星屑の夜、君に捧ぐ [エイリア]


まさかの吹デザ…。
書いた本人がびっくりです。え、なんで書いたし。
ゼルデザでなんか書きたいと思っていたら気づけば吹デザが出来上がっていました。
どちらかというとアツヤ→デザーム。でも文で見ると士郎とデザーム。


そんな感じですが、それでもいい方は続きから!






なんだか寝付けなくて、キャラバンの上に上がろうとハシゴに手をかけた。
上まで上りきったときに、見上げた空は澄んでいて、
突如ブワリと巻き起こった風に、思わず目を瞑る。
再び目を開いた時、吹雪ははっと息をのんだ。

この間見た、黒い人影が、何の前触れもなくそこにいたから。


「どうした」


キャラバンの上に悠然と立ち、黒いサッカーボールを抱えるその姿。
それは間違いなく以前漫遊寺で見かけたイプシロンのキャプテン、デザーム。
吹雪はハシゴからキャラバンの上へ乗り上げる事を忘れ、呆然とする。
状況が飲み込めていない吹雪に対し、デザームは平然としており、
月明かりに照らされ、黒の中にある赤い瞳が怪しげにそちらを見つめているだけだった。

「やあ」
「?」

やっと状況を飲み込んだらしい吹雪は、警戒していなかった。
むしろ旧知の仲であるかのように笑顔を向ける始末。
逆に驚いたのはデザームの方だ。
目を見開き、なんのためらいもなくデザームの横に来て腰掛ける吹雪をまじまじと見つめる。

「驚かないのか」
「驚いてるよ?」

相変わらずニコニコしたままで見上げてくる吹雪に、デザームはいぶかしげな視線を向ける。
驚いているようには全くもってみえない。
そんなデザームの視線に、吹雪はやはり笑いながら「いやぁ」と間の抜けた声を上げた。

「本当は皆が寝ているうちにやっつけちゃうつもりじゃー…とかって
 警戒するべきなんだろうけど、なんか、君はそんなことしない気がするから」
「何故」
「何となくかなぁ」

吹雪の言う通り、デザームは闇にまぎれて奇襲をかけるという考えは持っていなかった。
ほんの偵察のつもりでやって来たのだが、どうも来るタイミングを間違えたようだ。
何の根拠もなくデザームに攻撃の意思がない事を推測した吹雪に、やはり混乱したように複雑な視線を向ける。

「……貴様は、よくわからんな」
「まあ、いいから座りなよ」

話がかみ合っていない。
だが、何故だか吹雪の言葉に逆らえず、デザームはどかりと吹雪の横にあぐらをかいた。
しばらくの間は、沈黙が続いた。
吹雪は空を見上げ、デザームは手に持ったサッカーボールをじっと見つめるだけ。
敵対している者同士のはずなのに、なぜか穏やかな空気が流れる。

「アツヤがね、君の事気にしてるみたいなんだ」

吹雪が唐突に口を開いたのは、これ以上は時間の無駄かとデザームが立ち上がろうとしたときだった。
『アツヤ』という聞き慣れない名前に、デザームは上がりかけた腰を下ろす。
雷門の選手にそのような人物はいなかったはずだ。

「誰だ。それは」
「うーん…僕の中にいるもう一人の僕、かな」
「貴様は2人いるのか」
「少し違うけど、そんな感じかなぁ」

理解しているようでしていないデザームの口ぶりに、吹雪が苦笑する。
僕も、説明難しいんだ。と頬をかく吹雪に、デザームは無言で頷いた。
本人の中では何かしら合点がいっているようだ。
ならば構わないかと、吹雪は話を続ける。

「アツヤっていうのは、前に試合でエターナルブリザードを撃った方って言えばいいかな」
「あのシュートか!」

途端、デザームが身を乗り出して吹雪に詰め寄る。
イプシロン戦を同点にせしめたあのシュート。
エターナルブリザードを受けたときのデザームは非常に楽しそうだったと印象に残っている。
好敵手に出会えた事に対する喜びか、それとも試合が純粋に楽しく感じたためかは定かではないが、
あのときのデザームも、吹雪の方に興味をそそられているように感じた。
そうか。とデザームは今度こそ心の底から合点が言ったらしく大きく頷く。
なぜか、その仕草が外見に似合わず子どもっぽく、思わず吹雪は笑う。

「なんか、君は見た目は怖いけどどこか無邪気だね」
「む?」
「ううん。何でもない」

それから、再び沈黙が流れる。
吹雪は澄み渡った夜空を見上げ、もう一人の自分についての考察を始めた。
以前デザームにシュートを止められてから、彼を気にしているのは
悔しさからかと思っていた。
だけれども、その感情にどこか引っかかりを感じて、今に至る。
敵であり、今なお各地で破壊活動を繰り返している侵略者であることに変わりはない。
だが、なにか違うのだ。他の、例えばジェミニストームだとかとは。
アツヤがデザームを気にしていると分かってから、何故かデザームの姿を見る度に全身が沸き立つように熱くなる感覚がした。
風邪でも引いたのかと最初は思ったのだが、自分の中にいる自分が酷く動揺している事に気づいた時、
士郎はようやく合点したのだ。


「……うん。最近はアツヤも頑張ってくれてるしね」
「?」

ぽつり。と独り言のように呟けば、何かとデザームが吹雪を見やる。
なんだかんだで帰れば良いのに今なおそこにいる彼は、やはり先ほどと同じように
手にしたサッカーボールを手で弄びながらあぐらをかいていた。
そんなデザームに、先ほどと違わずにこりと笑いかけ、
唐突に首元に巻かれている彼の髪の毛をぐいと掴むと自分の方に引き寄せた。
特に攻撃するような雰囲気はなかったため、デザームは警戒していなかったのかそのまま吹雪に引き寄せられる。

あとは、長い静寂。

僅かに触れた吹雪の唇に、デザームは何が起こったか分かっていない。
ただ、吹雪にわしづかみにされたため乱れた髪に半分ほど顔を埋めていた。
惚けた状態のデザームに、何事もなかったかのように吹雪は笑いかける。

「アツヤへのご褒美ってことで」

自分の内側でもう一人がぎゃあぎゃあと騒いでいるような気がするが気にしない。
じゃあもう寝るよなんて、清々しいほどの笑顔を浮かべ、吹雪はさっさと下に降りてしまう。
残されたデザームは、しばらくの間呆然と固まっていたのだが、僅かな後に一人、首を傾げていた。













「ゼル。先ほど雷門のストライカーに唇と唇を合わせられたのだが、何の意味があるのだろうな」
「!!!!!???」




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