冬のある日 [エイリア]


タイトルセンスがないのはいつものこと!
今回はパーベル。まとめきれなかった。反省…orz








「アンタ、体温低いから冬場はあんまり引っ付きたくねーな」


そう、ネッパーに告げられたのは2日前。
グローブを外され、手を握られ、何かと思えばそんなこと。
はあ。そうか。などと曖昧な返事をこぼせば、そう。と短い返事。
そのまま1日2日と経ったのだが、今のところ1日1回は顔を出していたネッパーの訪問がぴたりとなくなっていた。

「…なあ。クララ」
「何?」
「私の手はそんなに冷たいのだろうか」

練習中に、近くにいたクララに問う。
何故いきなりそんな事を。とでも言いたげな顔をしていたが、
深くは追求せず、クララはずいと片腕を伸ばして来た。
手を貸せ。ということだろう。ベルガはグローブを脱いでクララの手に自分の手を重ねた。
じんわりとクララの手の暖かさを感じる。

「うん。冷たいわ」
「そうか」
「でも、冬だし仕方ないんじゃないの?」
「私の場合引っ付きたくないほど冷たいらしい」
「ふうん…」

何かを思案するような顔をしていたクララだったが、
何を思ったのかいきなりベルガに抱きついた。
身長差のせいでベルガの腹の辺りに顔を埋める形になるが、クララは気にしない。
力一杯ベルガを抱きしめ、しばらく経つとすぐに離れた。
突然の出来事に呆然としているベルガと対照的に、クララは涼しげだ。

「別に引っ付いてもそこまで冷たくないわよ?」
「…………そ、そうか…」

こともなげに言うクララに、ベルガは頷く事しか出来ない。
焦ったような表情を浮かべていたベルガを見やり、クララはふふんと鼻で笑う。
一体何がおかしいのだろう。

「そんな事言った奴は、多分子供体温なのね」
「…………そう、かもしれない」

ネッパーの手はいつでも暖かい。
自分の手が冷たいからか、それは嫌でも理解していた。
たまに座ってぼうっとしていると彼がいきなり背中にのしかかってくる事もあったが、
そのときも背中が随分と暖かかった気がする。

「だからベルガの体温が人並み以上に冷たく感じるのよ」

私は普通だからそこまでは思わないけども。と自分の手を見せ笑うクララ。
ベルガからしてみればクララの手も十分暖かかったのだが、きっとそれを言うと子供扱いされたと怒られそうなので言わない。
その場ではただ、なるほど。と頷くだけにとどめておいた。


そうこうしているうちに練習も終わり、解散となった。
しかしベルガはその後もクララと話し込んでいた分の練習の遅れを取り戻そうと一人グラウンドに残り練習を続け、
やっとベンチに腰を落ち着けたときには他のメンバーは全員帰った後だった。
時間ももう、夕暮れ時。
さすがに疲れて、ベンチに座ったままでぼうっとする。
手にはめたままだったキーパーグローブを脱ぎ、自分で自分の手に触れてみれば、
やんわり暖かいような気がした。運動した後だからだろうか。

(引っ付いても冷たくない体温とは、どれくらいだろうか)

ふ、と思い自分の手を見つめる。
クララの言う通り子供体温というのも一理あるかもしれない。
だが、彼自身極度の寒がりだ。きっとそれも自分の体温が嫌われた一つの要因だろう。
しかし考えたからといって体温は自分がどうにかしてなんとか出来るものではない。
彼が会いにこないのは寂しい気もするが、仕方がないか。とベルガが一人自己完結したときだった。


「よお」


声と共に、ずしりと背中にのしかかる重み。
少しの声とその重みしか感じていないのにベルガはそれが誰か分かり、やんわりと笑った。

「私には、引っ付きたくないんじゃなかったのか」

問えば、自分の頭上で「う。」と言葉に詰まる声。
頭の上に乗せられた顎が、彼が口を開く度にベルガの頭を押さえつけた。

「アンタに引っ付くと寒ぃのはホント。こっちの体温全部持ってかれそうだ」
「そうか」
「だけどなんつーんだろうな」

首を傾げる感覚がする。



「引っ付かねーと、心が寒ぃ」



一瞬何を言っているのか分からず、あっけにとられる。
しばらく黙っているとなんか言えよと目隠しの上から額を叩かれて、ようやく我に返った。

「……詩人のような事を言うな」
「やっと言った言葉がそれかよ」

ムードも何もねぇな。とカラカラ笑われる。
それからしばらくの間、会っていなかった日の分もと言わんばかりにネッパーはベルガを離そうとしなかった。




「…そういえば、練習終わりなんだが」
「知ってる」
「引っ付いてたら汗臭いだろう」
「………アンタ、ほんとムードもへったくれもねーよな」

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