幸せになれる気がした [エイリア]


キューベル。
相変わらずシリアスです。アイシー加わればギャグにできるんだけどなぁ(笑)


あ!空パチありがとうございます!!
励みに頑張らせていただきますよ…!!








今まで、ずっと好きで勉強ばかりやってきた。
そのせいで頭ばかりがよくなって、歳の割に思慮深くなってしまった。
損か得かと聞かれたら、今なら損だと答えるだろう。
聡い自分の脳味噌は、いち早く自分たちがやっていることがどういう事なのか察してしまう。
そして、その、末路も。
この計画は多分成功しない。
いくら人の身体能力を極限まで引き上げる事ができたとしても、それは人の体に負担をかける。
脳が危険だと判断してそのギリギリのラインの力だけを発揮できるよう調整しているというのに。
その静止を聞かずにその先へ向かうのは、自分で自分を滅ぼしている以外のなにものでもない。
そんなこと、馬鹿げている。
いくら自分たちに身寄りがなくて、頼れるのはここにいる仲間と、義父さんしかいないとしても。
自分たちが壊れたら、なにも、ないじゃないか。


「………何を、してるんだろうな…」


自嘲気味に笑って、手の中にあるボールを見つめる。
そもそも、これで世界をどうにかできるわけがないのだ。
皆、何かに取り付かれているように一心不乱。
こういうときに、どうして自分は冷静なんだろう?
いっそ、皆のように義父さんのためにがむしゃらに頑張れたら良いのに。
頭を垂れて、考えれば考えるほど気分が沈んで行く。
手の中にあるボールを持っているのがなんだか嫌で、宙に放り、蹴り上げた。
綺麗な放物線を描いたボールは、無機質な堅い床に吸い込まれるように落ちて行く。
そう、落ちて行くんだ。
ゆっくりと重力に逆らわず落ちて行くボールを目で追う。
が、それは床に落ちることはなかった。
パシリ。という小気味良い音と共に、白いグローブに受け止められる。
それは、綺麗に。


「ベルガ…」

ボールを受け止め、手の上でポンポンと遊ばせる人物の名前を呼ぶ。
いつの間に、いたのだろう。

「いつからいたんだ?」
「ついさっきだ。ボールが飛んで来たから反射で受け止めた」

アイキューに歩み寄りながら手にしたボールを投げ渡す。
反射で受け止めたアイキューは、再び自分の手の中に戻って来たボールをただじっと見つめる。

「何かあったのか?」
「…何が?」
「いつも以上に難しい顔をしている」

いつも以上という事は普段から自分は難しい顔をしているのだろうか。
思わず自分の顔をいじるアイキューを見て、ベルガが笑う。
なんだか馬鹿にされたような気がして、思わずアイキューは眉根に皺を寄せた。

「そう怒るな」
「笑うベルガが悪い」
「悪いな」

だが、心配なのは本当だ。
そう続けるベルガが、また笑う。
今度は馬鹿にされている気はせず、素直にごめん。と謝罪の言葉が出た。
ベルガがこういうことで人をからかうような奴じゃない事くらい、知っていたのに。

「アイシーも心配してたぞ」
「え…!」
「妹の事に敏感なお前が気づいてないとはな」

なるべく周りにはこの計画について自分が何を考えているのか悟らせないようにしていたつもりだった。
だが、やはり兄妹だからだろうか。アイシーにはバレていたなんて。
ベルガの話を聞く限り、アイシーが兄が最近上の空で、たまに凄く辛そうな顔をしている。とベルガにこぼしたらしい。
ベルガもベルガで、アイキューの異変に気づいていたらしく、様子を見に来て今に至る…とのことだ。
何人にも心配をかけていたと思うと、アイキューはいたたまれない気分になった。
皆に心配をかけたい訳ではないのだ。皆には笑っていてほしい。

「ごめん。なんでもないんだ」
「…そうか」

ベルガは必要以上の追求をしてこない。
ただ、行き詰まった自分に対して、静かに逃げ道を開けてくれるだけ。
それがたまらなくてたまに泣きそうになる。
今でもベルガは、一言呟いたきり、アイキューの目の前で立ち尽くすだけだ。
そう、彼は昔から優しかった。

「なあ。ベルガ」
「?」
「俺たちは…何をしてるんだろうなぁ」

遠くを見つめながら呟く。
見てはいないが、きっとベルガは困ったような顔をしている。
困らせたい訳ではないが、彼ならば許してくれる気がした。

「ベルガは、昔みたいに戻りたいって、思わないのか?」
「…………」

何もなかった日。
皆でただ笑って遊んで過ごした日。
何も変わらなかったあの日。
聡い頭が導きだした現状の末路は、嫌がおうにでも昔を今まで以上に輝かしく見せた。
帰りたい。できることならあの日に。


「…なあ」
「……なんだ?」




「…………ここから、逃げようか」




天を仰いで、呟いた言葉に一体ベルガはどんな顔をしているのだろう。
こればかりは予想が出来なくて、視線をゆっくりとベルガに移す。
真っすぐ見つめたベルガは、今までで一番困ったような顔をしていた。
鼻から下しか見えないというのに、随分雄弁な口元だ。と思わずアイキューは笑った。

「…私は」
「うん?」
「私は、皆がいるここにいたい」

本心だろう。とすぐに理解した。
断られる事はなんとなく予想していたのに、何故だがフラれた気分だった。
なんだ。さっきのは自分なりの告白だったとでも言うのだろうか。俺は。

「…うん。冗談だよ」
「…………」

笑うアイキューに、ベルガは何か言いたげに口を開く。
だが、すこし背伸びをして、アイキューがその口元を人差し指で軽く去なす。
これ以上何か言われたら、泣き出しそうだった。


「俺も、どこにもいかないよ」


やんわりと笑う。


「俺は、ベルガと、アイシーがいるところに、いたいから」


例えそこが将来滅びる場所だとしても、
大好きな人といられるのなら、幸せだと思った。



*******************
アイキューとアイシーには仲のいい兄妹でいてほしいからか、
どうにもこうにもアイキューが「アイシーよりもベルガが好きだ!」と言いきってくれない。そのためいまいちカプに見えないのがうちの残念なキューベルです(爆)

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