２３日の葛藤

今日から２６日にかけてクリスマス話でもそもそやって行こうと思います。
一発目はゼルデザ。


朝、早いから、明日の更新のための一土打ったら、寝る…。








今回は邪魔しないであげる。マキュアそこまで鬼畜じゃないもん。


そんな言葉をマキュアから唐突に言われ、２日後がクリスマスだと気がついた。
カレンダーなどそこまで見ないから、どうにもこうにもイベント事に疎くなってしまう。
彼女がいなければ、この１年に一度の大イベント、クリスマスというものを逃してしまうところだった。
ゼルは、どうにかしなければ。と頭の片隅で考えるも、
一体何をどうしたらいいのか。という案が全くもって浮かんでこない。
とりあえず、意中の人はすぐそこにいる。誘おうと思えば誘える。…勇気があれば。
しかし、なんと言って誘うのだ。

クリスマスにデートしませんか？………率直すぎて引かれそうだ。
２日後はクリスマスだそうです。………「そうか」と言われただけで話が終わりそうだ。
北海道に大きなツリーがあるそうですよ。………遠回しすぎるか。
２日後は誰かの誕生日だそうです。祝いましょう。………別にカトリックではない。
クリスマスに式をあげましょう。………血迷ったか。俺。

浮かんでは消える誘い文句に、ゼルはひとりぶつぶつと呟きながらデザームのいる部屋の前を行ったり来たりする。
自分の情けないが僅かしかない勇気を振り絞り、かつ、あの方に断られてもダメージをあまり受けないような誘い文句。
そんな、夢のような言葉を探しているから答えにたどり着かないのだろうか。
気持ちの焦りに応じて徐々に往復する足が速くなって行く。
ゼルがイライラと頭をかきむしり始めた時、唐突に、閉じたままだった部屋の扉が開いた。


「…何をしている？」
「………！？」


唐突すぎる意中の人の登場に、ゼルの思考が一気に混乱する。
ヤバい。まずい。とりあえずどうにかしなければ。
まずは部屋の前を不審者のごとくうろついていた事を謝るべきかそれとも先に誘い文句を言うべきかでもまてまだ何も考えてないだろう落ち着け俺どうするどうすればいいむしろどうしたいんだ俺！！

「でっ、デザーム様！」
「？」

声を張り上げ、しかも緊張で上ずる。情けない。
だか、呼ばれた本人はそう言った事は気にしていないのか首を傾げてゼルの次の言葉を待っていた。
今こそ，なけなしの勇気を奮うときだ。




「に、２５日は、一緒にいてもよろしいでしょうか！？」




混乱したゼルの頭がはじき出した、「なけなしの勇気を振り絞り」、「相手に断られてもダメージを受けない」誘い文句。
そしてなおかつ、相手に失礼のないようにとまで考えた結果、このような言葉が飛び出した。
言って終わった後に、ゼルは底辺まで落ち込む。
訳が分からない。いきなり一緒にいるとか。なんだそれ。大丈夫か俺。
おそるおそるデザームの顔を覗き見る。
その顔は、実に不思議そうにしていた。ああ。やはり、やってしまったか。
がくりとうなだれるゼルの頭に向けて、デザームから発せられた言葉は完全に予期せぬものだった。



「何を言っている？お前はいつも一緒にいるではないか」



ゼルの思考が停止する。
ゆっくりと顔を上げれば、やはり不思議そうな顔。

「２５日は何か用事でもあったのか？」
「…は？あ、いえ。何も」
「そうか。ならば問題ないはずだ」

うむ。と頷き、その場を去ろうとするデザームの背中を見ながら、ゼルは自分の混沌とした思考を整理して行く。
だが、あまりにもごちゃごちゃしすぎていた脳内は、それを整理する事を放棄した。
ただただ、純粋に、自分にとって重要なものだけを、拾い集める。
つまりは、あれだ。
あの方にとって自分がそばにいる事は日常的な事。
そして、２５日に一緒にいるということも承諾してもらえたという事。
ゼルにとって重要なのは、ただそれだけだった。
どうしようもない幸福感と気分の高揚を感じ、思わずデザームの元に駆け寄る。
自分の定位置である彼の横に。
一度震ってしまえば、なけなしの勇気も案外役に立つ。

「デザーム様！実は２５日はクリスマスなんですよ」
「クリスマス……？…そうか。そんな時期か」
「俺、ケーキ買ってきます。ガトーショコラとショートケーキでよろしいですね？」
「………うむ」

満足げに頷くデザームの少しだけ嬉しそうな顔をかいま見て、無性に嬉しくなる。
クリスマスはまだだが、当日が待ち遠しくてならなかった。




その後、クリスマスまでの２日間だけ、
カレンダーの前で頻繁にゼルが目撃されたという。