呼吸を、していた [エイリア]


ベルガ×アイシー。的な。
どうやって略したらいいんでしょうね。ベルシー?なんか飴の名前みたいだ。

アニメはほんと、ジェミニとイプシロン保護したのはありがたいんだけど、
ダイヤモンドダストとプロミネンスも保護してほしかったなぁ…!!






皆は将来何になりたいのかな?

お義父さんが言った言葉に、皆口々に自分の将来の夢を叫ぶ。
競い合うように言う皆は笑顔で、それを聞いているお義父さんも本当に幸せそうだった。
皆が皆叫ぶものだから、瞳子お姉ちゃんが皆を一端落ち着かせて、一人一人順番に言うように。と言った。

「おれ、さっかーせんしゅ!」
「おれだって!」
「わたしはおはなやさんがいいなぁ」
「ぼく、せんせいになりたい!」
「ぼくははつめいか!」

それぞれが順番に将来の夢を言って、じゃあアイシーは?と自分の名前を呼ばれる。
そのときあたしは、笑顔ではっきり、こう言ったんだ。




「あたし、おにいちゃんのおよめさんになる!」




それが、幸せだったときの話。
















エイリアは敗北した。
星の使徒研究所も爆破された。
お義父さんも警察に連れて行かれた。
ジェネシスやジェミニストーム、イプシロンは警察に保護されたようだ。

何もなくなった。
なにもかも。

それを遠くから見ていたあたしたちは、ただただ呆然と、見ているしか出来なかった。
ああ。なにを、しているのだろう。
誰も何もしゃべらないで、ただただ、無言。
静寂の中で、樹海の上空を飛ぶ鳥たちの声だけが、響いた。


「…終わりだ」


呟いたのは、誰だっただろうか。


「俺たちはもう、なんでもないんだ」


誰かが呟いたその言葉に、それぞれ、思い思いの場所で俯く。
皆、いろんな事を考えている。今までの事とか、これからの事とか。
遠くに兄であるアイキューの姿が見えた。
だが、彼の陰鬱な表情を見て,声をかける気にはなれず、アイシーはその場から駆け出した。

自分もまた、少し、一人になりたかった。





樹海の中の、崖のような場所で一人足を宙に投げ出し、ぼうっとする。
一人になったはいいものの、いざ一人になると寂しさばかりがこみ上げる。
思わず泣きそうになって、うずくまったときだった。
不意に、後ろで足音がした気がして、振り返る。

「…ベルガ?」

名前を呼べば、少し微笑む。
ジェスチャーで、アイシーの隣を指差し、座って良いかと問う。
アイシーに拒む理由もなかったので静かに頷けばやはりまたやんわりと微笑んだ。
寂しさがこみ上げて来ていた今、隣に座るベルガが、とても頼もしく見えた。

「皆、不安なのね。お義父さんがいなくなったから、どうなるんだろうって」
「ああ」
「ベルガは不安じゃないの?」

自分たちは、ずっとお義父さんのために頑張って来た。
頑張って来た間、それ以外の全ての物を捨てた。
なくしたそれはあまりにも大きすぎて。
だが、そうしてまで頑張ってきたこと全てさえもなくなった今、なにがあるのだろう。
何も残って、いないのではないだろうか。
唯一残ったのは、同じく残された仲間と、人間離れした運動能力だけ。
…どうしろと、いうのだろう。

「これから、不安じゃないの?」

隣で,涼しい顔をしているベルガを真っすぐに見据える。もう、自分は涙目だ。
滲む視界でしっかりとベルガを捕らえれば、彼は困ったように笑っていた。
さっきからずっと、笑ってばっかりだ。彼は。

「不安でないというと、嘘になる」
「じゃあ、なんで笑っていられるの?」
「…全員が泣いたら、それこそ救いがなくなる」

だから。と、ベルガは笑った。
強いと思った。自分はどうしようもなくて泣いているのに。彼は笑っている。
たまらず泣きじゃくるアイシー。ぼろぼろと涙が止まらない。
声を押し殺すのに精一杯で、涙を拭うのに精一杯で。
泣きに泣くアイシーの頭に、ポン。と静かに大きな掌が乗せられた。
なだめるように慰めるように優しく頭を撫でる手の主は、やっぱり、困ったように笑っていた。

「こういうことは、本来アイキューがやるべきなんだろうな」

だけど、彼もいっぱいいっぱいなんだ。と、ベルガは呟く。
多分それは彼も一緒のはずなのに。

「だから、代わりが私で悪いが、勘弁してくれ」

ゆっくりと撫でられる頭から伝わるぬくもりが心地いい。
申し訳なさそうな顔をするベルガに、アイシーは思わず首を横に振った。
そんなアイシーの反応にやんわり笑うと、涙を流す間中ずっと彼女の頭を優しくなで続けてくれた。










「…これから、どうすればいいんだろ…」

落ち着いて来たアイシーが、ぽつりと呟く。
これから先、不安の方がなによりも多いのだ。
それを考えると、またしても涙が込み上げそうになる。

「なるようになるだろう」
「…簡単に言うのね」
「そう考える方が、ずっといい。先は長いんだからな」
「でも、何を目的にこれからを送ればいいのかが、わかんない…」

先は長い。先は長いけれど、世界が私たちを受け入れてくれるだろうか。
一時期は、宇宙人とまで騒がれ、世間に伝えられた私たちを。
未知の侵略者として、見られ続けた私たちを。
ふと、見上げた視線の先には、青い肌。
彼は、大丈夫なのだろうか。
不安げなアイシーの視線に気づいたのか、再びベルガがアイシーに視界を移す。
そして、言い聞かせるように大丈夫だ。と一言。





「アイシーは、兄貴のお嫁さんに、なるんだろう?」





それは、ずっと昔に自分が言った言葉。
それを、彼は覚えていた。ずっと、ずっと。
昔の、皆で笑っていた時期を思い出して、思わずアイシーは涙ぐむ。
皆と一緒に遊んで。
たまにリオーネと喧嘩して、仲直りして。
話して、笑って、遊んで。また笑って。
人だった。確かに私たちは人だった。
たまらなくなって、また涙があふれるのを抑えられなかった。
今度は声も押し殺さず、声を上げてわんわん泣いた。
そんなアイシーを見て、ベルガはまた困ったような笑顔を浮かべながら頭を撫でた。
変わっていなかった。
人よりも遥かに優れた能力を持っていても、容姿が変わっても。






今も昔も、私たちはどうしようもないくらい、ただの人間だった。




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