忘れていた初恋 [土受け]



久々な気がする一土(笑)
最近エイリアにかまけてばかりですみません。近々スカウトにも浮気します(え)







見た事ない場所、見た事ない人。
たくさんの人の中で、自分だけが何か違う気がした。
アメリカなんていうだだっ広い場所に来たのが嫌という訳ではないけれど、
一人は嫌だ。と一哉少年は本能的に思った。
校内をうろうろして、思わず泣き出しそうになった時、見つけたのだ。

自分と同じように不安げな顔の、くすんだ青い髪をした少年に。







「…俺、あのとき土門に会ってなかったら死んでたかも」

学校からの帰り道。
日が傾いて、空がオレンジ色に染まって行く時間帯に、並んで歩く。
思いのほか真面目な顔をして言う一之瀬に、土門は思わず吹き出した。

「大げさだなぁ」
「土門だってあの時俺と同じ顔してたくせに」
「ま、不安じゃなかったって言ったら嘘になるけどな」
「不安で人って死ねるんだよ」
「んな馬鹿な」

俺、あのとき確信した。
自信を持った顔で言われるものだから、土門はそれ以上反論できなかった。
お互いがお互い不安だったのは確か。
実際、土門も一之瀬に声をかけられていなかったらその先どうなっていた事か。
英語で話す連中ばかりの中に響いた懐かしい母国語は、
お互いを励ますようで、今でも耳に残っている。

『ね、日本人でしょ?おれ、かずや!いちのせかずや!よろしく!』
『よ、よろしく』
『なまえは?』
『あすか。…どもんあすか!』

その後は2人で校内をぐるぐる回って、秋と西垣を発見した。
4人も同じ国の人がいれば安心するのは当たり前で、
それからの学校生活は非常に円滑に進んで行ったのだった。
2人とも同じ事を考えていたのか、懐かしむように笑う。

「土門はすっかり大きくなったなぁ」
「お前は俺のなんなんだ」
「親友だよ」

昔は自分と同じ目線の高さだったのに、今では一之瀬が土門を見上げている。
一体何を食べたらそんなに大きくなるのだ。と聞いたのは再会して少しした時。
昔自分に安堵を与えてくれた青い髪は、今では首をあげないと見られない。
だけれども、隣にいるのは確かに土門で。
そう考えるだけで安心できるのは、きっと隣にいるのが土門だからだ。
よくわからない確信を得ると、ふと。昔の思い出がどんどんよみがえって来た。
よっ。と歩道と車道を区切る段差に飛び乗る。そんなに高くないから、バランスは取りやすい。
所々自転車や歩行者が道路を通るためなのか、段差は切れては続き、切れては続いていた。
それを、一之瀬は飛び石の上を跳ねるように、歩く。

「アメリカで初めて安心させてくれたのが土門で、」

一つ、切れ目を飛び越える。
土門が隣で「危ないぞ」なんて言ってる。

「あっちでサッカーチームに入る時真っ先に誘ったのが土門で、」

二つ、切れ目を飛び越える。
土門は注意するのを止めたらしい。

「俺が死んだって聞いた時、泣いてくれたのも土門で、」

三つ、切れ目を飛び越える。
それは秋もだろ。と苦笑する土門の声に一之瀬も笑った。

「稲妻町で再開して早々の俺の我が儘につき合ってくれたのも土門で、」

四つ、切れ目を飛び越える。
これも秋も当てはまるのだが、これまた土門は突っ込むのを止めてしまった。

「…今、一緒にいてくれるのも土門だ」

五つ、切れ目を飛び越えて、止まる。
バランスを取るように手を広げて、短かった回想を思い出す。
思えばいつも土門がいた気がする。
逆に、いなかったら不安になった。リハビリ中がまさにそうだ。
「あ」なんて間抜けな声を出して、くるりと後ろをゆっくりついてきていた土門を見る。
どうした?なんて笑いながらそこにいてくれるだけで、やっぱり安心した。



「俺、昔から土門が好きだったのかもしれない」



あまりにも遅く、自覚するのに時間がかかったそれは、
ひょっとすると、自分の初恋なのだろうか。と、思った。

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