々な悩みに苛まれていた自分の中に、一つの楽しみが出来た事に歓喜する。



厄介者も、なかなかおもしろそうだ。



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一応「見た目はクール、ハートはホット(笑)」なベルガなんで(爆)

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