翼のないコウモリ 3 [土受け]


豪土完結。
…さ、最後の最後に凄いぐだぐだしましたすみません…orz
少しだけストーリー改ざんが入ってます(笑)
あの場に、豪炎寺さんが、いた気が、しないんだけど…(え)


そんなわけで続きからどうぞー。
次、続き物やるとしたら多分ゼルデザです(笑)






どこかで聞いたやり取り。
自分が親に聞いたのかもしれないし、どこかの親子の会話を聞いただけかもしれない。

物語の中ではコウモリはひとりぼっちになったけれど、
もし、嘘だってバレなかったら、コウモリはそのまま2つの場所を手に入れられたの?

だけど、嘘をつきながら手に入れた場所は、きっと息苦しいだろうね。

じゃあ、

どちらかにコウモリをその嘘ごと受け入れてくれる動物がいたら、

コウモリは幸せになれたのかなぁ?












「総帥を裏切って…ただですむと思ってるんですか?」
「…ただでやられるつもりはないけどね」

逃げる冬海を追っている最中、突然後ろから羽交い締めにされ、そのまま鉄塔へ。
そして今は黒いスーツを身にまとった長身の男4人に囲まれている有様。
まさに、四面楚歌。
笑みを浮かべてはいるものの、内心では冷や汗が止まらない。
このまま二度とサッカーができないようにされるのか。
行き過ぎたら殺されでもするのだろうか。…そんな、まさか。
嫌な予感ばかりが過り、冬海の浮かべる嫌らしい笑みが癇に障る。

「さあ!お仕置きの時間ですよ!!」

冬海の心底愉快そうな号令と共に、男たちの包囲網が狭まってくる。
今、このときが終わってしまえば、何もかもが終わる。
このときさえ耐えてしまえばもう何もないのだ。

そう、何もない。
帰る場所も、待ってくれる仲間も。

決心していたはずなのに、何故か無性に物悲しくなった。
そこで初めてあの場所を案外気に入っていた事が分かって、苦笑する。
今更遅い。と。
迫る男たちに、身構えながらも過るのは何故か夕暮れに見た豪炎寺の顔だった。
好きだと言ってくれた。いてもいいと言ってくれた。
だけれどそれは自分には到底無理な話で、こみ上げてくる歓喜を押し込んで、
思わずその場から逃げ出した。

…もし。
もしも、だ。

この場から上手く逃げ切れて、もし、雷門に戻る事が出来たら?
妄想にすぎない希望に、僅かに心が揺らぐ。
あそこから出て行きたくないと、彼のそばを、離れたくないと。
もし、叶うならば、

彼に、言いたい事があるんだ。




「土門ッ!!」




ごしゃり。と言う鈍い音と自分の名を呼ぶ鋭い声が響いたのは同時の事で、
訳も分からず前を見れば、目の前にいた黒服の顔面にサッカーボールがめり込んでるところだった。
何が起こったか分からず、惚ける土門の前に立ちふさがる、自分より背の低い、影。

「…ご…えんじさ…」

震える声で名前を呼べば、振り返って、力強い笑顔を返される。
それだけでもう、安心しきってしまう自分が情けない。
豪炎寺に続くように円堂たちが駆けつけてからは、もう怒濤のような勢いだった。
黒服たちを蹴散らし、冬海が逃げ出す。
ついには、最後まで自分を信じてくれた仲間と共に、その場に立っている自分がいただけだった。


「…円堂さん…」

自分でも情けない声が出たと思う。
出て行こうと決めた居場所が、また目の前に現れて、動揺しないわけがなかった。
複雑な表情で注がれる視線に、円堂は気にする事なくただただいつも通りの笑顔を浮かべる。

「行くぞ!土門!地区予選の決勝はもうすぐなんだ!休んでる暇なんてないぞ!」

それは、あまりにもいつも通りすぎた。

「…あ、ああ!」

反射的に返してしまったが、その当たり前が眩しくて嬉しくて。
土門の返事に満足げに頷き、学校へ向かう円堂を見送っていると、
ふと、背後から名前を呼ばれた。
最後まで、頭から離れなかった声が。

「…豪炎寺さん…」
「だから、雷門にいろって、言っただろう」

振り向けば、やっぱりいつも通りに笑う豪炎寺がいた。
自分から棄てようとした居場所がそこには確かに、あった。

「迷惑かけてすみませんでした…」
「本当にな」

そこでふと、会話が切れる。お互い何を言っていいのやら分からず、
ただただ沈黙が続いて行く中、ふと、土門が口を開いた。

「…コウモリの話、知ってますか」
「コウモリ?」
「鳥類と、ほ乳類両方に味方だって嘘ついて、結局一人になった話」
「……ああ」

小さいときに聞いた事がある気がする。豪炎寺はうっすらと話のあらすじを思い出す。
ふと、土門の方を見れば、目を伏せて地面を見つめていた。

「…俺、決心、できてたんですよ」
「コウモリみたいになることか」
「はい」
「……さしずめ鳥類は帝国で、ほ乳類は雷門か」

豪炎寺が言えば、土門は無言で頷いた。
円堂が許したとしてもよほど気がかりなのだろう。
結局土門は根はいい奴なのだ。それは、嫌というほどわかる。
良い奴でなければ今こんな顔していない。
未だに俯いたままの土門に、豪炎寺は一歩前に出る。

「土門。知ってるか」
「?」


「コウモリは、ほ乳類だ」


いきなりの言葉に、土門が思わず顔を上げれば、豪炎寺は悪戯っぽい笑みを浮かべていて。
豪炎寺が言った言葉をゆっくり反芻させ、理解した頃には土門の中にじわじわと幸福感がわき上がる。

「だから、ここにいろ」

いても、いいのだ。ここに。彼のそばに。

「…ありがとう、ございます…!」

次第に笑顔になって行く土門を、豪炎寺は真っすぐに見つめる。
ところで。と話題が変わった。

「この前の返事を、聞いてないんだが」
「…へ?」

この前、と言われて、一瞬疑問符が浮かぶ。
だがよくよく思い起こしてみると「この前」に当てはまるのは河川敷のことで。
土門はまざまざとあのときの情景を思い出し、少しだけ赤くなる。

「あのときの「すみません」は、こうなることへの謝罪だったんだろう?」
「…………」

意地の悪い人だと思う。
あの時土門が呟いた「すみません」は確かに本心からではなかった。
本当は頷きたかった。けれど、頷いたら余計に雷門を去るのが惜しくなるだけだと思い、その時の精一杯の言葉で断ったのだ。
だが、それが虚言だと、豪炎寺は気づいている。
だとしたら答えは一つだというのに。
土門は思わずジトリと豪炎寺を見やるが、涼しい顔で「どうなんだ」と返される。
こうなったら、勝てる気がしない。

「………俺も、好きですよっ!!」

やけくそで叫んでやれば、にやりと笑われる。ああ、やはり確信犯め。
しかし、そんな年相応の彼の表情がなんだか嬉しくて、土門も思わず笑う。

「だったら敬語はなしだ。さん付けも」
「…分かった」

素直に頷けば、豪炎寺に手を取られ、引っ張られる。
その勢いのまま、先に行ってしまった円堂たちの後を追って、駆け出す。
自分の居場所を確かめるように、強く強くその手を握れば、
握った手も、さらに離すまいと力強く握り返して来た。


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