だいすきだよ、苦しい位 [鬼受け]


久々に源鬼!!
平等に更新しないとなぁ。という気持ちはあるんですけど、ね!
タイトルの方は前回同様「偽笑ピエロ。」さんからいただきました。
『叶わぬ恋で10のお題』より。


シリアスめ。
時間軸的にはアニメのデスゾーン2習得後のいつか。くらいなノリで。






『お前はいつでも優しいから、つい我が儘を言ってしまうな』

そう、鬼道が苦笑しながら呟いたのはいつだっただろう。
鬼道によく思ってもらっている。と感じるのと同時に
彼に絶対的な信頼を置いてもらってる事を感じて、無性に嬉しかった。
我が儘なんて滅多に言わない鬼道がそんなことを言う。
自分は彼が今まで言って来た事を我が儘だと感じた事はないけれども。
ただただその時は照れくさくて、笑う鬼道の頭をわしわし撫でて、
ありがとうと返すのが精一杯だった。
そんな自分に対して、鬼道はやはりやんわりと笑い、呟くのだ。

『優しいお前が、俺は好きだ』


そして。






「源田。俺は雷門にいたい」




今、彼は俺に我が儘を言っていた。




「…どういう、ことだ?」
「俺は、帝国の皆ももちろん大事だ。またお前たちとプレーが出来て嬉しかった。
俺がお前たちの動きのパターンを覚えていられたことも嬉しかった。だけど、俺は、俺のサッカーがしたい。自分の個性を思い切り生かせるのは雷門な気がするんだ」

そう言い放つ鬼道の瞳は、見えないが真剣に真っすぐ源田を見据える。
源田は立ち尽くしたまま、無表情を貫き通す。
だが、心の奥底では驚愕で言葉が出ないほど混乱と焦燥に駆られていた。
鬼道が、帝国に戻ってこない。
それはつまり、同じチームとしてもう戦えないという事だ。
どの学校でサッカーをやるか。それは個人の問題だ。
鬼道が雷門でのびのびとサッカーが出来るというのなら、それに越した事はない。
むしろそうすべきなのだろう。彼自身が決めた事ならば、なおさら。
だが、それは偽善だ。自分の中の「良い顔をしたい」自分の考えだ。
本心は、今すぐにでも鬼道を抱きしめて、「行くな」と叫びたかった。
もう、十分鬼道がいない時間を過ごした。
もう、十分我慢した。
なのに、もう、お前の背中を守る事が出来ないなんて。
ぎり、と鬼道に見えないところで拳を握りしめる。
その行為をすること自体は簡単なのだ。
だが、できない。
昔、鬼道に言われた言葉が脳裏をよぎる。


『お前はいつでも優しいから、つい我が儘を言ってしまうな』


呪縛のようだった。
鬼道は別段そういう気持ちで言った訳ではないのだろう。
だが、その言葉が絡み付いて源田は自分の感情に流されることを許されない。
大好きだ。
大好きなんだ。彼が。


「…そうか…」
「…怒ってくれて構わない」
「怒る訳ないだろう。お前が決めた事だ。俺にとやかく言う筋合いはない」
「源田…」

不安げにこちらを見やる彼を、抱きしめたかった。
大好きだ。大好きなんだ。

だから。




「たまには、こっちにも顔出せよ」



お前が、「我が儘を聞いてくれる優しい俺」を好きだというのなら、

俺は、永遠にそうあり続けよう。



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