黄昏時 [鬼受け]


今のところ順調に毎日更新してますが、学校始まったらそうも行かないだろうなぁ。
16日くらいから更新がた落ちするかもしれません(爆)
メールでの記事の書き方を理解できればいいんだけどなぁ…


続きで源鬼!相変わらず甘い。
私はどうやら源田の手のひらを鬼道さんの頭に乗っけたいようです。





夕方近く、与えられた病院の個室で一人ぼんやりとする。
自分は他の連中よりも重傷だったからということで個室になったらしいが、それが今仇となっている。
非常に暇だ。
他の皆はどうも同じ病室らしく、さぞかし楽しく賑やかにやっていることだろう。
佐久間は暴走していないだろうか。洞面は看護婦や医者に迷惑をかけていないだろうか。
咲山や辺見が失礼な態度をとっていないだろうか。
まあ、寺門もいるし、他の連中がどうにかしてくれているだろうと信じたい。
こんなことになってもいつもどおり他の連中の世話を焼いている自分がおかしかった。
けれども、そんなことを考える度に自分はここに一人か。という現実を見る。
暇だ。すごく、暇だ。
まだ安静にしていなければならないらしく出歩く事はまだ許されていない。
誰でも良いからこっちに顔出せよ。
やつあたりにも我が儘にもとれる本音がこぼれそうになる。
皆じゃなくてもいい。一番会いたい人は別にいるが、無理には望まないと決めた。

「………はぁ」

ため息がむなしく病室に反響する。病院はどうしてこうも静かなのか。
いっそ寝てしまおうか。と起こしていた上半身を倒し、枕に頭を沈めたときだった。
控えめなノックが、一人きりの部屋に反響した。

「っは、はい!」

驚きと緊張で思わずうわずった声が出る。
看護婦か、医者か。それとも別の部屋にいる誰かが訪ねて来てくれたのか。
だとしたら礼儀正しくノックして入ってくるやつなので、佐久間と洞面は除外されるだろう。
あいつらは無断で飛び込んでくる。
次いで扉の開く音に、反射的に勢いよく起き上がった。
無理したせいで少し痛んだ体を、思わず抑えると扉の方から「大丈夫か」とかけられる声。
その響きが酷く懐かしい気がして弾かれるように顔を上げる。

「…き、どう…?」

「いきなり来てすまなかったな」

病院で携帯が使えたらいいのだが。と苦笑する彼は、間違いなく鬼道で。
本当は、別の病室にいる仲間よりも何よりも会いたかった人物。
けれど、自分たちのために他校で戦うと決めた彼にはサッカーに専念してほしかった。
だからこそ、会いたい等と思わないようにしていたのに。

「なんで、お前」
「仲間の見舞いに来るのは駄目なのか」
「いや、そういうわけでは」

口ごもる源田を見て、笑いながら近くにあった椅子を引き寄せて座る。
それからは2人で近況を話したり、フットボールフロンティアの参加チームについて話したりした。
どうも雷門ではうまくやれているらしい。そこに一番安心した。
そのまま和気藹々と話を続けていたのだが、急に鬼道がかしこまり、言いにくそうに口を開いた。

「じ、実は源田に相談があるんだが…」
「?どうした?俺でいいなら聞くぞ」
「妹の、春奈のことなんだが…」
「ああ」

なんだまたか。と笑えば笑い事じゃないと怒られた。
帝国にいたときも、妹がいると分かってからはよく相談された。
別に源田に兄弟がいるからなどということではないらしい。むしろ源田は一人っ子だ。
なので理由を問うと、お前が一番相談しやすいからだと言われたときは非常に嬉しくなったものだ。

「まさかうまくいっていないのか」
「いや、そんなことはない。この前も一緒に登校した」
「なんだ。仲いいじゃないか」
「そ、そういうことじゃないんだ。実は、春奈に追っかけがいるらしくてな…」
「追っかけ」

おうむ返しに呟けば一つ頷かれる。
そりゃあ、可愛い妹に見知らぬ男が。となれば兄としては気が気でないだろう。
だがそれは少々過保護になりすぎではないかと思わず笑いがこみ上げる。
笑うな!と顔を赤くして怒る鬼道が年相応で可愛く感じる。

「まぁ、問題ないんじゃないか?妹さんが困っているようなそぶりはないんだろう?」
「む、…ま、まぁ今のところは…」
「だったらまだ取り越し苦労だろう。すこし様子を見れば良い」

安心させるように頭を軽く叩いてやる。これはもう癖に近いものになってしまった。
鬼道はしばらく考えるように眉根に皺を寄せていたが、すぐに俯いてわかった。と返される。
こういうところは同い年のはずなのに子どもに見える。

「しかし、そんな情報どうやって仕入れたんだ」
「いや、マックスがな…」

マックス。
知らない名前が出て来て、ああ雷門のやつかと思いつくまで時間がかかった。
そっちにも仲間がいるなら、そちらに相談すればいいものを。
そう考えると、急に寂しさが湧いてくる。
いい仲間ができたのだから素直に喜べばいいのに、喜べない自分。
まだまだ子どもだと、思い知る。

「わざわざ俺に相談しなくても、雷門にいないのか。相談できるような奴は」

相談する度にここまで来る気か?と冗談めいていえば、鬼道は俯いてしまった。
言った張本人だが、自分の方が俯きたい。
源田はおそるおそる隠れてしまった鬼道の表情を覗き見る。

「…迷惑か?」
「いや、そんなことはない!」

不安げに聞かれた言葉に、思いもよらない大きな声で返事を返す。
2人して驚いたように目を丸くして、弾かれたように笑った。

「相談するならお前が良いんだ」

以前も言われた言葉。

「何故かはわからないが…お前になら、何でも話せるんだ」

以前と同じ喜びがじわじわとわき上がってくる。
他校に行っても、同じように頼りにされているのが純粋にうれしかった。
それだけ、鬼道が心を許してくれているのも。
いろんな幸福感が生まれる中、初めて理解する。
なんでこんなにも会いたかったのか。なんでこんなにも頼られて嬉しいのか。

「源田?」
「鬼道。今気づいたんだが俺はお前が好きらしい」

発見した事を素直に吐き出せば、キョトンとされる。
それに構わず、痛む体を叱咤して鬼道を抱き寄せもう一度、好きだ。と囁く。
なんの脈略もない告白。ムードもへったくれもない。
もっと段階だとか、いろんな順序を踏むべきなんじゃないかとか。文句を言われてもおかしくない。
だけれど、しばらく経った後そっと背中に回された腕に、まあいいかなんて、思ってしまった。
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